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【社会人インタビュー】看護師 就労支援ネットワークONE代表 中金竜次さん

  • インタビュー
  • 2021.12.08
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プロフィール

中金 竜次 さん
・大学卒業後は看護師として病院に務める
・神奈川県の難病支援就職サポーターに転職
・行政から独立し、「就労支援ネットワークONE」を立ち上げる
・病気を抱える人の就職を促進するための講演も行う
八田 美咲 さん
・北里大学薬学部に在学中大学4年生(24卒)
・「dodaキャンパスクリエイティブキャリアサークル」プレインターン研究チーム所属。

今回は看護師の資格を持ちながらも難病患者の就労支援問題に取り組み続ける中金竜次さんにお話をお伺いしました!

中金さんに取材を行った背景

薬剤師として将来働くうえで、その先にいる患者がどのような苦労をしながら生活しているかを知りたいという思いから、今回中金さんにお話をお伺いしました。

インタビューでは、中金さんがなぜ難病患者の就労支援に注力しているか、キャリアの経緯と就労問題の背景の二つの側面からお聞きしていこうと思います。

目次

    .現在に至るまでのキャリアの経緯

    ――まずは中金さんのキャリアについて教えてください

    卒業後は看護師として臨床経験を積んだ後、地域障害者職業センターというところに異動しました。経験を積んでいく中で気づいたのは社会に出れば出るほど医療者がいないということです。ですので、私は医療者として病気を抱え社会的に苦労している人を助けたいと思いその方向にキャリアを歩み始めました。

    【最初はやりたい仕事が分からなかった】

    最初は自分がどんな仕事をしたいか分からず、自分の中でずっと探している感じでした。その中でも男性の看護師という立場で、特に役に立てる場所はないかと考えていて。そういう時、皆さんのように会ってみたい大人にお話を聞いたり、活動に参加させていただいたりして。その中で自分の持ち味や興味を徐々に形にしていきました。
    そうして自分のやりたい仕事や自分も活かせる仕事を探す中で、当時日本で発足したばかりの神奈川県の難病患者就職サポーターに出会い、そこに就職しました。キャリアの偶然か、意識をしていたので出会えたのかもしれませんが。そこでの経験が今の自分に繋がっているのだと思います。

    【行政の狭間で困っている方を民間で】

    神奈川県の労働行政では年間900件ほどの難病患者の方々の就労相談を受けていました。6年間在籍したのですが、その中で行政では十分な支援を受けられず非常に困っている方々を目にしました。そのような方々を何とかしたいと思い、民間でスピード感やテクノロジーを持って始めようと思い「就労支援ネットワークONE」を立ち上げました。

    中金さんが考える難病患者の就労問題

    ―― 難病患者はどのような問題を抱えていますか

    障がい者手帳の対象者は障がい雇用制度に沿って指定されているので、今の制度だけでは評価できない疾病があるんですね。海外では障がい者手帳を取得できなくても評価されることがありますが、日本はそのような制度はありません。ですからそういった方は一般雇用で働くほかないのです。

    【一般雇用で働くという社会的な壁】

    また、健康は精神的、身体的だけでなく社会的な面も含めた定義であるので、より疑問が生まれてくるわけですよ。生きていくためには医療費や生活費を稼がなければいけない。だから病気のことを隠して就職する。そうすると辛い気持ちが顔に出て人間関係の話にも発展してしまいます。そのような背景で就職と離職を繰り返すとさらに就職しづらくなり、お金も人も減ってきてしまう。実際、相談場面でもそういう方に出会いまして、声に出さなきゃいけないなという気持ちがありました。

    病気を抱えることでの仕事への影響

    ―― 就職先を提案する際に考える仕事への影響はなんですか

    個別の疾患や症状によって仕事の相性は異なるので、職業を選ぶ際に考慮する必要があります。例えば紫外線を避けて仕事をしたい方は営業をお勧めできません。一方で手がしびれる病気をお持ちの方は重たいものを運ぶような仕事をすることが難しいなどがあります。あとはどのくらいの時間働けるかということも人によって異なります。

