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【社会人インタビュー】薬剤師 NPO法人ヒューマンシップコミュニティ代表 佐野幸子さん

  • インタビュー
  • 2021.11.25
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プロフィール

佐野 幸子 さん
・薬剤師として9年間病院勤務。二人目の出産を機に一度退職。
・パート薬剤師から正社員として復帰後、筑波大学に入学し保健学の修士を取得。
・東日本大震災の被災地に2年間現地でボランティア活動に従事。
・現在は、NPO法人ヒューマンシップコミュニティの代表として地域のヘルスプロモーションを行う。
八田 美咲 さん
・北里大学薬学部に在学中大学4年生(24卒)
・「dodaキャンパスクリエイティブキャリアサークル」プレインターン研究チーム所属。

今回は薬剤師であり、地域のヘルスプロモーションにも尽力している佐野幸子さんに、カウンセリングを行う際どのようなことを意識しているかをインタビューしてきました!

佐野さんに取材を行った背景

私は将来薬剤師になる身として、自分らしさを追求したいという思いがあります。
そのような中、様々な活動を通して「こころの支援」をしている薬剤師の佐野さんを知り、将来自分のキャリアを考えるきっかけとなると考え、取材依頼をしました。
インタビューでは、佐野さんが薬剤師としてメンタルヘルスに注力した経緯や、カウンセリングするうえでどのようなことを意識しているのかを質問していきたいと思います。

目次

    佐野さんのご活動について

    ――まずは佐野さんの現在までのご活動を教えてください

    大学卒業後は国家公務員共済組合連合会「虎ノ門病院」というところに就職して、当時の総理大臣の薬なんかも調剤してたんですよ。
    その当時は結婚したら辞めるのが当たり前で、薬剤師は薬を手渡すだけの仕事でした。そんな中でも自分は出産後も実家にみてもらいながら仕事を続けたんですが、子供の寝顔しか見られないのね。だから2人目は子育てしたいなと思って仕事を辞めました。そこでやめなかったら私の人生は大きく変わっていたと思うんですけど(笑)そこからの経験が今の私を育ててくれています。

    【始まりは子育て中の地域活動】

    2人目の子供が小学校入学とともにパート薬剤師に復帰し、それと並行して、PTAの役員や子供連合会会長などをすべてやり切りました。
    その時に子供たちをめぐるいろんな問題を見聞きして、昔から関心のあった心理学とかをやりたいと思いまして。埼玉県でのカウンセリング講座に1年間通いました。
    そのあとも県の方でエイズの電話相談研修をやり、そんなことをずっとやっていたんですけども。正社員に復帰したときに、これは患者さんに生かさなきゃと思い本格的に勉強を始めたんです。

    【人生の半世紀を過ぎて筑波大学大学院へ】

    調剤薬局で薬局長を仰せつかって、その勉強は大いに役立ちました。そのうち子供達も独り立ちをして、お母さんも何かしなくちゃなぁと思いまして。人生半世紀過ぎてから筑波大学の大学院に行きました。薬学じゃなくて、保健学修士という変わり種なんですよね。それを修了してから、薬科大学で後進の育成をやりながら、地域のヘルスプロモーションをやろうと思ってNPO法人を立ち上げました。多職種連携の健康相談会をやったり、介護予防の料理教室までやったりしてました。NPOを立ち上げたとたんに3月11日が来て、被災地支援のために通いました。
    昨年より、今までの仕事の集大成として、富山県の砺波市で、薬剤師の地域活動を構築すべく奮闘中です。

    活動のきっかけとなった患者さんとのエピソード

    ―― きっかけとなる患者さんとのエピソードはありますか

    しばらく来ないなと思って気になっている患者さんがいて、そしたら夕方遅くなって「久しぶり~」って現れて。「心筋梗塞で運ばれちゃってさ~」と、糖尿病の方だったんですけど。その時には体型が半分くらいになっててね。3つの会社のトップをしている人だったんですよ。会社の付き合いで暴飲暴食をしてしまったり。その方とカウンセリング的にお話をしていく中で、最終的にそのトップを全部降りたんです。それで、自らの健康を選んだ。そんなことがきっかけになりましたかね。

    他にも、お姑さんの介護で「自分になんか構っていられないよ」って言って血糖値が上がってしまう人だとか。「会社にいなければこんなひどくならなかったのにな」って言いながら退院してまた会社に戻っていく人。色々な人たちのお話を聞きました。

