
新卒採用における面接での“評価のばらつき”を防ぐ 選考基準の重要性と作成ポイント
新卒採用の面接は、自社が求める人材の資質を見極めるために不可欠です。
しかし、面接で評価すべき項目が多岐に渡ることや、複数の担当者が面接を実施することで選考基準や評価にばらつきが生じやすいという課題があります。
担当者の価値観やフィーリングによって左右される部分も大きいため、「社内の選考基準を統一するのが難しい」と悩まれている方もいらっしゃるでしょう。
こうした問題を解消するために有効なのが、“面接評価シート”の活用です。
本記事では、面接評価シートにおける評価基準の重要性や、作成する際のポイントについて解説します。
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面接評価シートにおける評価基準の重要性
面接評価シートとは、採用面接の選考基準となる評価項目を明確化したチェックシートのことです。
新卒採用の面接では、組織規模が大きくなるほどさまざまな担当者が採用活動に関わるため、学生に対する評価にばらつきが生じる場合もあります。複数の担当者で合否を決定する際、各担当者が同じ目線で学生を見極めることは簡単なことではありません。
また、面接担当者によっては、学生の人柄や人間性から見たフィーリングによって内定を決める場合があります。たとえその学生が優れていたとしても、「どこを見てそう判断したのか」「何が良いと評価したのか」が明確化されていなければ、今後の採用活動に生かせないという課題も出てきます。
このような、「面接担当者によって評価の視点が異なる」「採用した人材の評価基準を振り返ることができない」という問題を解消するためには、面接評価シートの評価基準を適正に設定することが有効です。
面接評価シートで社内の評価基準を明確にするメリット
新卒採用で面接評価シートを活用するとき、社内の評価基準を明確に設定しておくことで、以下のようなメリットが得られます。
● 面接内容や評価のばらつきを解消できる
● 合否のエビデンスを残して、今後の採用活動に生かせる
● シートの内容を社内で共有し、効率的かつ適切な評価を下せる
● 学生への“質問忘れ”を防げる
具体的かつ客観的な評価基準や項目を設けることで、面接担当者による評価のばらつきを解消できるほか、複数の担当者と情報を共有できるため、学生の資質をより正確に判断できるようになります。
「なぜ優秀な人材を獲得できたか」「なぜ採用に失敗したか」といった採用の振り返りも可能になるため、面接の精度と質の向上にもつながるでしょう。
面接官の価値観や勘に頼る採用にならないようにするためにも、面接評価シートの評価基準は社内で十分に検討して、明確化しておくことが大切です。
面接評価シートの作成方法
面接評価シートは、大きく3つのステップで作成します。
1. 求める人物像を設定する
2. 評価項目と評価基準を設定する
3. 評価の優先順位・点数をつける
それぞれ詳しく見ていきましょう。
1.求める人物像を設定する
採用してから「思っていたような人物と違った」とミスマッチが起きないよう、どのような人材を採用するかという人物像を社内で設定しておく必要があります。
人物像を設定する際は、以下の作業が必要です。
● 経営者や人事、現場の意見を集約する
● 過去に採用した学生の実績を考慮して、各部署の意向を調査する
● 入社後に活躍している人材の要素を整理する
人物像は1つに絞るのではなく、経営者や現場の声を取り入れながら、具体的な学生のタイプまで設定しておきましょう。
ただし、求める人物像のハードルが高くなり過ぎると、人材確保が困難になる可能性があります。過去の採用実績を参考に、どのような強みや特性がある人材を確保したいか、妥協点も含めて社内で話し合うことが重要です。
2.評価項目と評価基準を設定する
自社にマッチする人材かどうかを見極めるために、学生にどのような質問を投げかけるべきか、評価項目や質問内容を考えましょう。
評価項目には、コミュニケーション能力・協調性・忍耐力・傾聴力・論理的思考力などが挙げられます。これらの評価項目を絞り込んだあとは、何をもって能力があると判断するのか、具体的な評価基準を設定する必要があります。
たとえば、コミュニケーション能力について判断する際には、以下のような項目があります。
● 面接での受け答えがはっきりしているか
● 相手に伝わりやすい話し方ができているか
● 表情豊かに話ができているか
● グループワークで周囲の学生と積極的に会話ができているか
これらそれぞれの項目に応じて客観的な評価基準を設けることで、面接担当者の判断に統一性を持たせることができます。
3.評価の優先順位・点数をつける
評価項目と評価基準を設定したあとは、評価項目ごとに“5段階評価”もしくは“○か×”などによって評価を点数化します。評価を点数化したあとは、合格・不合格のボーダーラインを設定しましょう。
