前期試験では、教室でのテストの代わりに「レポート」の提出を求められることもあるだろう。でも、レポートってどうやって書けばいいの? 高校までに書いていた感想文とは違うの?今回は、中央大学文学部教授の都筑学先生に、「評価されるレポートの書き方」を聞いてみた!
(※一部内容を更新しました。2020/6/16)
プロフィール
中央大学文学部教授(人文社会学科心理学専攻)。専門は、発達心理学、青少年の時間的展望の発達。著書に『大学1年生のための 伝わるレポートの書き方』ほか。
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目次
他人と自分の意見の違いを書くのが、レポート
補足:レポートには3つの種類がある
大学のレポートは、大きく「論考型」「自由記述型」「試験・実験型」の3種類に分けることができます。ここでは、それぞれの特徴についてみていきましょう。
論考型
「論考型」とは、ある問題について、論理的根拠に基づいて自分の主張を展開するタイプのレポートです。レポートのスタイルとしては最も一般的なのがこのタイプです。
資料や具体例を引用しながら、自分の主張に裏付けを与えていくことになります。
自由記述型
「自由記述型」は、あるテーマについて自分の考えを論じる、最も自由度の高いタイプのレポートです。
絶対的な解答は存在せず、テーマによっては感想などの主観的な意見を求められることもあります。論拠に乏しくならないように、なるべく資料を参照して客観的に書くことが大切です。
試験・実験型
「試験・実験型」は、講義の内容や実験の結果をまとめるタイプのレポートです。その性質上、文章に占める割合は自分の意見よりも事実のほうが多くなります。
講義や実験の要点はどこにあるのかを正確に抽出することが、うまくまとめるためのポイントです。
補足:レポートの構成は「序論」「本論」「結論」が一般的
大学のレポートは、「序論」「本論」「結論」という三部構成で書くのが一般的な方法です。ここでは、それぞれの部分で何を書けばよいのかについて紹介していきます。
「序論」
「序論」はレポートの導入部で、レポートのテーマやその前提となる知識、考察する目的などについて述べる部分です。
なぜそのテーマでレポートを書くのか、考察を通して何が得られるのかといったことをわかりやすく簡潔に述べましょう。序論に割く分量は、全体の10~20%程度が望ましいとされています。
「本論」
「本論」はレポートの中心となる部分で、序論で提起した問題について客観的事実を並べながら論述していきます。
本論によってレポートの成否が決まるため、説得力のある主張を展開することが重要です。本論には全体の60~80%程度の分量を割くのが一般的です。
「結論」
「結論」はレポートをまとめるための部分です。本論で展開した主張を端的にまとめ、考察がどんなことに役立つのか、今後の展望についても記しておくと良いでしょう。分量の目安は全体の10~20%程度です。
3ステップで完成させよう
実際にレポートを書いてみよう
第1ステップ:調べる
次に、インターネットや雑誌、新聞などで、実際にどのような「発達的な問題」があるのかを調べます。文献情報を検索するには、CiNii、Google Scholar、Webcat Plusが便利です。いずれもキーワードを入れて文献情報を検索できます。
ここでのポイントは、どのようなキーワードを入れるかということ。上記の課題の場合、「小学生」「発達」と入れるのはだれでも思いつきます。それだけで満足するのではなく、「発達」の代わりに「学力」「身体」といった言葉を入れてみると、少し違った結果が出てくるでしょう。「小学生」の代わりに「子ども」と入力してみても、やはり違う文献を探すことができるでしょう。
文献の検索にはさまざまなデータベースがあるので、大学の図書館や公共図書館で使ってみましょう。多くの文献にあたれば、その分だけ視野が広がり、レポートの客観性や説得力が増していきます。100の資料を集めたら10だけ使ってレポートを書くくらいがいいですね。「それだったら、10の資料を集めて10の分量を書けばいいじゃないか」と思う人がいるかもしれませんが、それはNGです。それでは、レポートに厚みが出ません。
100集めた人の頭のなかには、レポートに使わなかった90の資料が入っています。それが、無形の資料として、レポートの質を上げるのです。
第2ステップ:考える
今回のテーマの場合は、小学生にどのような発達的な問題があるのかをピックアップします。多くの資料を集めると、収拾がつかなくなることもあるかもしれません。
