ガクチカに代わる学生のポテンシャルを見極める方法5選
コロナ禍をきっかけに大きく変化した新卒採用市場。ようやくオンライン対応に慣れてきた現在でも悩んでいる企業さまが多いのが「オンライン面接でいかに学生を見極めるか」ではないでしょうか。特に、「ガクチカ(=学生時代に力をいれたこと)がない学生の評価」に難しさを感じるというお悩みはよく耳にします。
23卒の学生の大半は、アルバイトやゼミ、部活をはじめとする「学生時代の活動」を自粛していました。そのため、「チームで頑張った」「目標を達成した」といった、22卒までの学生が話すようなエピソードを持っていない学生が一定数います。
本記事では、「ガクチカがない」という学生をどのように評価するのか、見極めるポイント別に、具体的なノウハウを紹介していきます。
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様々な見極め手法を検討していく前に大事なのが、「なぜ学生にガクチカを聞いているのか」を言語化しておくことです。
ガクチカを聞いて知ることができるのは、学生の努力の過程やモチベーションの源泉です。学生の他の資質を見極めるためには、ガクチカ以外の方法が適している場合もあります。
例えば、「行動特性」「価値観」など学生の中で長期的に形成されてきた資質の見極めには、幼稚園時代から現在までの出来事を振り返る「ライフラインチャート」を活用することがおすすめです。
まずは学生の何を見極めるのかを決めてから、選考に反映するように意識していただきたいです。
学生時代の取り組みを工夫して引き出す
- 見極められること:行動特性(努力の過程や集団での役割など)、モチベーションの源泉
現在の採用活動において大事なことは、コロナ禍前と同じようなガクチカを話す学生が減っていることを認識し、面接官にも共有することです。
そのうえで、学生のコロナ禍における大学時代の頑張りを評価する方法を考えてみましょう。
「学生時代に力を入れていたことは何ですか」という聞き方を辞める
「学生にガクチカを聞くと、みんな同じようなエピソードを話すなあ・・・」と思ったことがある採用担当の方は多いのではないしょうか。
それは、学生の間でも「選考で評価されるガクチカのひな形」が共有され、ある程度形式化しているからです。昨今の学生は、先輩や社会人に「とにかくチームで頑張った経験がうける」「具体的な数値や結果が伴うエピソードを話すべき」などと就職活動に関するアドバイスを受けることがよくあるようです。
つまり、学生の中には「1人で頑張った」または「具体的な数値や結果がない」ような経験はガクチカとして話すべきではないと思い込んでいる方が多いのです。
見極めたい資質が「周囲を巻き込む力」の場合や、取り組みの難易度を知りたい場合は、「チームで頑張った経験」や「具体的な数値や結果が伴うエピソード」を聞き出す必要がありますが、「行動特性」や「モチベーションの源泉」を見極める場合は、「自分なりの工夫ができているか」「目的があるか」「一貫性のあるエピソードか」が判断できれば、学生から引き出すエピソードはどんな内容でもいいですし、「学生時代に頑張ったことは何ですか?」という聞き方を変えてもいいのです。
これを踏まえ、学生のポテンシャルを引き出せるような質問の仕方を二つ紹介いたします。
①「個人的な勉強や趣味の話でもいいから」という前置きをしてみる
身近な23卒・24卒学生と話していると「コロナ禍でサークル活動やアルバイトに打ち込めなかった分、趣味や資格取得に時間をかけた」方をよく見かけますが、前述の通り、趣味や勉強の話が「ガクチカ」として学生の口から出てくることは少ないのが現状です。
そういったエピソードを引き出すためには、「個人的な勉強や趣味の話でも何でも、〇〇さんの学生時代のことを聞かせてくださいね」といった声かけをすると良いでしょう。
また、「コロナ禍で何か新しく始めたことはありますか?」と質問してみるのもいいかもしれません。
②就職活動を乗り越えるための工夫を聞いてみる
どうしても学生のポテンシャルを判断できない場合の最後の手段として「就職活動の乗り越え方について聞いてみる」という方法があります。
「就職活動しんどいですよね…どうやって乗り越えようとしていますか?」「学業や趣味との両立はどのようにされていますか?」などと学生に問いかけることで、その人なりの工夫ができているのか、継続して努力できているか、見極めることができます。
STARモデルに当てはめて深掘りする
