物流業界の最新動向やビジネスモデルについて理解できていますか?
本記事では、物流業界を目指している就活生や物流業界が気になっている就活生向けに、業界の特徴やビジネスモデル、主な職種や仕事内容などを解説します。国内物流企業の売上ランキングや今後の動向にも触れていますので、ぜひ就職活動の参考にしてください。
目次
この記事の監修者
doda新卒エージェント事業部
キャリアアドバイザー
内田 茉莉香さん
旅行会社で法人営業を経験した後、人材業界へ転職。
新卒採用担当として企業側、学生側双方のエージェントを経験。
現在は『doda新卒エージェント』サービスのキャリアアドバイザーを担当する。
営業職全般の提案、面接官の視点を踏まえたアドバイスなど、自身の経験を活かしたアドバイスが得意領域。
物流業界の特徴とビジネスモデル
物流業界のビジネスモデルは、一般的に生産者から消費者に商品を届けるために、運送や倉庫の貸し出しを行うことが基本ですが、これだけでは物流業界を理解したことにはなりません。
物流業界の業務内容は、「輸送」「保管」「荷役」「包装」「流通加工」「情報管理」の6つの工程に分類されるのが一般的です。まずは、一連の流れを押さえておきましょう。
物流業務の工程
保管 | 荷主(荷物の送り主)から預かった荷物を出荷まで預かり、倉庫などで保存・管理する業務です。荷物によっては輸送時期の調整が必要になり、届ける日まで適切に保管しなければなりません。冷蔵や冷凍など、適切な保管方法で品質を保つことが求められます。 |
荷役 | 荷物を倉庫に入庫したり、出庫したりする際に生じる様々な作業を荷役(にえき/にやく)と言います。輸出入品などの場合は、通関手続きも荷役業務に含まれます。 |
流通加工 | 荷主のニーズに合わせて、「ラベル貼り」「値札づけ」「箱詰め」「商品のセット組み」などの加工をおこなう業務です。 |
包装 | 梱包材を使って荷物を包む業務です。近年は、環境保全のためにリサイクル・リユースが可能な梱包材が使われるケースが増えています。 |
輸送・配送 | 出荷準備のできた荷物を、工場から倉庫、倉庫から小売店や消費者へと運ぶ業務です。物流センターなどの拠点まで運ぶ工程を「輸送」と言い、拠点から最終目的地に運ぶ工程を「配送」と言うのが一般的です。 |
情報管理 | 物流における情報を一元管理する業務です。在庫の確認、発注の受付、出荷の指示、配送の追跡などの情報をシステムで管理します。輸送状況をビッグデータ化して分析することで、輸送ルートの最適化や輸送品質の向上に繋げます。 |
物流業界の5つ領域やそれぞれの強み
物流業界は商品の移動と保管を担当し、経済活動を円滑に進めていくためには、必要不可欠な存在です。この業界は主に「陸運」「空運」「海運」「鉄道」「倉庫」の5つの領域に分類されています。
陸運
陸運とは、「トラックや車、鉄道など陸上の貨車を使った陸上輸送」です。日常生活を送る上で見かけることもあるため、イメージしやすいでしょう。
陸運は、送り主や消費者の細かな要望(例えば、時間指定配送や置き配指定など)に答えられる点が特徴として挙げられます。トラックや車での輸送しか対応できない地域への輸送も得意なため、機動力が非常に高いと言えるでしょう。
その一方で、他の輸送手段と比較すると長距離の輸送ができない点をはじめ、道路の重量制限によってトラックは最大積載量が決められているため、大量輸送ができない点も課題点として押さえておきましょう。
空運
空運とは「飛行機を使った航空輸送のこと」です。一般的には、荷物をハブ空港という中継地点に集め、飛行機で目的地へと運びます。
空運は「長距離を短時間で輸送できること」が特徴です。そのため、生鮮食品などの劣化が進みやすい商品の輸送に適しています。
デメリットは「重量がある商品は輸送できないこと」と「輸送にかかるコストが高いこと」です。また、輸送燃料は景気によって変化しやすく、景気が悪い時は別の輸送手段に切り替える場合があります。
空運は以下の3形態に分かれます。
- フォワーダー:荷主から輸送業務を受託する会社
- キャリア(航空会社):自社航空機で貨物輸送を行っている会社
- インテグレーター:フォワーダーとキャリアの両機能をあわせ持っており、空陸一貫輸送が可能な会社
海運
海運とは「船舶を使用した海上輸送のこと」です。日本各地だけでなく、海外に輸送することもあります。周囲を海で囲まれている日本にとって、輸出入に欠かせない方法です。
海運のメリットは、「重量のある荷物を大量に運べること」と、「長距離輸送も可能なこと」、「輸送コストが安いこと」です。海運で運ぶ荷物は石油などの天然資源や、自動車などの重量のある商品を大量に輸送できます。
一方、海運のデメリットは、「輸送に時間を要すること」です。
海運も以下の2つに分類されます。
- 内航海運:船で日本国内の荷物を輸送する
- 外航海運:船で日本と外国間で荷物を輸送する
鉄道
鉄道とは、「貨物列車を用いて貨物輸送すること」です。鉄道のメリットは下記の通りです。
- 商品を時間通りに輸送できる
- 環境問題に考慮した輸送ができる
- 大量輸送が可能
貨物列車は大量の貨物を長距離にわたって、効率的に運ぶことが可能な手段です。貨物輸送であれば、ドライバーの労働力不足の対策にも有効。また、電化された区間であれば二酸化炭素を排出せず、環境に優しい輸送手段といえるでしょう。
陸運に比べて「輸送頻度・輸送時間の融通が効かない点」はデメリットとして挙げられます。
倉庫
倉庫は、「倉庫での商品管理業務を行うこと」です。倉庫では食品から日用品などの身近なものから、製薬品や大型電化製品などあらゆる商品を取り扱っています。
倉庫では「別の目的地に運ぶための管理や一時保管」の役割も担います。また、搬入した商品の検品や仕分け、荷揃えなども倉庫の担当分野です。
また、近年はITの進化に伴い、荷物に適した環境下での安全な保管ができるようになりました。そのため、小分け包装や値札付けなど流通加工を行える倉庫が増えてきています。
業界研究のポイントは?
