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問題発見・課題設定のプロセス【vol.2 ケースワーク編】―ラーニング・トランジション―

  • 大学1,2年生
  • 2022.04.04
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前のコラムでは、問題発見・課題設定のプロセスについてお伝えしました。ここでは、実際に身近な例を用いてイメージしていきましょう。事例として、ポイ捨て(置き捨てを含む)に関する問題解決の取り組みを紹介します。

ある大学での一場面です。学生会に所属するAさんとBさんが話しています。

Aさん:「最近キャンパスで、ポイ捨てされているゴミが多いの気にならない?」
Bさん:「わかる。なんか、ちょっと嫌だよね。」
Aさん:「みんなにも意見を聞いてみて、ポイ捨てを減らす活動ができないか、相談してみようか。」

ここで、問題を解決するためのステップを実践せずに、すぐ解決策から考えてしまった場合、「ボランティアでゴミ拾いをしよう」「学内の掲示板にポスターを貼ろう」となりがちです。
それで一時的に状態は改善するかもしれませんが、ポイ捨てが多いという状態を改善することまでは期待できそうにありません。

では、問題を解決する5つのステップを実践したケースは、どのような取り組みになるでしょうか。

問題を解決する5つのステップを実践した事例

先ほどの問題を解決するステップの図を完成させていきます。

STEP1―問題発見
STEP2―課題設定
STEP3―解決のための計画立案
STEP4―実行
STEP5―検証

【STEP1問題発見】

AさんとBさんが、「ポイ捨てが多い」という気づきを基に、実際の状況が目指す状態とどんなギャップがあるのかを確認しています。

Aさん:「朝来た時はそんなに気にならないけど、お昼以降は落ちているゴミが多い気がする。」
Bさん:「やっぱり、一部の人がポイ捨てしてるっぽいね。」
Aさん:「夕方にクリーンスタッフさんが清掃してくださるとはいえ、残念だな。」
Bさん:「きれいに使っている大半の学生にとっては不快だよね。」

このようにして、起きている状態から「なぜ」と考え、発見した問題を整理した図は以下のようになります。

【STEP2課題設定】

さらに情報収集して原因を分析して課題を精査し、目標を定めます。
実際に、AさんとBさんが、現場を見て確認しているところです。

Aさん:「カフェテリアが一番ひどいと思ったけど、そんなことなさそうだね。」
Bさん:「すぐ近くにゴミ箱があるからかも。」
Aさん:「以前、学生課の人にゴミ箱はこれ以上簡単に増やせないって聞いた。消防法だったかな。」
Bさん:「そうなんだ。わぁ、フリースペースは飲み終わったペットボトルやお菓子のゴミがそのままだ。」
Aさん:「授業が終わった教室も見てみようよ。」

Bさん:「フリースペースと同じで飲み物やお菓子のゴミだ。誰のかわからない授業のプリントもあるよ。」
Aさん:「ポイ捨てを見た人や、実際にしている人がいたら、聞けそうならヒアリングしてみよう…。」

AさんとBさんは集めた情報を基に、学生会の部屋に戻って課題を考えます。

Aさん:「教室やフリースペースのゴミが大半だったね。特に教室はプリント、フリースペースは飲食物のゴミが目立っていたな。」
Bさん:「そこのゴミを減らすだけでもキャンパス内のポイ捨てが減った印象をうけそうだよね。」
Aさん:「ゴミ箱は、私たちが勝手に置けないから、学生課の人に相談をしてみよう。」

このように、原因からさらに「なぜそうなっているのか」深掘りし、課題を出していきます。その課題の中から、今回自分たちが取り組む最も優先順位の高いものを決め、解決すべき目標として課題設定します。

【STEP3解決のための計画立案】

目標に対してどのような施策が効果的かを考え計画を立てていきます。
既存のアイデアだけでなく、幅広く様々な視点で考えることが重要ですが、メンバー構成、取り組み期間、予算等の前提条件があることも忘れてはいけません。

Aさん:「ポイ捨てって『前の人がやっていたから自分もいいや』とか思っていそうだよね。」
Bさん:「うん、きれいな場所ではポイ捨てしにくいと思う。」
Aさん:「じゃあ、はじめにポイ捨てする人を出さないことが重要かもしれないね。ポイ捨て禁止のポスターをもっと増やすとか?」
Bさん:「壁にポスターを貼ってもあまり見てもらえないし…。絶対見るところって机かな。」
Aさん:「机はいいんじゃないかな。自然と目に入るもんね。ステッカー作ろうか。」
Bさん:「教室の机に全部はステッカーを貼れないからどうしよう。授業終わりに先生に呼び掛けてもらえないかな。」
Aさん:「そうだね、誰に相談したらいいかな…。」

