就職活動をはじめる際にまずすることは、自己分析と並び、業界研究や職種研究が挙げられます。しかし、いざ調べてみると業界、業種、職種、業態……と似たような言葉が並び「ちょっと何を言ってるか、わからないですね」と混乱してしまいます。
一口に業界研究と言っても、研究をする前に言葉の定義を知っておくことが大切。なんとなくで済ませておかず、しっかりと理解することで、就職活動も効率よくはかどります。今回は、「業界」「業態」「職種」「業種」の違いを、図や表を用いて、わかりやすく解説していきます。
業種は企業が携わる分野のこと
まずは「業種」について説明します。業種とは、事業や営業の種類のことで、その企業が携わっている分野のことを指します。さらに言うと総務省統計局が定めている日本標準産業分類の「産業」に準拠し、証券コード協議会が分類したものが一般的です。
分類方法としては、10の大分類の下に33の中分類があります。通常「業種」といった場合は、建設業、食料品、電気機器など、この中分類を指します。以下に分類表を掲載します。

皆さんが普段目にしない業種があるのではないでしょうか。たとえば、「輸送用機器」という業種。具体的には、自動車メーカーや、造船メーカーが当てはまります。その他、気になる業種があれば、下記リンクから調べてみましょう。
それぞれの業種に向いているタイプとは?
世の中にはさまざまな業種がありますが、それぞれに適した人材のタイプは異なります。そのため、自分のタイプを見極めたうえで、志望する業種に合っているかどうかを確かめることが大切です。ここからは、5つの業種を例にとって、適したタイプを紹介していきます。
製造業
製造業に向いているのは、計画を立てて物事に取り組むことができ、なおかつ集中力がある人です。基本的に、製造業では生産目標や納期が厳密に定められています。業務上のミスや遅れが命取りとなるので、計画通りに作業を進める能力のある人が向いているのです。
また、集中力を保ちながら長く働くためには、自分の仕事に愛着を感じることも大切です。ものづくりが好きで、情熱をもって仕事に打ち込める人は製造業が向いているでしょう。
金融・保険業
金融・保険業に向いているのは、責任感が強く、真面目な性格の人です。細かい計算を厳密に行うことが求められ、大きな額のお金をしっかりと管理する必要があるためです。
給与の水準が高いため、給与の金額を重視する人にも向いているでしょう。業務内容が経済活動の根幹にかかわるので、やりがいも十分感じられるはずです。
情報通信業
情報通信業で働く場合は、パソコンを使って作業する時間が多くなります。そのため、長時間のデスクワークに耐えられる人が適しているでしょう。
また、新しい技術に対して常にアンテナを張っていることが求められるため、新しいものが好きな人にとっては、うってつけの仕事だといえます。今後も成長していくことが予想される業種であり、大きなキャリアアップを目指す人にもおすすめです。
電気・ガス業
電気・ガスのようなインフラ事業は、人々が不自由なく暮らしていくうえで欠かせない仕事です。そのため、社会の役に立ちたいという気持ちが強い人には電気・ガス業が向いています。
不可欠な仕事である分、待遇が安定しているのも電気・ガス業の魅力の1つです。また、計画・設計・施工・管理と業務が多岐にわたるので、さまざまな仕事を経験したい人にも向いています。
建設業
建設業が向いているのは、責任感が強く、危機管理能力が備わっている人です。1つのミスが重大な事故につながる場合もあるので、集中力をもって仕事に取り組む必要があります。
電気・ガス業と同じく、人々の生活に直接かかわる仕事なので、大きなやりがいが魅力です。
業界は業種となにが違うのか?
「大辞林 第三版」によれば、業界とは「業種や取り扱い商品を同じくする仲間。また、そういう人々の社会。」のことです。つまり、「同じ仕事をしている人や、企業」ということになります。
就職活動における「業界」は、業種を取り扱う事業やサービスによって、より細かく分類したものです。世界有数の広告代理店・電通株式会社を例にすると、業種は「サービス業」ですが、「広告業界」と呼ばれています。一方でトヨタは業種でいうと、「輸送用機器」ですが、「自動車メーカー」というグループで語られることが多いです。
就職活動では、「業種」よりも「業界」というキーワードが使われることが多いので、調べる際は、注意が必要です。
職種とは企業内での役割のこと
職種とは、シンプルに職業や職務の種類のことを指し、「業種」「業界」が企業の枠組みを指すのに対して、職種は企業内の役割を指します。具体的には、営業職、コンサルタント職、開発職などが挙げられます。以下は、職種の例です。
また営業とはいっても、業種や企業によっても業務内容は様々です。たとえば、テレアポで新規の営業開拓を行う法人営業もあれば、ルート営業といい、既存の顧客を回ってサービスを提供する営業もあります。自分が応募しようと考えている職種が、どんな業務内容なのかを確認するためにコーポレートサイトを見たり、企業説明会に参加してみることが大切です。
アメリカなどの海外では、職種別に採用を行っていることがほとんどですが、日本における新卒採用の選考では、総合職・一般職という枠で採用を行っている企業が多いのが現状です。
総合職とは、企画や営業など総合的判断を要する業務を行う職種のことです。総合職で採用されると研修後に、営業、経理、法務、企画など、どの職種かに配属されることになります。一般職とは、主に日常的業務のみを行う職種のことで、事務職とも呼ばれています。近年では、日本でも職種別採用(コース採用)を行う企業も増えてきています。
それぞれの職種に向いているタイプとは?
