人材業界に興味があるけれど「将来性はどうなの?」「実際に仕事とした時のやりがいは?」など、その実情が気になる方も多いのではないでしょうか。
本記事では、そんな人材業界の動向をはじめ、具体的な仕事内容ややりがいについて解説いたします。
目次
この記事の監修者
doda新卒エージェント事業部 キャリアアドバイザー
藤井 里花氏
旅行業界からの転身で2018年にパーソルキャリアへ入社(出向によりベネッセi-キャリア在籍)。新卒採用のキャリアアドバイザーとなる。自身は理系学生だったが、文理系統問わず対応が可能。自らの就活失敗経験を活かし、より将来を見据えたキャリア提案や選択肢を狭めないアドバイスを心がける。
人材業界の特徴とビジネスモデル
人材業界は「求職者と企業をつなげること」を大きな目的として、さまざまな事業・サービスを展開しています。近年、人材業界の事業内容・ビジネスモデルは多様化しており、新たなサービスが続々登場していますが、大きくは以下の4事業に分類するのが一般的です。
- 人材紹介
- 人材派遣
- 求人広告
- 人材コンサルティング
人材業界は、事業ごとにサービス内容や仕事内容が大きく変わってきます。それぞれの事業の違いやビジネスモデルの特徴など、最低限の知識は身に付けておきましょう。
人材紹介のビジネスモデル
人材紹介は、人を採用したい企業と求職者とをつなぐ事業です。採用へと至った場合に紹介料として、報酬が発生します。そのため、人材の発掘だけでなく、採用フォローも業務の一環として行う企業が多い状況です。
人材紹介会社は下記2種類が存在します。
総合型:業種や職域などの制限がなく、幅広い人材を対象とした紹介会社
特化型:業種や職種、職域など、ある領域に特化した人材を対象とする紹介会社
わかりやすい例では、ITエンジニアや管理職などの専門性を持つ人を採用したい企業と人材とをつなぐ紹介会社
人材派遣のビジネスモデル
人材派遣は、派遣会社が雇用している人材を、労働力として顧客企業へ派遣する事業です。派遣会社は企業へ人材を派遣する対価として報酬を得ます。業務の繁忙期といった一定期間に人手が必要な場合に利用されますが、法律によって派遣できる期間は3年間と定められています。
求人広告のビジネスモデル
求人広告とは、「求人ポータルサイト」と呼ばれるWebメディアや、求人情報誌、フリーペーパーなどのメディア運営を通じて求職者と企業とをつなぐ事業です。運営会社は、求人募集を中心とした求人広告を商品として販売し、広告出稿料として収入を得ます。
人材コンサルティングのビジネスモデル
人材コンサルティングとは、採用支援や教育支援、人事制度の構築支援などについてコンサルティングを行う事業です。人材派遣、人材紹介、求人広告の3つの事業は主に「採用」を目的としていますが、人材コンサルティングは企業の「人事業務全般の課題解決」を目的としているのが特徴です。
人材コンサルティング会社は、顧客企業からコンサルティング料を得ます。
人材業界の代表的な職種と仕事内容
人材業界にはさまざまな職種があり、どの職種に就くかによって、「誰に対して」「どんなサービスを提供するか」が異なります。
人材業界における代表的な職種は下記の3つです。
- 営業
- キャリアアドバイザー・キャリアコンサルタント
- マーケティング・広告企画
まずは職種ごとの仕事内容を把握しておくことが重要です。以下で一つひとつ見ていきましょう。
営業
人材業界の営業は、新たな顧客を獲得するために新規開拓営業を行います。先にご紹介したビジネスモデルによって、顧客や営業内容が異なります。
企業によっては、顧客企業の採用計画や人材要件の定義といった採用支援業務を通して、採用成功に至るまで伴走するケースもあります。
キャリアアドバイザー・キャリアコンサルタント
キャリアアドバイザー(CA)は、求職者のニーズに合った求人を紹介するのが主な仕事です。提出書類に関するアドバイスを行ったり面接指導したりと、求職者が希望する企業で働けるよう伴走するのが役割です
一方、キャリアコンサルタントは厚生労働省が下記のように定義しています。
「キャリアコンサルタント」とは、キャリアコンサルティングを行う専門家で、企業、需給調整機関(ハローワーク等)、教育機関、若者自立支援機関など幅広い分野で活躍しています。
【参考】厚生労働省「キャリアコンサルティング・キャリアコンサルタント」
また、キャリアコンサルタントは、資格を保有していなければ「キャリアコンサルタント」と名乗ることはできない点も押さえておきましょう。
マーケティング・広告企画
マーケティング・広告企画は、求職者と企業を結び付けるために下記の取り組みを行っています。
1.リサーチ.
