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リフレクションと経験学習モデル―ラーニング・トランジション―

  • 大学1,2年生
  • 2022.04.04
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本記事の著作権は(株)ベネッセ i-キャリアが保有しております。

リフレクションとは、一段高いところから自分の行動や感情を振り返ること

リフレクションとは、内省し自分自身を客観的に評価することです。自分の行動や考えたこと、理解したこと等を振り返る際、結果やその時の自分の感情とは一旦切り離します。
そして、自分より一段高いところから活動全体を見渡して行動のよかった点と課題をあぶり出します。

例えば、授業の中のグループワークの場面で、グループ活動が活性化しなかったグループにいたAさんとBさん、2人のケースを見ていきましょう。AさんとBさんは同じグループで活動しましたが、話し合いが成立しなかったので、「このグループ活動は失敗だった」と思っているところです。

その時の結果のとらえ方や一時的な感情は以下のようなものでした。

【頑張って発言したAさん】

【発言できなかったBさん】

その場で感じた気持ちをまず言葉にしてみましょう。その気持ちを否定する必要は決してありません。少し落ち着いたら、リフレクションで今の自分より一段高いところから感情と合わせて事実をとらえなおします。
そうして広い視野で全体を把握することを「俯瞰(ふかん)」と言います。

AさんとBさんの結果に対する感じ方や、感情のおもむくままではない客観的な事実を基に俯瞰して考えた内容は以下のようになります。自分の視点だけでなく、冷静に周りはどうだったのか、「この場合、一般的にどうなのかな」という視点でとらえなおせています。

【Aさん】

【Bさん】

リフレクションする際のポイントは「どの行動が成果につながったか、つながらなかったか」「何をしている時に集中できたか」「自分の気持ちと他者のとらえ方にギャップはないか」「どんな知識が足りなかったか」「次はどのような行動をとるとよいか」等、様々な視点で自分について考えることです。
それを「メタ認知」とよびます。社会に出てもメタ認知ができる人ほど一つの失敗に不必要に落ち込まず、次の行動に向けて戦略を立てて活躍できる人材であると考えられています。

経験学習モデルを大学生の学びに取り入れる

リフレクションスキルを身につけても、「行動」や「学び」がなければ、そもそも振り返る内容がありません。
コルブ(D.A Kolb)は、「人は自分が具体的に経験したことから学ぶ」という考えに基づき「経験学習モデル」を提唱しました。
それは「経験して→省察し→概念化して→実践(試行)する」というサイクルで、経験から力をつけるための理論です。コルブの理論は様々な研究がなされていますが、このサイクルを大学生に当てはめて考えると<「トライ&エラー」→「リフレクション」→「シンキング」→「チャレンジ」>だと、ベネッセ i-キャリアでは考えています。(下図参照)

まずは自分が「行動して経験する」ことにトライしないことには、学びは始まりません。行動して思ったような結果が出なくても、がっかりすることはありません。エラーは失敗ではなく、学びの宝庫だからです。
トライ&エラーから、先ほど確認した「リフレクション」を行います。そしてそれを基に次の機会にどう生かすか「シンキング」、考えます。そして、次に生かすと決めたことを試す場面をできるだけ早く自分で設定し、「チャレンジ」するのです。それが大学生の成長を高める経験学習モデルと言えるでしょう。大学生が主体的に学ばなければ成長しないと言われるのは、この考え方によるものです。
先ほどのAさんとBさんの例でシンキングすると、以下のようになります。

【Aさん】

【Bさん】

「グループ活動が活性化しなかった」という事実に対して、リフレクションとシンキングができていれば、「次のグループ活動が嫌だな」という気持ちは変わります。変わるだけでなく、シンキングしたことを次に実践する場を考え、チャレンジしようと行動できるでしょう。

次にやってみて、うまくいくかはわかりません。
でも、たとえ思った通りにならなかったとしても、そこからまた考え、次に生かす学びが得られたら、それは「失敗の連続」とはなりません。「成長するために必要な通過点」となるのです。

