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文学部系統出身の先輩の「まなぶ」と「はたらく」をつなぐ

  • 大学1,2年生
  • 2022.04.04

※本記事の著作権は(株)ベネッセ i-キャリアが保有しております。

教えて、先輩! 今、学んでいる科目は、将来何の役に立つの?

文学部の学びは、文学、歴史、哲学、芸術など人間及び人間が創り出した文化すべてが研究の対象です。時代を超えて伝わる書物やあらゆる作品から人間について迫り、理解しようとすることが学びの出発点です。実際にテーマについて探究する際は、先入観に捉われず「それは本当なのか」と批判的思考力を働かせ、広い視野を持って想像力を膨らませながら、様々な立場、視点で比較検討しています。そして、自分なりにアプローチの切り口を見つけ、その本質について考え抜くのが学びの醍醐味といえるでしょう。思考したことを相手に明確に伝える表現力も磨くことができます。

先輩が学んでおいてよかったこと

【文学専攻の先輩】

学生:私は高校時代に源氏物語に興味を持ったことがきっかけで、日本文学を専攻しました。大学の授業は面白いです。ただ、違う学部の友達が仕事に直結するような勉強をしているのを聞くと、今、自分が読んでいる文献が将来の仕事につながるわけではないし、仕事について何も考えていない自分で大丈夫なのか、なんとなく不安です。
先輩「文献や作品との深い対話が、『なぜ?』と問いを立て、思考する出発点だった」

私も本が好きで、たくさん読んでいた方だと思いますが、授業やレポート作成のために多くの文献を読み込むことには苦労しました。中には難解な文献もあり、心が折れそうになったこともあります。

でも、学年が上がり、専門的な学びに入ったとき、これまで多くの文献を読んできた経験が研究の土台になったと感じました。そもそもの知識の量が増えましたし、読むたびに感想や「思ったこと」ではなく、「自分の考え」として、内容を理解し説明することを求められたからだと思います。文章から繊細な心情や細かなニュアンス等を読み取るのはもちろん、言葉に表されていない作者の思いについて深く考える必要がありました。すると、時代背景や史実、当時の歴史観や社会情勢、文化的な背景などを改めて調べ、そこで新たな疑問を持ち、さらに仮説を立てて考察するようになりました。こうした経験から、たくさんの文献や論文を読むことの必要性も理解できました。作品の一場面をとっても、様々な解釈や主張がある中で、自分は何を根拠としどう結論付けるのか、論理的に思考を組み立てていくことも学びましたね。

これらの学びは、社会人になった今につながっています。例えば人は同じことを書いたり話したりしても、立場や関係性、価値観等から、その本意は少しずつ異なります。自分の基準で決めつけず、その人の発言の真意を考えながら対話する時に、作品との向き合い方と同じだと感じます。また、論文作成からは、相手にわかりやすく説得力のある根拠を持って考えを表現する手法を学びました。それは社会に出て報告書や企画書を提出したり、会議で意見を発言したりする時に役立っています。「なぜ?」という疑問を明確にした上で、自分でその根拠を探すトレーニングを積んできたからこそだと思います。

【史学専攻の先輩】

学生:私は中世ヨーロッパの歴史に魅力を感じて、西洋史を学びたいと思い、大学を選びました。好きな歴史について学べている点については満足していますが、将来は少し不安です。社会の先生や学芸員になるつもりはないので、西洋史を生かせる仕事が思いつきません。
先輩「1つのテーマについて探究するときの、想像力と行動力」

私も戦国時代や幕末が好きで日本史を専攻しました。趣味で、歴史的な名所に行ったり、歴史に関するドラマを観たりしていたので、大学で新しい知識を知れば知るほど面白く感じていました。

有名な史実であっても、当時起こった事実や、関連する人が何をどう考えて行動したのか等、今となってはすべてを正確に知ることは不可能ですよね。でも、様々な史料に基づいて因果関係を考え仮説を立てる中で、先生に言われたのは「想像しよう。自分で動いて調べよう、目で見て考えよう」でした。実際、自ら史跡に足を運び、そこで当時の風景をイメージしました。事前にどのような史料かを調べ、現物を確かめ学芸員の方に疑問点を質問しました。そうして集めた材料をつなげて考えることで「あの時この人物はこう考えて決断したのではないだろうか」と、その人物像に迫ることができたのです。