市場や顧客、競合に関する情報収集・分析を行い、課題や機会を特定。時代の変化によって働き方や人材に求めるものが変わるため、求職者や求人企業のニーズも変化します。こうした変化に対応するため、リサーチ・分析を行います。
2.企画
リサーチ・分析結果に基づいて、自社が求職者や求人企業にどのような価値を提供できるか、具体的なマーケティング・広告戦略を立案。ターゲットとなる求職者や企業像を明確化し、その対象に応じた戦略を立てます。
3.ブランディング
企業や採用ブランド、人材紹介サービスのブランドイメージを構築・管理し、求職者や企業からの信頼を獲得するのがブランディングの役割です。
4.マーケティング・広告施策の実行
ターゲット像や企画に基づき、広告、PR、イベント、採用活動など、さまざまな施策を実行します。
人材業界におけるマーケティング・広告企画の仕事は、人材と企業の架け橋となる重要な役割を担っています。多様なスキルが求められますが、業界全体の成長が期待されており、やりがいのある魅力的な仕事といえるでしょう。
人材業界の市場規模や今後の動向
近年、人口減少や社会環境の変化により、人材獲得競争が激化しています。そのため、今後ますます人材業界が求められる役割は大きくなることが予想されます。
ここからは人材業界の市場規模や今後の動向について解説します。人材業界が自分に合っている業界か判断するためにもチェックしましょう。
人材業界の市場規模
2022年度の人材関連ビジネス主要3業界(人材派遣業、ホワイトカラー職種の人材紹介業、再就職支援業)の市場規模は、事業者売上高ベースで前年度比7.8%増の「9兆2,355億円」となっています。
その内訳は以下の通りで、3業界のうち再就職支援業の売り上げは落ち込みましたが、人材派遣業とホワイトカラー職種の人材紹介業は市場の拡大を実現しています。
- 人材派遣業市場:8兆8,600億円(前年度比7.6%増)
- ホワイトカラー職種の人材紹介業:3,510億円(同18.6%増)
- ホワイトカラー職種の人材紹介業:3,510億円(同18.6%増)
- 再就職支援業市場:245億円(同23.7%減)
【参考】株式会社矢野経済研究所「人材ビジネス市場に関する調査を実施(2023年)」
人材業界の今後の動向・展望
▼人材業界は景気に左右されやすい
人材業界は基本的に、雇用が増えるほど(有効求人倍率が高くなるほど)活性化します。過去を振り返ってみると、バブル景気の時代は有効求人倍率が高水準を推移していましたが、バブル崩壊によって「就職氷河期」と呼ばれる時代が訪れます。同様に、2008年のリーマンショックによる不況下でも採用数が減少し、就活市場は停滞しました。
「雇用は経済を映す鏡である」といわれますが、人材業界が景気の変動によって影響を受けやすいのは間違いありません。
▼外国人・女性・シニア人材の活用
少子高齢化による労働力不足を解消するために、近年注目が集まっているのが、外国人や女性、シニアの人材活用です。実際に多くの企業において外国人採用が積極化しており、女性やシニアの働き方に合わせた採用も活発になっています。
人材業界においても、定年退職者の再雇用、外国人採用、女性採用を支援するようなサービスが増加しており、今後もこの動きは継続していくと考えられています。
人材業界に向いている人の特徴
人材業界に向いている人の特徴としては、主に以下の点が挙げられます。
人の人生に深く関わる仕事がしたい人
人材業界の仕事は、常に「人」と向き合い、「人」と深く関わる仕事です。決して大げさではなく、あなたの姿勢や判断、行動によって求職者の人生が左右されるといっても過言ではありません。
人の人生により深く関わりたい人、人の人生を本気で支援したいと思える人なら、人材業界で大きなやりがいを感じながら働くことができるでしょう。
コミュニケーションに苦手意識のない人
人材業界で活躍するには、人材を探している企業担当者から正しくヒアリングして、最適な提案をしなければいけません。また、さまざまな不安や悩みを抱える求職者に寄り添い、最適な就業をサポートすることも求められます。
