プロフィール
企画名:「マップで可視化 食料廃棄を食い止めろ!」
日本大学 生産工学部1年
林 志桜 さん
※本記事は「[キャリアゲートウェイ powered by dodaキャンパス]ービジネスコンテスト2022」の受賞者インタビュー記事です。
本ビジネスコンテストは、「大学低学年のうちに実践的な経験を経て、さらに学びや経験を深めてほしい」という考えのもと、大学1,2年生を対象に腕試しと成長機会を提供するべく開催されました。
「SDGs課題をアプリで解決」をテーマに、興味のあるSDGs課題を選択し、解決策を提案。多くの素晴らしい企画の中から、最優秀賞(1組)、優秀賞(2組)、企業賞(14組)、審査員特別賞(1組)の計17組が表彰を受けました。
この記事では、受賞企画の内容から、ビジコン参加の理由や参加によって得られた経験まで、受賞者の声をお届けします。
目次
コンビニのアルバイトで食品廃棄の問題に気づいた
――「キャリアゲートウェイ ビジネスコンテスト2022(ビジコン)」に出場したきっかけは?
大学生活で、いわゆる「ガクチカ(学生時代に力を入れたこと)」がないことに漠然とした不安を感じていたので、ビジネスコンテストの募集を見て、挑戦してみようと決意しました。
起業に興味があり、社内起業制度がある会社で働いてみたいという希望もあります。アプリ作成は得意分野でもあったことから、自分のアイデアを試すのに絶好の機会だと思いました。
――ビジコンで発表したアプリの内容について教えてください。
フードロス、つまり食料廃棄の問題を解決するアプリの開発を考案しました。利用する母体は、コンビニです。コンビニで毎日大量に発生する廃棄食品の一部をアプリを使って予約することで、消費期限前に割安で購入できる仕組みを構築したいと考えました。
企画考案のきっかけは、自分自身がコンビニでアルバイトをしていて、フードロスの問題を目の当たりにしたからです。現場では日々、商品棚にある消費期限の近い食品を期限前に回収し、捨てる作業があります。初めてこの「廃棄」の作業を担当したとき、激しい違和感を覚えました。単純に、両親から教えられた「食べ物を粗末にしない」という考えを否定するものだったからです。日本には、経済的理由で満足に食べられない人もいます。それにもかかわらず、まだ食べられるものを捨てることに疑問を持ったのです。
このような廃棄が出るのは、食品の生産・流通・販売の仕組みに問題があります。そこで、この仕組みを変革したいと考えたのです。
手軽で主流のバーコード決済アプリと連携
――評価の対象となる独自性や実現可能性について、どのような工夫をしましたか?
差別化として、消費期限の2時間前というギリギリのタイミングまで購入できるよう、アプリに消費期限前の商品の割引情報がアラートで送られる仕組みを考えました。
アルバイト経験で、廃棄される商品は、長い場合で消費期限の1日前(24時間前)に廃棄されることがわかっています。そこで、消費期限は切れていないが商品棚には出せない「24時間前から2時間前」までの22時間をカバーして、食品を割安で購入できるサービスにしました。この現場視点は、独自のものだったと思います。
また、バーコード決済アプリとの連携にもこだわりました。普段、コンビニのレジに立っていてわかるのですが、手軽で主流な決済方法といえば、やはりバーコードを使ったアプリです。
この企画のバーコードは、廃棄される食品を予約購入する権利を取得する機能を兼ねていることも特徴的です。これにより、購入する際は「バーコードを読み取り、その際に決済も同時に行う」方法と「バーコードを読み取り、食品を買う権利を得た上で、現金払いする」方法の2つのパターンから選択できるようになっています。
まずは大学生協から学生に情報発信
――予選でのフィードバックによって、改善された点はありましたか?