一つの史実の様々な見解を文献で調べ、史跡や史料の情報収集をするのは地道な作業ですが、実際に自分で調べ、現地に赴き体感し、自分なりの仮説を作り上げることが史学の面白さだと思いました。西洋史だと現地に行くことは簡単ではありません。でも、アプローチする史実を決め、史学史や当時の世界地図を確認し、どの言語や人物、関係性等にフォーカスして考察するか、収集する情報や観点は実に幅広く、多面的です。ヒントが国内の博物館や企画展にあるかもしれません。情報収集したものをつなぎ合わせ、想像し、検討を重ねるのは、歴史の学びの特徴です。私は、歴史とは「教訓」の宝庫であり、先人の生き方や経験に学び、その学びを言語化して次代につなぐという、社会に還元できる学問だと思っています。

そして、私にとっては史学の学びは仕事のやり方そのものです。史実にアプローチするように、事前にできる限り情報収集し、分析データ等から仮説を立てた上で、現地に行ったりお客様や関係者に会ったりするプロセスを重視します。人の気持ちや行動は、データだけでは説明できないと考えるからです。また、たとえ失敗しても、結果から教訓を得て次に生かすにはどうすべきかを考え行動することは、仕事に必須のスキルだと思います。

【哲学・美学専攻の先輩】

学生:私は大学で哲学を専攻しています。哲学の内容は抽象的な内容が多い反面、言葉を正確に理解しなければならず難しいです。「勉強が大変」と友達に言うと、「哲学って就活に役に立つの?」と聞かれました。私は別に就活とか即物的なものに役立てるために学んでいるわけではないので、その質問にちょっともやもやしました。
先輩「仲間と対話を通してテーマに問いを立てて迫り、論理的にアプローチする学び」

私も「答えがないことを考え続ける哲学って大変じゃないの?」と友人に言われました。哲学科でない人に、哲学で学ぶ内容を理解してもらうのは難しいですよね。でも、哲学科も文学部の他の専攻も、そこまで学び方に違いはなかったと思います。外国語で論文や原典を読み、文献を読み解き、考え、レポートを書き、歴史を学ぶのは他の専攻と同様です。

哲学科ならではというと「対話型授業」「話し合う機会が多い」という点だったと思います。哲学書の知識をベースに、先生から問われたテーマについて自分の考えを論理的に整理し、相手に伝えるよう努力しました。また、相手の意見をただ聞くのではなく、「なぜそう思うのか」を考えるため、相手の話を引き出す質問や雰囲気を心がけました。正解はないので、「問い」に対して論理的にアプローチできたかどうかを、先生によくつっこまれました。哲学には自説を証明するために、他学部のような分析結果の数値がありません。数値を使わないのに論理的に言葉だけで理論を証明するのがとても大変でした。だからこそ、自分が疑問に思ったことをそのままにせず、「なぜ」と様々な面から考え、アプローチするテーマを絞り込むこと。理論を積み上げるプロセスに矛盾はないか、言葉の使い方は誤解を生まないか、表現は適切かを考え続けること。それらから、論理的に考える力と表現力を磨けたことが、結果的に今の仕事に生きていると感じています。

哲学を学ぶ仲間は、知的好奇心を持ち、日常で生じる疑問をそのままにしない、言葉を正確に扱いたい人が多かったと思います。社会には、あらゆる場面に「なぜ?」から始まる問題があります。自分とチームの仲間が持っている知識やスキルを基に対話しながら、問題の本質に迫り、原因から課題を整理し、解決に向けて模索します。そのプロセスは、哲学のゼミでの学びに通じるものだと感じています。

文学部系統出身の先輩が、大学時代にやっておいてよかったと思うこと

文学部の学びでは、専門分野の知識だけでなく、テーマを発見、探究するための力が身につけられます。その学びに取り組む過程こそが社会で生きます。その「社会で生かせる」という体験や手ごたえを、ぜひ大学生のうちに複数持ってほしいと思います。

まず、意識したいのは「実際に今の社会を知ること」です。私たちが所属している社会は、かつてないスピードで変化しています。社会の見識を深め、実社会にどんな課題や仕事があるか、といった観点でぜひ情報収集してください。

次に、将来どんな分野、テーマに取り組みたいかという視点です。何なら「やってみよう」と思えるかは、自分にしかわかりません。「知らない仕事」は選択肢にもならないでしょう。大学生のうちに「知る努力」として経験を積むために、学内外の様々なプログラムを活用するといいと思います。ボランティアや異年齢の人と関わるプログラム、インターンシップはもちろん、興味がある業界のアルバイト等もよいでしょう。実際にそこで体験して感じたことが、自分がどのような仕事を通して社会に貢献したいかのヒントにもなります。そこで人と関わった経験から得られた気づきは、今の時代に生きる人間として、作品や自身のテーマにアプローチするための学びにもつながるはずです。

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