小売業界に興味があるけれど「実際に仕事をした時のやりがいは?」「どんな人が向いているの?」など、気になる方も多いのではないでしょうか。
本記事では、小売業界を目指している就活生や小売業界が気になっている就活生向けに、業界の特徴やビジネスモデル、主な職種や仕事内容などを解説しています。
目次
この記事の監修者
doda新卒事業本部
キャリアアドバイザー
岩佐 優花氏
新卒で不動産会社へ入社。現在はキャリアアドバイザーとして、不動産領域だけでなく幅広い業界を担当。「こんなこと伝えて大丈夫かな?」と不安を持つ学生様に寄り添い、希望だけでなく不安についても丁寧にカウンセリングを実施。相互コミュニケーションを重視したキャリアアドバイスを行う。
小売業界のビジネスモデル
「卸売業」が、メーカーから商品を仕入れて小売店に卸売りする業態であるのに対し、卸売業者から仕入れた商品を直接、消費者に販売するのが「小売業」です。スーパーやコンビニ、ドラッグストアなどは、小売業の代表的な業態だといえます。
仕入れた商品を消費者に販売することで、仕入価格と販売価格の差額から利益を生み出すのが小売業の基本的なビジネスモデルです。とはいえ、小売業界にはさまざまな業態があり、業態によってビジネスモデルにも差があります。
小売業界の全体像をつかむため、まずは主な業態について把握しておきましょう。
小売業界の主な業態
▼コンビニエンスストア
小規模な店舗を構え、食品や日用雑貨などの商品をメインで扱うコンビニエンスストア。経済産業省の業態分類では、「飲食料品を扱い、売場面積30平方メートル以上・250平方メートル未満、営業時間が1日で14時間以上のセルフサービス販売店」と定義されています。日本では、セブンイレブン、ファミリーマート、ローソンの3社が大きなシェアを占めています。
▼スーパーマーケット
食料品や日用品を中心に、日常生活のほとんどのニーズを満たす商品を扱うスーパーマーケット。大きく、「総合スーパー」と「専門スーパー」に分類されます。総合スーパーとしては、イオンやイトーヨーカドー、ベイシアなどが代表的。専門スーパーは、食料品専門スーパー、衣料品専門スーパー、住関連専門スーパーなどのカテゴリに分かれます。
▼ドラッグストア
薬や化粧品を中心に健康・美容に関する商品を扱うドラッグストア。薬剤師が常駐する薬局を併設したドラッグストアも多くあります。代表的な店舗としては、マツモトキヨシ、サンドラッグ、ウエルシアなどが挙げられます。
▼ホームセンター
DIY用品を中心に、園芸品やレジャー用品、日用品、ペット用品、カー用品などを扱うホームセンター。住関連の商品が全体の70%以上で金物類・種子を取り扱っており、、売場面積が250平方メートル以上の店舗を指します。カインズやコメリ、DCMやコーナンなどが有名です。
▼100円ショップ
基本的に、1点100円のワンプライスで商品を販売する100円ショップ。生活雑貨に加え、トイレタリー商品、化粧品、菓子類などを扱うほか、かゆいところに手が届くアイデア商品も満載です。ダイソー、セリア、ワッツ、キャンドゥなどがシェアを分け合っています。
▼ディスカウントストア
日用品、衣料品、食品、家電製品などを常時、低価格で販売するディスカウントストア。大量に仕入れた商品を計画的に売り切ることや、在庫処分品などを仕入れることで低価格を実現しています。代表的なディスカウントストアとしては、ドン・キホーテやトライアルなどが挙げられます。
▼百貨店・デパート
衣・食・住に関わる多様な商品を扱い、富裕層向けの商品やギフト・贈答品、ビジネス需要などに対応する業態が百貨店・デパートです。従業員による対面販売が基本ですが、外商(企業や個人顧客の元に出向いて商品を販売すること)があるのは他の小売業との大きな違いだといえます。三越、伊勢丹、大丸、髙島屋などが有名です。
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小売業界の市場規模や今後の動向
コロナの収束と円安の影響でインバウンド需要は増加傾向となり、小売業界の売り上げも上昇していくことが期待できます。以下で詳しく見ていきましょう。
市場規模は約154兆円!
小売業界の市場規模は、154兆4,020億円(※1)。ガソリンなどの「燃料小売業」や健康及び美容関連の商品を取り扱う「医薬品・化粧品⼩売業」等の販売額の増加や、水際対策の緩和によるインバウンドの回復の影響が大きかったことも要因の一つです。 前年と比べると小売業全体で2.6%増えています。
※1 参考:経済産業省「>2022年 小売業販売を振り返る」
- 百貨店・スーパー:20兆6,603億円
- コンビニエンスストア:12兆1,996億円
- 専⾨量販店3業態:15兆7,350億円
- その他:105兆8,070億円
今後はECと実店舗の融合が求められる
今後、小売業界にはECと実店舗の融合が求められます。ECサイトと実店舗を併用することで、 顧客ニーズに合った商品やサービスの提供ができるだけでなく、企業の競争力を高めることが可能 です。
実店舗のみの場合、出店できる場所や営業時間、来店する顧客層が限定されるといった課題があります。また、店舗運営にかかるコストが上がりやすく、陳列できる商品も限られてしまうため、在庫管理の難しさも課題です。
そのため、業界としてECと実店舗との融合により顧客に対する多くの選択肢と利便性の提供が求められています。対応策の一つとして、店舗とECの在庫を連携することで在庫管理を最適化し、顧客の満足度を向上するといった取り組みが行われています。
小売業界のこれからはITの活用が不可欠!