業種だけではなく、職種によっても人材の適性はある程度決まってきます。例えば、人と関わるのが好きでコミュニケーション能力が高いタイプは営業職が、理解力が高くミスが少ないタイプは事務・アシスタント職が向いているでしょう。
職種は仕事内容に直接関係するため、自分に合っている職種はどれなのかということをしっかりと見極めなければなりません。ここからは、代表的な職種を5つ取り上げ、それぞれに向いているタイプについて紹介していきます。
代表的な5つの職種
営業職
営業職にとって重要な資質は、とにかく人と関わるのが好きなことです。初めての相手にも物怖じせず、積極的にコミュニケーションを図る姿勢が求められるでしょう。また、顧客に対して商材の説明やプレゼンテーションを行う機会が頻繁にあるため、わかりやすく説明する能力も必要です。
販売・サービス職
販売・サービス職に携わる場合は、毎日のように顧客と直接顔を合わせることになります。人当たりの良い、親切な印象を与えることが大切なので、丁寧にコミュニケーションがとれる謙虚な人が向いているでしょう。
また、性格の明るさも重要なポイントです。人と丁寧に関わることが営業職以上に求められる職種だといえるでしょう。
事務・アシスタント職
事務・アシスタント職では、他の人のサポートや細かい計算、資料作成などを主に行います。ミスがあると業務に支障をきたすことになるため、与えられた仕事を正確にこなす能力が求められるでしょう。
また、議事録を作成したり、資料を読み込んだりする仕事を任される場合もあります。そのため、資料の内容を正しく理解し、わかりやすい言葉で説明する能力も事務・アシスタント職には必要です。
医療系専門職
介護などの医療系専門職も人と関わることが業務の一環となるため、コミュニケーション能力が必要不可欠です。患者だけでなく、その家族とも円滑にコミュニケーションする必要があるでしょう。
また、シフト制で勤務する場合が多く、体力を使う仕事でもあります。
技術職
技術職に従事する場合は、専門的な知識やスキルを活かして働くことになります。常に新しい知識を吸収しなければならないので、新しい物事に興味がある、好奇心の強い人が向いているでしょう。
また、チーム単位でプロジェクトを進めることが多いので、協調性も備わっている必要があります。
業種と職種を組み合わせれば、仕事の内容がわかる
企業が携わる分野である「業種」と、職業の種類である「職種」。ある仕事の内容は、この2つの組み合わせで表現することができます。例えば、菓子メーカーの営業担当者なら「製造業」の「営業職」と表せます。また、書店員なら「小売業」の「販売・サービス職」と表現できるでしょう。
自分がやりたい仕事を見つけられないときは、「業種」×「職種」の観点から考えてみると良いかもしれません。つまり、興味がある業種と職種を探し、両方を実現できる仕事を調べてみるのです。
「ものづくりに興味があるから製造業に携わりたい」「人と関わるのが好きだから営業職かな」といったように、自分の好みや資質を考えながら、将来やりたい仕事を絞り込んでみると良いでしょう。
業態とはなんのことか?
業態とは、営業形態の違いを基準とした分類のことで「商品をどのような売り方をするのか」で分けられたものです。つまり、スーパーマーケットやコンビニエンスストアなどが業態になり、八百屋や肉屋などは業種になります。「業態」は売る方法で分けたもの、「業種」は売る商品で分けたものと覚えるといいでしょう。
業態の例
スーパーマーケット、コンビニエンスストア、百貨店、通信販売、ホームセンター
以前は、Aというブランドの商品ならAのお店で買うというような、取り扱う商品ごとに店舗がある業種中心の営業形態でした。 近年は、消費者の生活様式も変化し、ニーズが多様化してきています。そこで百貨店でブランドAもブランドBの商品も買うことができるなど、ニーズに合わせて営業形態を発展させた業態中心の営業形態にシフトしています。

自分に合った仕事をみつける研究方法とは?
就職活動で自分に合った仕事をみつけるためには、「業種・業界研究」「職種研究」「企業研究」という3種類の研究をすることが重要です。ここからは、それぞれの研究方法について紹介していきます。
業種・業界研究
業種・業界研究では、業種ごとの傾向を調べたうえで、自分の志望する業種を絞り込んでいきます。各業種の仕組みや関連する職種、平均年収、今後の動向などを綿密に調べ、自分の希望にマッチしそうな業種を選ぶと良いでしょう。
情報を集めるときは、業界研究本や関連団体のWebサイト、会社情報誌などが役に立ちます。
職種研究
職種ごとの仕事内容を調べ、自分に合うものを探していくのが職種研究です。職種ごとに人材の適性や求められる能力は異なるため、業種同様しっかりと調べておきましょう。
その職種に従事するために必要な資格についても調べておくと、後から慌てる心配がありません。
企業研究
企業研究では、希望する業種・職種から浮かんできた企業について、社風や求人情報などを調べていきます。
企業研究を始めるときは、まずその企業の公式ホームページをチェックしましょう。新卒向けの採用ページを見れば、企業が求める人材像や社風を把握することができます。企業理念や取り扱っている商材など、基本的な情報についても確かめておくことが大切です。
それぞれの言葉の定義を知ることで、就活もスムーズに
就活生のみなさんが研究するべきキーワードは「業界」と「職種」であることがわかったのではないでしょうか。それぞれの言葉の定義を知ることで、就職活動における研究も、より一層スムーズになります。
dodaキャンパスは、6200社以上の企業からインターンシップや採用選考の特別なオファーが届く逆求人型の就活支援サービスです。 自分1人では気づかなかった優良企業に出会える機会も!
選考対策ができるイベントも随時開催しています。ぜひ参加してみてください!