    相手が安心して話せる聞き方

    ―― (電話相談員について)電話越しの相手が安心して話せるようにどのような声掛けを行っていましたか

    まず、否定をせずに話を聴くこと。そして、言葉では何とでも言えますが、 表情(対面なら)や声の調子にその人の本当の気持ちが表れているんですよ。
    そういった非言語な部分を捉えることによって「あ、この人は言ってることと違うことを思っているんじゃないか」と気が付いて、 「そこにはどんなお気持ちがありますか」というような形で引き出していく。そうすると相手も話しやすくなると思います。

    【否定ではなく、ポジティブな方向に後押しする】

    例えば、終末期の患者さんの在宅を訪問すると、「もう死んだ方がいいよ」「早く迎えに来てくれないかな」という人は結構多いんです。だけど、死にたいほどの何かを持っているんですよ。その人は。だからその時に、「そう思うんですね。そこにはどんな気持ちがあるんですか、お話ししてくれますか」っていうの。そうすると患者さんは「長生きしたら家族に迷惑かけちゃうんだよ」「思うように動けないし」と愚痴を話してくれる。そうやって話すことで、患者さんの中で整理ができる。
    そうすると「でもね、孫が今度七五三だから、その姿を見るまでは頑張ろうかな」なんて前向きになってくるわけ。そしたら心の中でやったー!って思って。「お孫さん七五三?それはいいですね。中学校入った姿もみたいよね!」ってちょっとそこで応援していくのよ。

    東日本大震災で気づいたこと

    ―― 東日本大震災のボランティア活動ではどういったことをしていましたか

    最初は埼玉の避難所でラウンドしたり、全国から送ってもらった薬を現地に運ぶ活動をしていました。福島や気仙沼の方でもボランティアをし、最終的に宮城の石巻に知り合いがいたので、そこに二年半通いました。
    震災直後に埼玉スーパーアリーナで動いていた時、精神科の先生が来てて、「自殺しそうな人を探してよ」って言われて。そういう人ってね、能面状態で表情がないんですよ。あ、ちょっと危ないなと思って、黙って「大変でしたね」って肩に手を添えたとたん、涙をザーッと流すの。今までは涙なんか流していられないんだって表情もなく頑張ってた人が、「つらかった、怖かったんだよ」って言って涙を流していくんですよ。

    【薬剤師だからこそ気づいたこと】

    自分が飲んでいる薬を把握してないんですよ。皆さん。おくすり手帳も当然持ってきてない。ましてや一包化の薬なんて何の薬かわからないでしょ。薬剤師だって全部覚えているわけじゃない、だけど調べる手段は持っている。そういうところで非常に役に立ちました。
    それがきっかけになってお薬手帳の大事さを震災の時に例えて今お話ししていたりしています。

    【臨機応変に対応する力】

    私が福島で回ってた時、千葉の方のドクターが自分で飲んでいる薬を出して、「これ、同じだからあげるよ」なんて言って(笑)本来自分が飲んでいる薬を人にあげちゃいけない、しかもドクターならなおさらね。だけどやっぱりその時にできる最低限度が最高になるわけだからさ。そういう臨機応変に対応できるっていうのがすごく重要ですよね。その時に「薬剤師としてこれはできません」とか言わないで済むような、そういうキャパも必要ね。

    学生へのメッセージ

    ―― 最後に「人を助ける」仕事に就きたい学生に向けてメッセージをお願いします。

    【人間としての思いやりを持っていてください】

    人の気持ちがわかる人であってほしいです。仕事だから優しくするのではなく、仕事仲間や友達、家族にも優しさが出ている人が本当の医仕事仲間や友達、家族にも優しさが出ている人療人だと思います。そういった行動が患者さんや周りの信頼にもつながるしね。是非皆さん、人間性を磨いていってください。

    【まずは自分を好きになること】

    みんな人に合わせて生きていると、本当の自分がなんだか分からなくなるの。そうすると就職してから仕事に行けなくなってしまう人も今までに見てきたりして。だから自分ってどういう人なんだろう、どんなことがしたいんだろうといつも考えながらいると自分に素直に生きていけると思います。

     そして人にどう思われるかを気にするのではなく、自分はこういう人間なんだから、こういうこと認めてほしいという風に生きるの。自分に自信をもっていれば素敵な自分になれるし。そうすると周りの人も「あ、あの人生き生きしているな」って思ってくれるのよ。

    《取材を通して》

    1時間という短い間でしたが、薬剤師としての学びから、人生としての学びまで非常に実りある内容でした。中でも「否定をせず受け入れる」という言葉は普段の生活で過ごしていても大事なことであり、とても印象的でした。将来どのような道に進むか決まっていませんが、まずは自分を見つめ直して将来のどのような仕事に就きたいかを見据えたいと思います。

    (執筆:北里大学薬学部4年 八田美咲)

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