エントリーシートなど、就職活動の場では企業を「御社」や「貴社」と表現するケースが多く存在します。学生生活の中ではあまり使わない言葉だけに、シーンごとの使い分けに悩む学生も多いはず。
この記事では、御社や貴社の使い分け方から、就活には必須ともいえる就活用語について説明していきます。メールなど文面上での表現なども例文をのせていますので、適した言葉遣いが出来ているかなどを知ることができます。
使い分けができているかによって採用担当者の好感度もきっと変わるはず。就活の成功率を上げるためにも、正しい敬語を身につけておきましょう!
貴社と御社の使い分け方
「貴社」と「御社」のどちらも相手の会社を敬った表現。ですが、その使い方には、「貴社(きしゃ)=書き言葉」「御社(おんしゃ)=話し言葉」という違いがあります。
貴社には他にも、記者、汽車、帰社、など多くの同音異義語が存在することから、話し言葉には適さないと見なされている事が理由として挙げられます。志望動機やメールなどの書面文章に用いる際は「貴社」、面接などの直接発声で表す際は「御社」を使うと覚えておくといいでしょう。
とくに、一文の中に貴社と御社を混ぜ込んで使ってしまうのはよくありません。そのような表現を就活中に使わないよう、細心の注意を払いましょう。
御社・貴社の使い分け方一覧
履歴書・エントリーシート 例文
「貴社のクライアントファーストという企業理念に深く共感し~」
面接時 例文
「私は御社のクライアントファーストという企業理念に深く共感し~」
NG例文
「私は貴社のクライアントファーストという企業理念に深く共感し~~、そこで、私の能力をぜひ御社に~~」
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貴社と御社を間違えたときの対処法
「貴社」と「御社」の違いを正しく理解していたとしても、どうしても緊張する面接では間違えてしまうことがあるでしょう。面接で御社を貴社と言い間違えたときは、慌てずに一旦立ち止まって「御社」と言い直すのがうまく乗り切るコツです。下手に取り繕うよりも、間違えたことを素直に認めたほうが面接官に良い印象を与えられます。むしろ、適当にごまかしてうやむやにすると「常識を知らない」と判断される恐れがあるので注意が必要です。
書面については、「貴社」を使っていることを提出前に必ず確認するようにしてください。間違って「御社」と書いていた場合は、面倒でも書面を作り直さなくてはなりません。作り直しても提出期限に間に合うように、書面は余裕を持って作成することを心がけましょう。
人事担当者には、貴社と御社の使い間違いを気にしない人も一定数います。しかし、一般常識を知らないと判断され、選考に影響する可能性がある以上、貴社と御社の使い分けには十分注意するべきだといえます。
一般企業以外の敬称の表現
会社以外のところはどういった敬称をつければいいのでしょうか。ビジネスの場では「貴社」と「御社」以外にも多数の表現が存在します。履歴書やメール、問い合わせ時の応答や面接などで言葉遣いを混同してしまっていると、企業の方から不安がられてしまうかもしれません。それぞれの表現を正しく把握しておきましょう。
特に、銀行は会社という枠組みでも、特別に「貴行=御行」という言葉遣いが求められるので、注意しましょう。
迷った際には、以下の一覧表を参考にしてください。
書き言葉⇔話し言葉
銀行 貴行=御行(きこう=おんこう)
公庫・金庫 貴庫=御庫(きこ=おんこ)
組合 貴組合=御組合(きくみあい=おんくみあい)
学校 貴校=御校(きこう=おんこう)
学園 貴学園=御学園(きがくえん=おんがくえん)
お店 貴店=御店(きてん=おんてん)
法人 貴法人=御法人(きほうじん=おんほうじん)
病院 貴院=御院(きいん=おんいん)
団体 貴団体=御団体(きだんたい=おんだんたい)
支店 貴支店=御支店(きしてん=おんしてん)
役所~省 貴省=御省(きしょう=おんしょう)
役所~庁 貴庁=御庁(きちょう=おんちょう)
郵便局 貴局=御局(ききょく=おんきょく)
就活で気をつけたいその他の表現
そもそも「学生生活で敬語を使い慣れていない」という学生の方も多いはず。自身では正しいと思っていても、実は間違えた敬語を使っている恐れも……。間違ってしまうことの多い敬語を正しく認識するだけで、他の就活生と差をつけることが出来るのは間違いありません。ここでは、正しい敬語の表現がどういったものかみていきましょう。
二重敬語は間違った表現
敬語をいくつも使うことで最大限の敬意を払おうとする学生もいますが、それは文法的にも間違い。たとえば、「拝見いたしました」では「拝見する」という謙譲語と、「いたす」という謙譲語の2つが敬語として重複しているため、「拝見しました」の方がスマートかつ、適切な表現となるのです。
また、文頭に「お」や「ご」を過剰につけてしまうのも避けましょう。やりがちなものとして「~をおやりになられていたのですか?」「~様がご覧になられました」などが挙げられます。