物流業界には上記で述べた5つの領域があり、それぞれにメリット・デメリットがあります。スムーズな物流を維持していくためには、それぞれの領域が補完しあいながら連携していくことが必須です。各領域にどんな役割や課題があるのかを理解し、就活の参考にしてみてください。(キャリアアドバイザー 内田さん)
物流業界の現状
それでは、物流業界の現状を「人材不足への対策」「EC市場の拡大」「サステナビリティへの取り組み」という3つの視点から解説していきます。
人手不足への対策
物流業界の現状として「人手不足への対策」が挙げられます。現在の物流業界は、需要が高まる一方、人手不足への対策は避けては通れない課題です。
例えば、配送ドライバー不足による長時間労働、ドライバーの高齢化、将来を担う人材の不足なども見逃せないリスクだと言えます。
このような課題や現状を知ってもらうために、国土交通省が主体となって「ホワイト物流」推進運動を促進しており、課題解決に向けて動いている状況です。
EC(電子商取引)市場の拡大
物流業界の現状として、「EC市場の拡大」が挙げられます。経済産業省の調査によると、令和4年のBtoC-EC(消費者向け電子商取引)市場規模は22.7兆円に達し、前年比で9.91%増に拡大しました。
成長している背景
- スマートフォンやタブレットの普及:いつでもどこでも簡単に買い物ができる環境が整い、EC利用者が増えた
- コロナ禍の影響:外出自粛や巣ごもり需要により、EC利用がさらに加速した
- ECサイトや物流サービスの進化:買い物がより便利で快適になったことで、EC利用者が増加した
EC市場は今後も拡大していくと予想されており、物流業界はさらなる変化を迫られるでしょう。物流業界は、自動化やデータ分析などの技術を活用し、効率化とサービス向上を図ることで、EC市場拡大に対応していく必要があります。
サステナビリティへの取り組み
物流業界の現状としては、「サステナビリティへの取り組み」も挙げられます。サステナビリティとは「持続可能」という意味です。持続可能な取り組みとは、「地球の資源を大切にして、一つしかないこの地球でずっと暮らすための取り組み」を指します。
トラックや車などを使って輸送すると二酸化炭素の排出量が多いため、環境問題について向き合わなければなりません。そのため、昨今、環境へのダメージが少ない鉄道や船舶での輸送に転換する「モーダルシフト」が注目を集めています。
また、環境問題を考慮して、企業の垣根を超えた共同配送も行われています。今後も物流業界は、「サステナビリティへの取り組み」が求められるでしょう。
物流業界をとりまく課題と今後の動向
現状をふまえた今後の動向についても見ていきましょう。
IT技術の活用によるスマートロジスティクスの実現
物流業界では、増大する物流量に対応するため、国と民間企業が力を合わせてITテクノロジーの利活用を模索しています。経済産業省の資料では、物流業界におけるIT利活用の例として、下記のような取り組みが掲載されています。
最適なサプライチェーンの構築、運用管理
例)販売履歴や気象データによる需要予測、IoT活用した在庫情報の共有による、生産計画の精度向上
新輸送モデルの構築、運用管理
例)GPSやテレマティクス(※1)、ETC2.0(※2)などの活用による車両情報(位置情報、積載率、実車率など)の入手、ラストワンマイル(※ 3)配送システム(ドローン宅配、宅配ボックス、物流版ウーバーなど)
(※1) カーナビのように自動車などの移動体に通信システムを搭載し、リアルタイムに情報サービスを提供する仕組み
(※2) 料金決済だけでなく、道路情報と連動して様々なサービスを受けられる次世代型ETC
(※ 3) 届け先との最後の接点を指す言葉
物流拠点内作業の自動化と作業改善
例)完全無人物流センターの実現、ロボットによるピッキングや荷揃えの完全自動化、ウェアラブル端末、パワースーツ、ロボット台車の活用
※ 参考:経済産業省「IT利活用分野について(物流分野)」
このように、物流業界は今、IoTやAI、ビッグデータを活用することにより、人手不足の解消だけでなく、生産性の向上や新たな価値の創出を目指しています。
また、企業がサプライチェーンマネジメントを導入するうえで、サプライチェーンの大部分を担っている物流業界が果たす役割は大きく、物流業界に大きな期待が寄せられています。
物流業界以外の業界研究は進んでいますか?dodaキャンパスの「業界研究ファイル」を活用すれば、人気12業界のビジネスモデルや仕組み、やりがいといった内容が効率的に理解できます。ぜひ、ダウンロードして活用してくださいね!