学生時代のエピソードについて引き出した後は、質問を重ねて深掘りをする必要があります。学生が話したエピソードが深掘りしづらいものであるなら、STARモデルにあてはめてみるといいかもしれません。
STARモデルとは、S(situation)→T(task)→A(action)→R(result)の順番に、学生が経験した過去の出来事について質問していく面接手法です。1つの出来事の詳細や行動、結果などをしっかりと掘り下げることで、学生の思考パターンや行動特性を見極めることができます。
STARモデルのさらに詳しい説明はこちらの記事 にまとめておりますので、ぜひ合わせてご確認ください。
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ここでは1人の学生を例に挙げ、深掘りしてみます。
「目標達成志向」を見極めるSTAR面接の一例
「コロナ禍で、韓国語を独学で習得している学生の目標達成志向を見極める」という架空の設定を用いて、実際のSTAR面接を想定してみましょう。
以下が、面接官と学生の間で交わされるやりとりです。面接官の質問が「STAR」のどれに当てはまるのかも付け加えておりますので、確認してみてください。
(面接官)コロナ禍で何か新しく始めたことはありますか? (学生)韓国語の勉強を始めました。 (面接官)どういうきっかけがあったのですか?(S) (学生)韓国のドラマを観るようになって、細かいニュアンスや韓国独特の表現を理解したいと思うようになったからです。 (面接官)韓国語の勉強を始めるうえで苦労したことはありますか。(T) (学生)周囲に韓国語を話せる人がおらず、何から始めたらよいのか全く分からなかったことですね。 (面接官)現在は、どのように韓国語を勉強されているのですか。(A) (学生)テキストでの勉強以外では、1つ取り組んでいることがあります。 (面接官)韓国語はどのくらい習得できたのですか?(R) (学生)先月、〇〇という資格で〇〇点(ビジネスレベル)のスコアをとることができました。 |
いかがでしょうか。深掘りの質問は他にも考えられると思いますが、大事なのは「状況→課題→行動→結果」という流れを意識することです。
学生時代だけではない、これまでの経験について聞く
- 見極められること:行動特性、価値観、モチベーションの源泉
「大学生活で力を入れた経験がない」という学生のポテンシャルや行動特性を見極める際は、ライフラインチャートをエントリーシートの代わりに準備してもらうのがおすすめです。
ライフラインチャートとは「幼稚園時代から現在までの出来事を振り返り、一本の曲線で可視化する」自己理解ツールです。ライフラインチャートを埋めることで、人生の大きな転換点を洗い出し、その時の感情やモチベーションの源泉を言語化できます。
面接で学生が準備したライフラインチャートの内容を深掘りすることで、入社後の再現性が見込めるような、本人の行動特性や資質を導き出せるでしょう。これまでの人生を振り返ることで学生の自己理解が進むため、入社後のミスマッチや内定後の唐突な辞退を避けやすくなるのも、この方法の魅力です。
ただし、学生の過去の出来事をしっかりと振り返るため、ライフラインチャートを導入する際は次の3つのことに注意する必要がありそうです。
こちらから学生のプライベートを詮索しない
学生から回収したライフラインチャートには、学生の家族に関するエピソードや当人の恋愛に関する出来事が書かれている場合もあります。こういった場合、学生が自らそのエピソードについて話し出さない限りは、企業側から学生のプライベートな事情を不用意に深掘りしないように気を付けてください。
例えば、学生の方から「大学3年次に母親が病気がちになり、学業と家事を並行していた」と話しだすだけであれば企業側に責任はありませんが、「今もお母さまは病気がちなのでしょうか?」などと質問を重ねるのはNGです。
学生に聞いてはいけないNG質問は他にも沢山ありますが、特に、ライフラインチャートを導入する際は「話したくないことは無理して話さなくて大丈夫です」といった声かけをするように心がけてください。
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事前記入ができるようにサポートする
「ライフラインチャートを書いたことがない」という採用担当の方も多いかと思いますが、それは学生の場合も同じです。書き方がわからなかったり、人生のどの出来事を取り上げるべきなのか判断できなかったり、書くのに苦労する学生は多いかと思われます。