    【疾患の開示をめぐる患者の苦悩】

    病気持ちの相談者が一般雇用で働く場面で、企業側も治療と仕事の両立支援を始めてはいるのですが、プラットフォームが成立しているわけではありません。だから「病気のことを伝えたら採用されないのではないか」といった悩みを抱えている方がものすごく多くいます。開示・非開示で生きづらさを持っている方々は、就労継続に問題が出てしまうので疾患とキャリアというのには影響があるなというのを散見しますね。また、働いている途中で発症された方は今までやってきた仕事ができなくなるので急に違うキャリアデザインを描かなければいけない時のとまどいもあります。

    会社に病気を伝えやすくする工夫

    ―― 相談者が病気を伝えやすくするための取り組みはありますか

    まずは開示のメリット・デメリットをお話ししたうえで、最終的には本人の意思・決定を尊重しています。ただ、雇用を後押しするための助成金制度を使う場合は会社に伝えることが条件なので会社に連絡します。

    【就労できることを文書で伝える】

    企業が採用しやすくするために、労務の再現性をイメージできるような情報提供を書類で作っていくことが重要です。例えば経験者であればその実績を伝えたり、医師からの復職に関する意見書を書いてもらったりもします。ただ、今は会社側が障がい者の一般雇用に関する書類を積極的に求める仕組みが十分に作られていないので、求職者側が面接の際に「医師から就労自体は可能と言われています」「必要であれば診断書の提出もできます」と伝えることで企業にアプローチしています。

    【啓発活動を通して体制づくりを促す】

    就職される多くの方が中小企業で働いていますが、休める日も短く退職に繋がるということが生まれやすい状況があります。その中でも現場で伝えやすくするためには、トップの方にまず理解していただく。そして産業保健の方々に啓発を通してこのような現状を知っていただき、窓口ができることが望ましいです。仕組みが整えられたら社内の情報伝達として回したり、だれもが享受できる社内制度を作ったりすることで段階的に現場が理解できるプラットフォームができると思います。がん疾患では一部で取り組まれていて、今後ますます増えていったらいいなと思います。

    私の活動としては、自治体や労働局の方と連携していて、来年には事業者向けのセミナーでお話しさせてもらおうと思っています。トップや人事労務や産業保健の方に慢性疾患患者や難病患者が就労できることを知っていただくことで、経営側も人材確保の一人としてそういった方々を受け入れやすくなると思います。しかし、難病のほうの就労者が声を上げている人はがんより圧倒的に少ないので、この記事を読んでいる方で関係者がいれば是非とも一緒に声をあげてほしいと思います。

    健常者としての相談者への寄り添い方

    ―― 最後に、健常者として相手にどう寄り添うかを教えてください

    僕自身は臨床現場にいるときに患者との関係性によっては薬も含めた治療のしやすさも変わってくると感じていました。

    【分からないことは分からないと認める】

    ただ、自分はその立場ではないのでわからないんですよね。わからないことは自分でわからないと認めるようにしています。わからないけど分かりたいと思いますと。臨床でたくさんの方の話を聞いたりしていると、第三者としての当事者性を感じるものはありました。当事者の前で立って話を聞いたらすぐ立ち去るのではなく、少し膝をかがめる優しさがあれば関係性が積み重なって形になっていくので、そういう視点を大事にしていければいいなって思います。

    【伝わらないと教えるのではなく、聞くことに集中する】

    知的障害がある方も自分のペースで自分の考えや伝え方を持っていらっしゃるので、理解できないと伝えるのではなく、聞こうということに集中してほしいと思います。僕も知的障がい者と接する中で、その方の言語が受け止め切れず、伝わらない理由を仰る方を見かけますが、ご本人には想いがあり、自分の意見を持っています。その方々が伝える言語とか言いたい背景を、時間を取りながら聞くということをしていけば相手も自ずと言いたいことが出る。そうすれば信頼関係が築かれて次のきっかけができると思います。

    《取材を通して》

    中金さんから病気と闘いながらも仕事をされている方のお話をお聞きし、ただ病気について理解するだけでなく、患者のその先の生活にはどのようなものがあるのかを想像することが大切を改めて感じました。特に、自分は相談者と同じ病気を持っていない中での接し方を質問した際の、「分からないことは分からないと認める」という言葉はとても印象に残っています。まずは相手のつらさや悩みを同じ目線に立って聞き、相手から信頼されるような医療者になりたいと思います。

    (執筆:北里大学薬学部4年 八田美咲)

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