リフレクションする時は、大きなことだけでなく、毎日の小さなことにも着目する

「まずやってみよう」「行動しよう」と言われても、「自分はまだ何も始めていないのでリフレクションする場面も内容もない」と思う人もいるかもしれません。でも実は、毎回の授業や大学生活の中にも、リフレクションすると成長する場面はたくさんあります。
「誰かに言われたことだけをやっている」のではなく、少しでも「自分で工夫した、考えた」のであれば、主体的な行動を起こしていると言えます。それは大いにリフレクションする意義がある行動と言えるでしょう。先ほどのグループワークが活性化しなかった場面でも、リフレクションをして、シンキングできたからこそ、次のグループワークでチャレンジできるのです。

大学生が授業内の取り組みをリフレクションする時、社会人等に比べて恵まれている面があります。それは仲間も一緒に同じテーマを学んでいるということです。
同じような立場にある仲間との学び合いの中では、自分を尊大に評価することも卑下することもなく、公平にとらえることを学べます。そうして自身や仲間のよい点や課題を言語化することは最高の学びとなります。
また、仲間のよい点で、自分にも取り入れられそうなことがあればすぐに真似ることができます。「すごい」と思う学生の行動や視点の背景にあるものを知り、自分にも取り入れられそうなものはないか考えることもできます。

社会人になると、全く同じ役割、同じ年次、同じ仕事、という人はなかなかいません。尊敬する人や仕事を教えてくれる人から学ぶことが多くなるので、同じような立場の仲間からフラットに多様な視点で学べるというのは、大学時代の特権であり、卒業後の財産になるでしょう。

リフレクションの方法

リフレクションは、中長期の節目にある程度の期間分をまとめて総合的に行うものと、日々の行動を小さく振り返り習慣化するものとに分かれます。
前者の場合、大学の前期や後期の修了時や、ゼミや課外活動の取り組みの後がよいでしょう。後者の場合、できれば毎日、難しければまずは1週間に1回は振り返る習慣をつけていくとよいでしょう。
特に「この授業は頑張ろう」という科目を2、3決めて、その科目がある日はその日のうちにリフレクションを行う、と決めておくと、小さな自分の気づきを見逃さず、一歩一歩成長への手ごたえを感じられると思います。

リフレクションだからと難しいことをしなくてもよいのです。
電車で移動中に気づいたことをスマホに記録するのでも構いません。シャワーを浴びている時に思いついたことをあとで書き留めるやり方が自分には合っている、という人もいましたし、就寝前に好きな音楽を聴きながらでもよいでしょう。夜よりも朝のほうが嫌な気持ちに振り回されずに考えられる、という人もいたので、通学の時間を利用したり、朝のお茶を飲みながら10分ほど振り返る時間をとったりしてもよいでしょう。振り返りの専用のノートやお気に入りの手帳を活用するのも一案です。

その時気を付けたいことが2つあります。
1つは、人はすぐに忘れてしまうため、できるだけその日か翌日早めに振り返りを記録すること。
もう1つは、シンキングした内容を、次に試すチャレンジの場をどこに設定するのか、すぐにカレンダーを見て場面を決め、具体的な教訓を忘れないようにその日のスケジュールにメモしておくことです。

それが残っていれば、実際に当日思い出して行動することもできますし、また、その結果がどうだったかも振り返りやすくなるでしょう。

経験学習の学び方が身につくとキャリアオーナーシップの発揮につながる

経験学習の学び方が習慣になれば、ラーニング・トランジションの大きな手ごたえを感じられます。
小さなことでも自分のトライ&エラーを自分でリフレクションし、さらなる目標を設定した上でチャレンジし、その結果からまたトライ&エラーすることができるようになれば、自分の成長を明確に言語化でき、自信にもつながるからです。
社会に出たら自分で学び続ける必要がありますが、その時にリフレクション、経験学習の習慣がついていると、他者の評価がなくても自分で自分を動機づけすることができるでしょう。
それは必要以上に他者に振り回されることなく、自律的にキャリアを築くための力(キャリアオーナーシップ)につながっていくのです。

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