・・・Aさん、Bさんの話し合いはまだ続きますが、結果を図に表すと以下のようになります。

【STEP4実行】

実際に計画を実行します。想定していた効果が得られないとわかった場合、すぐに検証し、次なる施策を考えることも必要です。

AさんとBさんが計画を実行したところ、以下のような結果になりました。

・ステッカーを貼ったことによって、ポイ捨てされるゴミは3割ほど減ったが、まだまだ残っていた。
そこで自分たちの取り組み内容とモニタリング中の経過写真を教室やフリースペースの目立つ場所に貼ったところ、ポイ捨てされるゴミは取り組む前に比べて8割ほど減らすことができた。

・先生たちは、授業後に余っている資料やゴミをそのままにしないよう呼び掛けてくれた。大半の教室でゴミは減少したが、大きな教室のゴミは半減程度だった。先生は大人数の授業では、呼び掛けても効果があまりないと言っていた。
学生課の人からは、先生が呼び掛けても聞かない学生もいるので、学生目線で効果があると思うアイデアをもっと考えてほしいと言われ、次回以降の検討とした。

【STEP5検証】

取り組み期間・施策が終了し、振り返りをして次に生かせるポイントを考えます。

Aさん:「成果はポイ捨てされるゴミの量が8割ほど削減できて、目標は達成できたね。でも、大人数の授業では、先生の呼び掛けはあまり効き目がなかったし、ステッカーの効果も想像以上になかったなぁ。」
Bさん:「『自分がやめなきゃ』と思ってもらうための工夫がもっと必要だったね。ゴミが散乱している写真や実際にどれだけポイ捨てされるゴミが減少したかをグラフで掲示したことは効果があったもんね。」
Aさん:「そうだね。学生課の人にも『学生が先生に言われてやる』のではなく、『自分たちで自発的に取り組む』という発想で考えてほしいと言われたのは、なんとなく今なら意味がわかるな。」
Bさん:「ポイ捨てする人に、もう少しちゃんとヒアリングしたらよかったな。でも直接聞きにくいから、無記名のアンケートとかにしたらよかったかもしれないね。」

Aさん・Bさん:「今回私たちが学んだ次に生かせるポイントは2つあるね。」

1.解決策を考える時は「やること」が目的ではなく、成果を出すために本当に効果がありそうかという視点で考える。
2.どうしたら他者の行動が変わるか、当事者意識を持ってもらえるか考える。今回なら、現状を確認する段階で、ポイ捨てする人の心理を考え想像する。

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ここまで、問題発見・課題設定から始まる問題解決の例を確認しました。
Aさん、Bさんや学生会の仲間がこの取り組みで得た成果は、「ポイ捨てされるゴミを削減した」ということだけではありません。他の活動でも生かせる気づきや、一連の活動で考えたこと、身につけた力、学内のネットワークなど全てが経験しなければ得られなかったことであり、それらが自分の財産となったことがイメージできたでしょうか。

問題を解決するためのプロセスは、実はこれまでも経験してきたかもしれない

問題を解決するためのプロセスは、高校までの探究科目や部活動等、様々な場面で実践してきた人も多いと思います。これまで積み重ねてきた経験を基に、今後はさらに各ステップを意識して実践することで、問題を解決する力を格段に向上させることができ、より難易度の高い問題解決に取り組むことが可能になります。

【高校までの問題発見・課題設定の例】
ここでは、新入部員を増やしたいというサッカー部の事例を紹介します。

問題解決のプロセスを実践できる場をつくろう

大学では問題解決のプロセスを実践できる場面がたくさんあります。それは、ゼミ、実習科目、サークル、イベント、インターンシップなど多岐にわたります。そこで取り組んだテーマや出会った人によって、あなた自身がもっと調べたい、取り組みたい、やってみたいという分野が増えていきます。
活動の中で問題解決のプロセスを実践していけば、将来の仕事をイメージすることもできます。情報収集、調査、分析、交渉、進捗及び予算実績の管理、実際に様々な製作を行うことなどは、どんな仕事でも基本となります。また、実行過程で出会った社会人と話す機会があれば、どのようにキャリアを重ねてきたのか聞くことができます。
そこから「自分で仕事をつくってきた」プロセスに学べることがあるでしょう。

そうして行動すればするほど、「自分が将来やりたいと思えること」「逆にやりたくないと思うこと」が、少しずつわかってくるでしょう。それは「つきたい仕事」をインターネットで検索して考えるよりも、はるかに意義のあることと言えるのです。

ここまで、問題発見、課題設定を含む問題解決のプロセスと、その経験をどのように積めるかをお伝えしました。なお、問題解決に取り組むために必要な力や要素についても、ぜひ知っておいてほしいと思います。主に3つ挙げられます。

・思考力(批判的思考力・協働的思考力・創造的思考力)
・問題を自分事として主体的に、かつ仲間と協力して意欲的に取り組む姿勢、態度
・専門分野の深い学びと、共通教育科目も含めた幅広い知識と教養

これらは大学の学びで身につけられます。他のコラムでも取り上げていきますので、ぜひ参照してください。

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