そうしたときは、自分の関心次第で、いくらでもレポート作成の筋道を立てることはできます。問題をA、B、Cと列挙していって、それらの関係性を整理するというのも一案です。Aを中心にまとめ、BやCについては簡単に触れるという手もあります。
論文の構成で私がよく使うのは、3章3節の構造。3章の関係は、以下の3通りから決めましょう。
- 1章から2章、2章から3章のように、問題提起があって、実態が明らかにされ、今後の課題が述べられるやり方。
- 一つの論点を二つの条件で論じるやり方。例えば、体力について、小学生の男女で比較して述べるようなやり方。
- 二つの前提条件から結論を導き出す方法。例えば、日本と北欧の学力を比較し、結論を出すようなやり方。
レポートの筋道を立てたら、書く段階ですが、その前に、ここで一度教員に相談するのもいいでしょう。「このような内容と構成で書こうと思いますが、どうですか?」と相談することで、的確なアドバイスがもらえるでしょう。参考文献のヒントが得られるかもしれません。
第3ステップ:書く
大学生のレポートでしばしば見られるのが、意味のつながらない文章を無理やり接続詞でつなげること。「そのため」と言っているのに前後の文章が原因と結果の関係になっていなかったり、「しかし」と言っているのに前後の文章が逆の意味になっていなかったり、ということがよくあります。
論理の飛躍を防ぐためにぜひ練習してほしいのが、できるだけ接続詞を使わないこと。流れが自然であれば、接続詞を全く使わなくても伝わる文章を書くことができます。また、シンプルな文章にするために、できるだけ1文を短くすることを心がけましょう。40文字以上の文があったら、もっと短文にできないか考えましょう。
厚みのある文章を書くためにおすすめしたいのが、時間と空間の二つの軸でレポートを書くこと。時間軸とは、歴史のことです。過去の歴史を調べ、どのような小学生がいたのかを調べます。同じ課題を空間軸で切り取ってみましょう。日本から転じて世界に目を向けることで、日本の子どもの発達を相対的にとらえることができます。意識して時間軸と空間軸を伸ばすことで、新しいものが見えてくるでしょう。
補足:整ったレポートを書くコツ
整ったレポートを書くためには、いくつかのコツを押さえておくと役に立ちます。まず、自分の主張を論理的に展開するために「PREP法」を活用すると良いでしょう。「PREP法」とは、「結論(Point)→理由(Reason)→具体例(Example)→結論(Point)」という流れを意識した文章の書き方のことです。
最初に簡単な結論を提示し、最後にもう一度結論に触れることで何が伝えたいのか明確になります。また、具体例を盛り込めば読者が内容をイメージしやすくなり、文章の説得力も向上するのです。
1つの文にはアイデアを1つだけ入れるように意識することも、整ったレポートを書くコツの1つです。1つの文に2つ以上の情報が入っていると煩雑な印象を与えるので、接続詞を用いて2文に分けるなど、読みやすくなるように工夫しましょう。同様に、1つのパラグラフには1つのトピックを盛り込むことを意識するのも重要です。これらのポイントを押さえておけば、句点を打つ場所や改行する場所も見極めやすくなります。
補足:レポート執筆に役立つ基本の文章表現
大学のレポートをわかりやすく書くためにも、基本的な文章表現について確認しておきましょう。まず、同じ文末表現や助詞が3回以上連続すると読者に違和感を与えるので避ける必要があります。「大学の授業の時間の…」といったことにならないように、文章を書いたら読み直す習慣をつけ、表現が連続していれば修正しましょう。文末表現については、「だ・である」調と「です・ます」調を混同しないことも大切です。
また、文章を書き慣れていない人は「とても」「非常に」などの便利な誇張表現に頼りがちです。しかし、誇張表現には具体性がないため、何を根拠にしているのかわかりにくいという欠点があります。多用すると稚拙な印象を与えるので、なるべく使わないようにしましょう。
そして、レポートでは文語表現を用いるのが原則です。「だけど」「だから」などの口語表現は避けてください。漢字やひらがなの表記についても、ある箇所では「伴う」、別の箇所では「ともなう」になっているなど、表記ゆれがないように確かめておきましょう。
3割くらいが引用でもOK
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