日本は「超高齢化社会」を迎えており、今後さらに高齢化が進むと、買い物に行くのが困難になるお年寄りが増えることが予想されています。そのため、 ネット通販やデリバリー対応に力を入れる小売事業者が増えているほか、ドローンを使った宅配サービスも実用化に向けての取り組みが進んでいます。
小売業界におけるマーケティングも、IT活用によって高度化しています。POSシステムだけでなく、スマホアプリやキャッシュレス決済の導入によって、今まで以上に詳細なデータを収集できるようになりました。ビッグデータを活用することで、より深い顧客理解や精度の高い購入予測に基づいたマーケティングが実現しつつあります。
小売業界に大きな影響を及ぼす!?「SPA」と「DtoC」
小売業界への就職を検討しているなら、押さえておきたいのが 「SPA」と「DtoC」 です。ともに今、小売業界で注目されている業態・ビジネスモデルです。
商品の企画・開発から製造、プロモーション、販売までを一貫して行う「製造小売業」のことを指します。自社で開発した商品を、自社の店舗でのみ販売するのが特徴です。SPA業態の小売事業者としては、ユニクロやGAP、無印良品やニトリなどが挙げられます。 |
メーカーが自社で企画・製造した商品を、卸売業者や小売店などを介さずに、ECサイトで直接、消費者に販売するビジネスモデルのことです。従来、ネットで消費者に販売する場合、Amazonなどのモールに出店するのが一般的で、価格競争に陥りやすいのがデメリットでした。SNSなどで企業と消費者が直接つながることができるようになった今、DtoCで販売を行うメーカーが増えています。 |
SPAとDtoCの大きな違いは、SPAが主に実店舗で販売するのに対し、DtoCはECサイトでの販売をメインとする点です。
小売業界の主な職種と仕事内容
小売業界の職種と言えば、お客様に直接商品を提供する「販売」をイメージする人が多いと思いますが、販売以外にもさまざまな職種があります。小売業界の一般的な職種と仕事内容はきちんと押さえておきましょう。
販売
店頭に立って、お客様に直接商品を販売する職種です。仕事内容は、接客、レジ、商品の陳列などがメインになります。企業によっても異なりますが、まずは販売からスタートして現場経験を積むパターンが多いでしょう。
店舗運営
販売スタッフをまとめ、店舗の売上を管理する職種で、マネージャーや店長などのポジションがあります。店舗運営で実績を重ねたら、エリアマネージャー、スーパーバイザ―、ストアブランドマネジャーなどに就いてキャリアアップしていくのが一般的です。
バイヤー
商品の仕入れ・買い付けをおこなう職種です。メーカーや卸売業者から、自社のコンセプトや消費者のニーズに合った商品を仕入れます。「売れる商品」を見極めるという意味で、売上を担う重要な職種だといえます。
店舗開発
簡単に言えば、「どんなお店をどこに出店するか」を考え、実行する職種です。店舗のコンセプト開発、立地選定、店舗設計など、新店舗出店や多店舗展開に関する幅広い業務を担います。
商品開発
自社のオリジナル商品を企画・開発する職種です。近年、プライベートブランド(PB)などの自社商品を扱う小売事業者が増えています。SPAの形でイチから商品開発をする場合もありますし、ナショナルブランドのメーカーとタッグを組んで商品開発するケースもあります。
マーケティング
イベントやキャンペーンの企画、チラシやPOPなど販促物の制作、テレビやWebへの広告出稿など、マーケティングをおこなう職種です。顧客調査や競合調査なども含め、「商品を売るためには何をすべきか?」を考え、さまざまな施策を実行します。
物流管理
物流や在庫を管理する職種です。販売データをもとに商品の入荷量を決めたり在庫をコントロールしたりして、物流効率の最大化を図ります。
小売業界の売上ランキング
小売業界における売上高ランキング「上位3位」の企業をご紹介します。
1位 イオン
国内小売業の最大手がイオンです。総合スーパーの「イオン」を中心にコンビニやショッピングセンターなど、国内外で多くの店舗を展開するグローバルな企業です。先進技術の導入にも積極的で、国や千葉市が主体となって行う「ドローン配送」の実証実験にも参加しています。
2023年2月期の売上高(連結)は、9兆1,168億23百万円です。
2位 セブン&アイ・ホールディングス
コンビニチェーンの「セブンイレブン」を経営するセブン&アイHD。セブンイレブンはコンビニ業界でNo.1シェアを誇っており、高品質なPB商品が高い評価を受けています。セブンイレブン以外にも、「イトーヨーカドー」「ヨークマート」「そごう」「西武」「ロフト」「アカチャンホンポ」など、様々な業態の店舗を全国展開する小売業界のリーディングカンパニーです。