「お(ご)~になる(られる)」という言い回しは基本的に二重敬語となってしまうため、「~をなされていたのですか?」「~様がご覧になりました」というように、「為さる(なさる)」という言葉をメインにするのもひとつのポイントです。
「御中」と「様」には違いがある
会社に属する一部組織への敬称としてもちいられるのが「御中」、対して、個人に対する敬称が「様」なります。御中は「担当者様」の代わりとして使われているというイメージでも良いでしょう。
一般的に、特定部署など担当者が複数いる場合は御中を、担当者の個人名まで判明している場合には様を活用することが推奨されています。
たとえば就活中に「人事部」へ封筒を送りたい場合には、「~社 人事部 御中」という表現がベスト。個人を特定しないことで、人事部の人間であれば封筒を開封することが出来ます。そのため、より迅速に対応を求めることができるでしょう。
以下の記事では封筒の書き方についてまとめています。ぜひこちらも参考にしてみてください。
【実例付き!】エントリーシート・履歴書の郵送ってどうやるの?覚えておきたい封筒の書き方
役職には様をつけない
相手へのメールや封筒の宛名に様をつけることも多いはず。その際に、役職に「様」をつける形で送ってしまう学生もいるかもしれません。しかし、役職へ「様」という敬称をつけるのは間違い。よくやりがちな表現ですが、「役職を最初に書き出し、名前に様をつける」というポイントを意識しましょう。
役職名を書く際の注意点
正しい表現
名前と役職をそれぞれ書き分けている。
「~本部長 ~~様」
間違えた表現:
名前と役職を混合している。
「~~本部長様」
尊敬語・謙譲語・丁寧語の違いを理解する
日本語における敬語表現は、尊敬語・謙譲語・丁寧語の3種類に大きく分けることができます。
まず、尊敬語は相手を立てるときに使う敬語表現で、行為の主体は相手となります。一方、謙譲語は自分がへりくだるときに使う敬語表現で、行為の主体となるのは自分です。丁寧語は主体を問わない敬語表現で、文末に「です・ます」をつけて丁寧さを表します。尊敬語や謙譲語は相手を敬うときに使われますが、相手を問わない丁寧語は日常生活の中でも頻繁に使う機会があるのでなじみ深いでしょう。
例えば、「言う」という動詞の敬語表現を紹介すると、尊敬語は「おっしゃる」「言われる」、謙譲語は「申す」「申し上げる」、丁寧語は「言います」となります。丁寧語は簡単ですが、尊敬語と謙譲語の使い分けは少々複雑です。目上の人が「おっしゃる」、自分が「申し上げる」と考えれば、使い分け方がわかりやすいのではないでしょうか。敬語を使うときは、行為の主体が誰なのかを意識して尊敬語と謙譲語を使い分けることが大切です。
メールの際に使いたい「クッション言葉」
その他に、就活の面接やメールを活用する場面で覚えておきたいのが「クッション言葉」の存在。正しい言葉遣いができていても、クッション言葉を適切に使えなければ、ぶっきらぼうな印象を与えてしまうことも。
とくに、文章でやり取りをするメールでは、クッション言葉をはさむだけで印象が大きく変わります。ここでは、正しいクッション言葉をしっかりと確認しておきましょう。
何かをお願いするケースに使えるクッション言葉
お手数をおかけしますが
差し支えなければ
ご多忙中とは存じますが
恐れ入りますが
ご迷惑でなければ
大変失礼ですが、
ぶしつけなお願いで恐縮ですが
お手をわずらわせますが
伺いたいことがございます
例文
◯「ご多忙中とは存じますが、本日中にご返信頂けますと幸いです」
×「本日中にご返信頂けますと幸いです」
何かを断るケースに使えるクッション言葉
あいにくですが
心苦しいのですが
誠に申し訳ございませんが
ありがたいお話ではございますが
身に余るお言葉ですが
失礼とは存じますが
恐縮ですが
誠に勝手ながら
例文
×「今回は謹んで辞退させて頂きたく存じます。」
◯「恐縮ですが、勝手ながら今回は謹んで辞退させて頂きたく存じます」
御社貴社も慣れれば簡単!敬語は日々意識してみよう
就活をしている学生の中には、「敬語の正誤や、正しい言葉遣いが分からない」という人もいるでしょう。また、社会人であっても誤った敬語を使っている方もおり、どれが正解なのかと日本語の難しさに頭を抱える学生も多いでしょう。
しかし、社会人同士で他者とのコミュニケーションを円滑にするには、正しい言葉遣いが必要不可欠。目上の上司やクライアントに対して間違えた敬語を使ってしまうと、相手の機嫌を損ねるだけでなく、自身の評価、ひいては会社の評価も下がってしまうのは明白です。
社会人経験のない学生のうちに正しい敬語を使いこなせるようになるだけで、敬語を間違えている他の学生と比べて一歩リードできるのは間違いありません。たかが言葉、されど言葉。たかをくくらずに、正しい敬語で適切なコミュニケーションを心掛けましょう。
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