どうやって消費者に届けるのか? つまり、ファーストコンタクトの機会をどうつくるかという指摘を受け、確かにその通りだと思いました。自分でも普段スマホを使っていますが、アプリをダウンロードするには、それなりのハードルがあります。
そこで、所属する大学の生協に協力してもらい、アプリをダウンロードしてもらう仕組みを考えました。まずは学生との接点の多い、大学生協の取り組みとして、このアプリを知ってもらい、他のコンビニでも使ってもらう流れをつくることを想定しています。
また、自分の実体験を元に増やした機能もあります。それは、「食べ忘れ防止リマインダー」です。「安い!」と思って、消費期限前の食品を買ってもすぐに食べられないシチュエーションもありますよね? そこで、冷蔵庫に入れておいたら、すっかり忘れて本当に消費期限が切れてしまった……ということも起こります。それを防止するために、アプリから「買った商品の消費期限ですよ」とアラートを出る機能を付与しました。実際、自分もアルバイト先のコンビニで買った商品を忘れてしまうことがよくあって……(笑)。
――今回の企画考案にあたり、どのようなところが大変でしたか?
最初の課題に着目したところですね。実体験ベースの課題発見でしたが、これをどうしたら共感してもらえるか、気持ちを「伝える」部分で苦労しました。具体的には、自分ひとりで取り組んだプレゼンのスライド作成は大変でしたね。内容が伝わらなくては仕方ないけれど、文章が多すぎてもNGだし……と試行錯誤を重ね、何度も書き直しました。両親にも見てもらい、意見を反映しています。
社会課題を解決する企画を考えた時間こそ大事
――ビジコンに参加して、どんな学び、気づきがありましたか?
今回、敗者復活戦で決勝に勝ち上がることができたのですが、やはり他の学生の皆さんと比べて、企画に対する情熱が足りなかったと感じています。一方で、大学の外には、こんなに熱心に社会課題について考えている同世代の学生がいることを知り、刺激になりました。
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また、今回の企画のビジネスモデル、スライド資料のデザイン、アプリのUI(ユーザーインターフェース)のコンセプトに筋が通っていなかったと反省しています。今回は「Marvel」というプロトタイプ開発ツールを使って、アプリUIを作成したのですが、まだまだつくり込みが甘かったですね。ただ、1年生のうちからこうした気づきを得られただけでも貴重な経験になりました。社会課題を解決する企画を考えた時間こそ大事だと思います。
――この経験をこれからの大学生活や社会に出た際にどのように活かして行きたいですか?
ビジコンに参加してから、「社会課題の解決」を自分ごととして意識するようになりました。また、スライド作成やプレゼンをした経験もすでに活かされています。先日、大学の授業で、ビジネスプランをプレゼンする機会があり、スライド資料の「ビジネスモデルの概念図」がわかりやすいと評価してもらうことができました。
冒頭に申し上げた通り、将来は社内起業にチャレンジできるような会社で働きたいので、この経験を大いに活かせると考えています。以前は、社会に対して気になることがあってもスルーしていましたが、今は問題として捉え、どういうビジネスモデルで解決できるかと考える習慣がついています。
また、企業や組織でビジネスモデルを考えるにあたって無視できない「ステークホルダー(株主、顧客、従業員などの利害関係者)」という概念を学べたことも大きいですね。ビジネスや社会活動には、多くの関係者がいて、自分のことだけ見ていては、課題と向き合えないことがわかりました。
今後、機会があれば、またこうしたビジコンに応募してみたいと思っています。むしろ、ビジコンにこだわらず、解決したい社会課題が見つかったら、自分のSNSなどで情報発信するような意識も芽生えています。現在は電気電子工学を学んでいるので、AI(人工知能)などを使った、社会課題の解決などにも興味があります。学生時代に、できる限りのことに挑戦したいと思います。
本気で情熱を持てる企画を考えよう!
――最後にビジコンに興味を持つ学生にメッセージをお願いします。
自戒を込めて言いますが、「情熱が大事」です! 実体験をベースに、自分が本気で情熱を持てる企画を考えると実力を発揮できると思います。このビジコンは、良い意味でビジネスっぽくなく、学生仲間と一緒にワイワイ進めるような雰囲気なので、心配はいりません。
私もこのビジコンを通じて、「B to B(Business to Business)」「B to C(Business to Customer)」といった社会に出て役立つ専門用語や考え方をいろいろ学んでいます。まずは、迷っているなら参加してみてほしいなと思います。
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