「社員の記入例をいくつか共有する」など、学生のポテンシャルを正しく判断するためには、記入のサポートをするのが良いでしょう。
大学でどんな活動をしていたのかも聞いておく
ライフラインチャートで記入するのは、幼稚園から現在までの様々な出来事です。学生の中には、大学時代よりも前の出来事にばかり焦点が当てられているライフラインチャートを持ってくる方もいます。
しかし、学生のポテンシャルをより正確に見極めるためには、「大学入学後も継続して成長し続けられる人であるかどうか」を判断する必要があります。念のため、「大学時代にはどんな勉強をしていたのですか?」「何かアルバイトは経験されましたか?」などと、大学時代の活動についても加えて質問しましょう。
適性検査を実施する
- 見極められること:基礎能力(読み書き、計算など)、性格、適性
計算能力や英語能力、一般常識を問う能力検査や、学生のコンピテンシーを可視化する性格検査の実施を検討するのもいいかもしれません。性格検査の結果を面接の深掘りに活用するなど、検査結果は他の選考フローの補助資料にもなります。
適性検査を見極め手法に導入する場合は、問題作成や結果の集計・分析には手間がかかるため、既成の検査を導入するのがおすすめです。
なお、能力検査では、複数人での受検やカンニングなど、ときに学生が不正を働く場合があるのが懸念点ではありますが、「ZOOM上で学生の画面onを義務化しながらテストを実施する」「テストセンターの方式を利用する」といった対策で防止することが可能です。
履修履歴を活用する
- 見極められること:学業に関する興味や志向、「やるべきこと」に対する行動特性
学生の履修履歴や成績を採用基準に取り入れるのもおすすめです。
履修履歴活用コンソーシアムが行った「2019年新卒採用における履修履歴活用実態調査」では、選考時に学業を重視している企業が増加傾向にあることが考察されています。
具体的には、「採用選考において、学業を重視していると感じた企業がどのくらいあったか」という質問に対し、「なし~1割程度」と答えた学生が18卒の調査では約80%にも上ったのに対し、19卒の調査では約50%にまで低下しています。
ただし、気を付けておくべきは「成績を表す数値=GPA」だけでは学生のポテンシャルを見極めるのは難しいということです。それは、学生が履修した講義によって、良い成績の取りやすさは大きく変化し、相対比較が難しいためです。成績の数値だけではなく、「学生が大学で学んだ内容」「学生が自身の学びを言語化できているかどうか」も大切な見極めのポイントとなります。
新卒採用で募集する職種や入社後に関わる事業内容、採用ターゲットなどが明確であればあるほど、履修履歴の活用はおすすめです。
出典:履修履歴活用コンソーシアム「2019年新卒採用における履修履歴活用実態調査」
未来のことを話してもらう
- 見極められること:志向性、社風とのマッチング、過去の取り組みとの一貫性
学生のポテンシャルを見るだけでは面接の合否を判断できない場合には、学生の志向性や社風とのマッチングを見極めるのも良いでしょう。学生が仕事を通して取り組みたいこと・現在課題感を感じているテーマなどについて質問することで、自社の社風・方針とのマッチ度を判断してみてください。
「未来の話であれば、学生が嘘を言っていても分からないのではないか。学生を見極める指標にはできない」とお思いの方もいるかもしれません。そんな方は、本記事の前半で紹介した「ライフラインチャート」も合わせて活用し、学生のこれまでとこれからの話に一貫性があるかどうか、チェックしてみるのが良いでしょう。
※あくまで一致していれば学生の話の信憑性が担保されるだけですので、「一貫性がない=学生は嘘をついている」ではないこともご認識ください。
まとめ
本記事では様々な方法を紹介いたしましたが、この中に入社後のパフォーマンスを100%予測できるものはありません。特に、ポテンシャルに期待して学生を採る新卒採用においては、見極めの手法をいくつか組み合わせ、採用したい学生を絞り込むのが良いでしょう。
学生を見極めるには、学生に求める要件や資質を言語化し、採用ターゲットの設計に力を入れることをおすすめします。 採用ターゲットの設計がまだ十分でない、学生の見極めに自信がないという方は、ぜひターゲット設計に関するこちらの資料をご活用ください。
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効率的な採用活動を実現するためのターゲット設計 5ステップ