あなたが企業に信頼されるかどうか、求職者の期待に応えられるかどうかは、コミュニケーション一つで変わってきます。高度なコミュニケーションスキルを備えている必要はありませんが、少なくともコミュニケーションに苦手意識がないことは重要です。
世の中のビジネス、企業、職種を広く知りたい人
人材業界の仕事では、非常に多くの企業と関わることになります。そのため、さまざまな業界のビジネスについて理解を深めていく必要があります。日々の仕事を通して、世の中のビジネス、企業、職種を肌で感じたいという人には人材業界がおすすめです。
将来的に起業・独立を考えている人にとっても、貴重な経験を積める業界だといえるでしょう。
人材業界で働く際のやりがい
働く時間は人生の約1割を超えるといわれていますが、1日において多くの時間を費やす上で、やりがいがあることは大切です。人材業界で働く場合のやりがいは下記の通りです。
- 社会課題に取り組むことができる
- 企業や個人の成長に関わることができる
- 人生における重要な意思決定・テーマに関わることができる
仕事で困難にぶつかった時にも、やりがいがあれば「また頑張ろう」と自分を鼓舞できます。また、モチベーション向上につながり、パフォーマンスアップが期待できます。
社会課題に取り組むことができる
人材業界で働くと社会課題に取り組むことができます。近年問題視されていることは、少子高齢化による人手不足です。日本の生産年齢人口(15〜64歳)は「1995年をピークに減少しており、2050年には5,275万人(2021年から29.2%減)に減少する」と見込まれています。
そのような中、人材業界は人と企業を結び付ける役割があるため、社会課題の解決に向けて携わることができ、やりがいにつながりやすいといえます。
【参考】令和4年版情報通信白書|2022年|総務省
企業の成長や個人の成長に関わることができる
人材業界で働けば、企業・個人の成長に関わることが可能。対企業に関しては、人や組織にまつわる課題解決をすることによって、企業が成長していく姿を見ることができます。
一方、対個人に関しては、「企業や個人の成長支援ができる点」は、その後の人生においてもプラスになる影響を与えられることでしょう。
また、双方が満足できるマッチングができれば、雇用創出や人手不足の解消、生産性向上といった社会課題の解決につながります。
人生における重要な意思決定・テーマに関わることができる
人材業界であれば、人生の中で多くの時間を占める「働く」というテーマについて、アプローチができます。そのため、企業や個人の重要な意思決定・テーマに関わることも。
企業の競争力の根源となる「ヒト」について、企業が求める人材を的確に紹介することで、企業の競争力強化に貢献できます。また、転職や就職といった人生の岐路に立つ人々に、それぞれに合ったキャリア形成を支援できる、やりがいのある仕事です。
企業と個人との接点となり、人々の成長を支援し、社会貢献できる仕事に就きたいと考えている人にとって、人材業界は魅力的な選択肢といえるでしょう。
その業界の「やりがい」を理解することと同じく、「自分に合った働き方を知る」ということも就活における重要な事前準備のうちの一つです。
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人材業界についてサクッといま一度理解!
人と深く関わり、人と会社をつなげ、人も社会も豊かにできるのが人材業界で働く魅力です。少子高齢化による労働力人口減少が深刻な日本ですが、外国人・女性・シニア人材の登用など、新しい動きが見え始めています。そんな人材業界に飛び込んで、新たな価値を生み出していくのは非常にやりがいを感じられるはずです。
本記事のおさらい
- 人材業界の特徴と事業の種類
人材業界は「人材紹介」「人材派遣」「求人広告」「人材コンサルティング」の4事業に分けられる - 人材業界の各事業の仕事内容
人材業界の仕事内容は事業によってそれぞれ異なるため、各事業の特徴を理解することが大事 - 人材業界の市場規模
人材業界の市場規模は約10兆円。中でも、人材派遣業とホワイトカラー職種の人材紹介業は市場の拡大を実現している
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