物流業界で働く際に感じられるやりがい
IT技術の進化やコロナによる影響もあり、ECサイトが盛り上がりを見せてきています。そのため、物流業界の市場規模は徐々に拡大しています。
矢野経済研究所は物流17業種市場に関する調査を実施(2023年)を発表しました。これによると、2019年から2021年まで物流17業種の市場規模は上がり続けています。
物流業界で働くと得られる「やりがい」にはどんなことがあげられるのでしょうか。順番に紹介していきます。
日本経済を下支えできる
物流業界で働く際に感じられるやりがいは、「日本経済を下支えできる」という点です。物流業界は幅広い分野で生産者と消費者の橋渡し役として、それぞれのニーズに応えて現代社会を支えています。
買い物に行けない高齢者や、忙しくて買い物に行けない共働き世帯などの支えにもなっている業界です。また、スーパーやアパレルショップ、ドラックストアなどに商品が陳列されているのも、物流業界あってこそです。
業界の進化を肌で感じやすい
物流業界は、DX(デジタル・トランスフォーメーション)化への移行が求められています。従来のアナログな在庫管理システムや事務処理ではなく、IT技術や人工知能の活用など、最新の技術を取り入れていくことが業界の課題です。
「倉庫での作業を人が担うのではなく、ロボットに任せ、検品や配送のみを人が担当すること」などが例として挙げられます。時代に合った最新技術を取り入れることによって、経費削減や作業の効率化が期待できます。
もちろん、企業によっても導入状況は異なりますが、こうしたDX化などの業界の進化を肌で感じやすいことは、やりがいといえるでしょう。
物流業界に向いている人の特徴
物流業界に向いている人の特徴としては、主に以下の点が挙げられます。
ITなどの先進テクノロジーに興味のある人
物流業界では、人手不足や効率化のためにIT技術やAIなどの先進テクノロジーの活用が進んでいます。例えば、倉庫内での自動化やロボット化、配送の最適化や追跡、情報の共有や管理などにIT技術やAIを活用しています。ITなどの先進テクノロジーに興味がある人や、柔軟に新しいものを取り入れられる人は、物流業界に向いていると言えるでしょう。
「物の流れ」に興味がある人
「身の回りの物が、どんなルートを辿って、どのように運ばれてくるのか」ということは、意外と消費者の目線からでは見えにくいものです。
物流業界の仕事では、さまざまな物の輸送業務に携わります。企業によっては、輸出入品の通関業務を行う場合もあります。世の中の「物の流れ」が手に取るようにわかるのは、物流業界で働く大きなメリットだと言えるでしょう。「物の流れ」に興味があり、物の流れを通して世の中を知りたいと考える人は、物流業界に向いています。
「社会を支えたい」という使命感のある人
物流サービスは、生活に欠かせない食料や日用品などを、私たち消費者の手に届けるものです。物流業界で働く人々のおかげで、私たちは不便なく生活することができています。「社会を支えたい」という使命感や意志を持った人は、物流業界で社会貢献できる仕事に就くことが可能。
エッセンシャルワーカー(社会で必要不可欠な仕事を担う人)として社会を支えたいという使命感のある人は、物流の仕事は適職と言えるでしょう。
丁寧で几帳面な人
物流の仕事では、会社や個人の「荷物」を預かります。業務効率化が課題とされる業界ですが、荷物を大切に扱う丁寧さが失われてしまってはいけません。また、誤配送などのトラブルも顧客の信頼を低下させてしまいます。
現場で荷物を取り扱うときも、倉庫で整理整頓をするときも、オフィスで事務作業をするときも、細やかな配慮が必要です。性格的に丁寧で几帳面な人は、物流業界に向いていると言えるでしょう。
どういった点で物流業界に向いているのか?それを明確にするためには、物流業界のことをさらに詳しく知ることが重要です。物流業界のことをもっと深く知るためには「業界研究ファイル 運輸・物流業界編」をチェックしてみましょう。
本記事を読んだ上でチェックするとさらに理解が深まりますよ。
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