2023年2月期の売上高(連結)は、11兆8,113億円です。
3位 ファーストリテイリング
ファーストリテイリングは、「ユニクロ」を筆頭に「ジーユー」「セオリー」などのブランドを世界中で展開するファッション小売りの最大手です。「服を変え、常識を変え、世界を変えていく」という企業理念の下、積極的に海外展開・M&Aをおこないグループを拡大しています。
2023年2月期の売上高(連結)は、2兆7,666億円です。
小売業界の企業研究をする際におすすめな方法
企業理解だけでなく「自分に合った業界なのか」を判断するためには、やみくもに始めるのではなく、小売業界だからこそ押さえておきたいポイントを把握した上で、企業についての理解を深めたいところです。
以下でおすすめの方法を見ていきましょう。
企業のホームページで情報を収集する
公式ホームページで情報収集をすることは、企業研究においておすすめな方法の一つです。
公式ホームページには「企業がアピールしたいこと」や「企業(経営)理念」、「求める人材」など、企業研究に役立つ情報が多くあります。各企業が目指している方向性や、理念などを知ることができるため、必ず目を通しましょう。
具体的には、事業内容、シェアや業績などの情報にも目を通すことが大切です。同じジャンルの商品やサービスを販売していても、 企業によって注力している商品や顧客層などが異なります。同業他社と比較しながら見ていくとよい でしょう。
企業のホームページからわかること
- 企業理念(経営理念)
- 求める人材
- 事業内容
- 業界内順位やシェア
- 今後の展望
実店舗に足を運んでみる
企業研究の方法として小売業界を志望している方にオススメなのが店舗見学です。一般的な会社見学ではアポイントが必須ですが、実店舗の場合、店内を見て回るだけであればアポイントの必要がありません。予定が柔軟に調整できるため、急なスケジュール変更にも対応しやすく、現場のリアルな雰囲気を体験できます。
見学は1店舗だけでなく、複数の店舗をまわりましょう。 複数見ることで企業の優位性や課題などが明らかになり、企業への理解を深めやすくなります。
店舗に足を運ぶときは混雑時をさけ、店内でメモや写真をとるのは控えましょう。
企業説明会・インターンシップに参加する
企業説明会・インターンシップに参加することも企業研究としてオススメの方法の一つです。企業説明会やインターンシップでは、企業の方向性や今後の展望などについて直接聞くことができます。加えて社員の仕事内容などの生の声を具体的に聞くことができるため、入社後の業務やキャリアを描きやすくなるでしょう。
キャリアアップの仕方など企業のホームページには載っていない情報を知ることは、業界や企業について理解を深めることに繋がります。
積極的に参加して企業への理解を深め、 自分の仕事に関する価値観がどのように一致するかを考えましょう。
OB・OG訪問を行う
企業研究の方法としてオススメの方法の一つがOB・OG訪問です。 OB・OG訪問では、1対1で社員と話をすることができる点が最大のメリット。企業のホームページには載っていない生の声を聞くことができます。
説明会などの公式の場や集団では、聞きづらい内容でも気軽に質問が可能です。 1日の仕事の流れやキャリアの積み方などを聞くことで、入社後のミスマッチ防止に繋がります。
心に響いた話や、共感した先輩社員の言葉などがあれば、忘れないようにしっかりとメモをしておきましょう。
小売業界に向いている人の特徴
小売業界に向いている人の特徴としては、主に以下の点が挙げられます。
コミュニケーションが得意な人
初めて会うお客様の言葉や様子から「何を求めているのか」を瞬時に察して、案内・提案できることは、小売業界で働くうえで重要なスキルです。
コミュニケーションが得意な人は小売業に向いていますが、 特に「初対面の人とすぐに打ち解けられる人」や「相手に合わせて臨機応変な対応ができる人」なら、なお小売業向きだといえます。
流行に敏感な人
小売業で働く人は、「次に売れるのは何だろう?」「今、売れている物の共通点って何だろう?」といった視点が重要です。その意味で、 トレンドに敏感な人や、「新しいものは試さずにはいられない」という人は小売業界に向いています。
ストレスに強い人
例えば、販売や店舗運営の職種であれば、お客様からのクレーム対応で気持ちが落ち込んでしまう日もあるでしょう。バイヤーやマーケティングの仕事では、「自分が仕入れた商品が売れなかったら・・・」「キャンペーンの反響が出なかったら・・・」といったプレッシャーを感じることもあるでしょう。このような ストレスとうまく付き合い、前向きに行動できる人なら小売業界で活躍できるはずです。
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