一律の合格点を設定する際は、標準点を基準に許容できる上下の傾斜配点を設けておくことが重要です。それにより、複数の採用関係者と目線を合わせながら、一定水準を満たした学生を合格と判断できるようになります。
また、採用面接は複数回にわたって実施されるケースもあります。人事担当者や現場責任者、経営者などさまざまな関係者が関わることがあるため、面接で見極めたい項目に優先順位をつけておくこともポイントです。各面接における優先順位を把握できるため、採用関係者全員で一貫性のある評価を下すことが可能です。
新卒採用だからこそ精度を上げるべきポイント
新卒採用は、学生にまだ職歴がない状態です。そのため、面接では、現時点でのスキルや能力だけで判断するのではなく、“将来性があるかどうか”を見極めることが重要となります。
新卒採用における面接評価シートの精度を高めるために、以下のポイントを押さえておきましょう。
学生の性格や価値観を重視する
新卒採用で重要な要素となるのが、その学生の性格や価値観といえます。学生の持つ資格やスキルは、入社後の研修や教育によっても向上できる一方で、性格や価値観は、生まれ持ったものやこれまでの経験によって形成され、入社後に変えることが難しいと考えられているためです。
したがって評価項目を決定する際は、学生の性格や価値観を評価できる内容に重点をおくことがポイントです。
たとえば、新たな商品・サービスの企画や開発を担う人物を求める場合は、以下のような評価基準が挙げられます。
● 多角的な視点から物事を捉えられるか
● 人とは異なる観点を持っているか
● 失敗を恐れないチャレンジ精神があるか
また、自社商品やサービスをお客さまに販売する人物を求める場合は、以下のような評価基準が挙げられます。
● 相手の懐に入りやすい穏やかな人柄か
● 話の順序を工夫して分かりやすく伝えられるか
● 意欲的に自社のリサーチを十分に行っているか
社風や仕事内容に応じて重視すべき性格や価値観を設定することで、自社に合った人材を見極め入社後に即戦力となる人材や、長期的に活躍してくれる将来性のある人材の獲得につなげることができます。
段階評価ができない場合は、判断基準を言語化する
評価項目には、身だしなみのように5段階評価で判断できるものもあれば、表情や性格のように段階評価ができないものもあります。
単に「印象が良かったから」と合格を出すケースもありますが、今後の採用活動に生かすためには「なぜ良いと思ったのか」を言語化して評価することがポイントです。
たとえば、
● テキパキと話して愛想が良かった→コミュニケーション能力が高い
● 論理的に話を進めてくれて分かりやすかった→ロジカルに考えられる能力がある
● 自己PRで自分の強みをしっかり掘り下げていた→客観的な視野を持つことに長けている
など、印象を言語化して評価することで、その学生の能力や人間性を見極めやすくなります。これらの情報をメモできるように、面接評価シートには、面接担当者が記述できる記載欄を設けておくとよいでしょう。
面接評価シートは運営しながらアップデートが必要
面接評価シートは、一度作成して終わりではありません。事前に人物像を設定して綿密に評価項目を考えた場合でも、採用後に「思ったような良い人材ではなかった」と採用に失敗するケースもあります。
また、面接評価シートを用いた場合でも、項目の明確性に欠けていることが原因で面接担当者の評価が統一できず、失敗してしまうというケースも考えられます。
これらのような場合、「なぜ失敗したのか」を振り返り、採用活動を進めるなかで評価方法や項目を更新・改善していくことが大切です。
評価項目を見直したり、項目をさらに細分化したりするなど、採用活動のなかで評価方法をアップデートしていくことで、面接評価シートの精度向上につながります。
また、人によって受け取り方が変わる評価項目(性格や価値観など)については、どのような人が当てはまるのか、人物例や特徴を挙げておくのも有効です。面接担当者による評価の統一化を図るために、面接の研修・教育も視野に入れましょう。
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まとめ
面接評価シートは、自社が求める人物像と学生がマッチしているか見極めるために有効です。評価項目や基準を明確化することで、面接担当者による評価のばらつきを防ぎ、一貫性のある選考を可能にします。
面接評価シートを作成する際は、まず自社の求める人物像を明確にしたうえで、経営者や人事担当者、現場の意見を取り入れながら評価項目を決定しましょう。
評価項目は、履歴書やエントリーシートを見れば分かる内容ではなく、性格や価値観を重視するのがポイントです。また、「採用に失敗した」「実効性に欠けていた」などと感じた場合は、失敗の原因を振り返り、面接評価シートの項目や基準をアップデートし、同じ失敗を繰り返さないようにすることが求められます。
自社にとって将来性のある学生を採用できるよう、面接評価シートを活用して採用活動を成功させましょう。
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