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心理学部系統出身の先輩の「まなぶ」と「はたらく」をつなぐ

  • 大学1,2年生
  • 2021.10.01
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※本記事の著作権は(株)ベネッセ i-キャリアが保有しております。

教えて、先輩!今、苦労している科目は、将来何の役に立つの? 

心理学は、実験や統計が研究に欠かせない科学的な学問です。人間の心を軸に、身体や脳、他者、集団、環境、社会とどのように影響し合っているのかを検証します。目的別や対象別に分野は細かく分かれますが、いずれにおいても対象を観察し、仮説を立て、検証するプロセスが重視されます。そのため、データを正しく収集し分析して考える力が身に付きます。
実験や調査を繰り返し行い問題の本質に迫るプロセスで、論理的に考え表現する力や、「それは正しいといえるのか」と考え続ける「批判的思考力」も磨くことができます。

社会人の先輩に聞いた「専門基礎科目で大変だった科目」TOP3

・心理学概論

・統計学基礎、心理学統計法

・心理学基礎実験

先輩が学んでおいてよかったこと

【心理学概論】

学生:私は、やりたい分野を決めて心理学を専攻したのに、興味がない分野の心理学も幅広く学ばなければならず、内容も難しくて頭に入ってきません。公認心理師になるための必修科目ですので頑張りたいのですが、やる気が出ません。
先輩「幅広い分野を学ぶことで、自身のテーマを探究するときに知識として生かせる」
私は、漠然としていた心理学のイメージが、この授業で変わりました。元々は「人の心がわかる」「心理テスト」といった程度に考えていました。ですが、この授業で、心理学は幅広い専門分野の基礎的理解が必須であり、主張がエビデンスに裏付けられることが重要な学問であることを徹底的にたたき込まれました。ただ、当時はよくわかっていませんでしたね。

重要性に気づいたのはゼミの配属先について考え始めた時でした。この科目での学びが、ゼミを検討する材料になったからです。ゼミに所属してからも、検索サイトでさまざまな心理学の学術文献を調べ、仮説の立て方や研究の進め方を学びましたが、それを理解する上で必須の知識でした。他のゼミの同級生と、互いの取り組みやアプローチ手法を共有する際も、内容を理解し合えるので自らの研究のヒントにもなりました。年次が上がると学ぶ分野が限られるので、この科目がなければ限られた知識と視野でしか考えられず、研究が深まらなかったと思います。

社会に出てから、他の分野の学びが生きる場面は、問題を発見し課題を設定するプロセスで頻繁にありました。例えばサービスの問題点を検討する際、異なる業界の最新動向を参考に検討することで、新たな視点で考えられることがあります。幅広い知識を基に情報収集し、テーマに対して多角的にアプローチすることの重要性に、この科目を通して気づきました。

【統計学基礎、心理学統計法】

学生:高校生の時は文系で数学をあまり勉強しなかったので、本当につらいです。授業で先生が何を言っているのかわからないこともあり、周りの友達に聞きまくっています。こんな状態で、この先、心理学部でやっていけるか不安です。
先輩「エビデンスを示して論理的に説明できる力が身に付いた」
私も全く同じ状況でした。「心理学は統計が大変」とは聞いてはいましたが、ここまで数学を勉強するのは予想外で、「数学が嫌で文系にしたのに」と途方にくれました。 唯一の救いは、心理学に関連する問題を読んで考え、立式し、計算する際に、先生が解説してくれた点でした。高校生の時は、ただ公式に数字を当てはめていただけだったので、それに比べるとまだ数字に意味があるように思えました。「苦手だ」と避けていると、余計わからなくなって嫌になるので、授業後半はオフィスアワーに質問にいきました。辛抱強く教えてくれた先生には感謝しています。自分がどこでつまずいているのか、気づくことができました。

この科目は、エビデンスベースで思考するためのスタート地点でした。統計の基礎知識があれば、データを基にした論理的な説明ができますが、それは社会のどんな職種にも役立ちます。例えば、営業活動でお客様に提案する際、信頼できる数値やデータを示せると説得力が増します。これこそ、統計学で鍛えられた財産だと思います。また、この科目を通して身に付いたExcelのスキルは、業務効率の向上につながっています。あの時逃げずに学習し、演習の経験を積めてよかったと心から思っています。

【心理学基礎実験】

学生:とにかくハードです。「予習して、実験を行い、レポートを書いて提出する」期間が短く、レポートの書き方も細かく指示され、頻繁に提出し直しています。他の文系学部の友達はそんなに大変そうではなく、心理学部を選んだことを後悔するほどです。
先輩「心理学実験は、全ての仕事のプロセスに通じ、必要なスキルもトレーニングできた」
基礎実験は心理学の学びの「型」を学ぶための重要な科目だったと、今ならわかります。でも、当時はとにかく大変で、「やらされている」感や負担感が強かったです。

ただ、基礎実験、応用実験、卒業研究と進むにつれ、「状況を客観的に観察、理解し」「情報を収集して仮説を立て」「実際に分析・検証し」「事実から考察を行い」「全てを論理的に文章で表現する」というプロセスに慣れていきました。卒論になると、自分で考えて決める範囲が広がり内容は難しくなりましたが、思考プロセスがシャープになった感覚がありました。

今思うと、これらの作業の積み重ねは社会に出て非常に役立ちました。特に、エビデンスを基に、「この事実が意味するものは何か」「本当に実証できているのか」を考え続けることで、批判的思考力が身に付いたと思います。仕事とは、社会にある何らかの問題を発見し、チームでその解決に向けてトライと検証を繰り返していくものが大半です。共有や報告のために文書を作成する機会も多いですが、レポート作成で慣れていたので仕事でも苦になりません。一連の心理学実験の過程で身に付けた力は、社会で問題を解決するためのプロセスで生きていると感じます。

先輩が4年間の心理学の学びで身に付いたと思う力

心理学は、変化する社会において、人の心を通して問題を見つけ、解決に向けてアプローチするための科学的な手法を身に付ける学問です。「なぜ?」「本当か」と考える「批判的思考力」を磨き、データを活用して論理的に考え、表現するトレーニングができます。これらは、実社会のどの分野でも生かせます。カウンセリングを通じて学ぶコミュニケーション法は、チームのメンバーと協働する場面や営業等でもおおいに役立てられるでしょう。

また、心理学は、経営・社会・法(犯罪)・防災等の社会科学だけでなく、情報系、工学系、生命・医学系、教育系分野と連携した協働も進んでいます。好奇心を持ち、学問領域にとらわれない幅広い観点で学び続けることで、社会で活躍するフィールドを広げられます。

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