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【社会人インタビュー】国境なき医師団/薬剤師 佐藤功大さん

  • インタビュー
  • 2021.12.24

プロフィール

佐藤 功大 さん
・大学卒業後、病院と薬局で臨床経験を積む
・JICAの青年海外協力隊に薬剤師として参加
・ボランティア活動を経て国境なき医師団に入団、現在はマラウイで子宮頸がんのプロジェクトを行う
八田 美咲 さん
・北里大学薬学部に在学中大学4年生(24卒)
・「dodaキャンパスクリエイティブキャリアサークル」プレインターン研究チーム所属。

取材を行った背景

私自身、将来薬剤師になるうえで「自分らしさ」を追求したいという想いがあります。そのような中、国境なき医師団の薬剤師として特別な生き方をしている佐藤さんを知り、取材依頼をしました。

インタビューでは、佐藤さんが薬剤師から海外に目を向けたきっかけや海外の活動で得たこと、学生のうちにやっておくべきことなどをお聞きしていこうと思います!

目次

    病院薬剤師から海外のボランティア活動をするに至った経緯

    薬学部を卒業した後、地元の北海道の調剤薬局で一年半ほど働いたあとに、もう少し臨床に携わりたいと思い、神奈川県の中規模の総合病院で4年弱勤務しました。その間に病棟業務やがん化学療法の薬剤師として調剤をするなど、総合病院で行うことは網羅しました。

    自分にしかできないことをやりたい

    病院で働いていた時も大きい仕事を任され充実していましたが、ある人に言われたことが響いていまして。「他の薬剤師が自分の代わりに来た時も同じようなことができるようなフローを作りなさい」と。確かに自分が看護師や医師といい関係を作れているから業務が回っていると、自分がいない場合はできないということになるので言われたことは分かります。ですが、仕事をするなら他の人がしたことない、自分が特別できるようなことをやりたいなと強く思うようになり、昔から憧れていた海外で働くということに意識を向けました。

    とはいうものの薬剤師が海外で働くことはなかなかイメージがつかなくて。どうしたものかと考えていたら、JICAの青年海外協力隊で薬剤師としてボランティアをする応募を見つけました。

    英語が話せない状態からのスタート

    私自身今まで海外留学の経験もなく、ボランティアに参加するまで英語が話せませんでした。ですが、JICAは海外に行く前に日本で70日間の語学訓練があって、英語や他の現地で使うフランス語などを学ぶことができるので、それが応募する後押しにもなりました。

    ――英語を話せるようになるために、どのような勉強していましたか。

    現地で出会った友達に教えてもらえることが大きかったなと思います。青年海外協力隊で活動していた時に仲良くなった友達がとても親切で、分からなかったら言い方を変えて説明してくれたり、自分が拙い英語を話すまで待ってくれたりしました。今でもその人とは電話で話したりしています。人によってはオンライントレーニングですとか、現地の人を雇って勉強しています。

    国境なき医師団での薬剤師としての活動

    青年海外協力隊として活動をする中で色々な方と出会う機会がありまして。日本の方とも会話するうちに2年間海外で活動したものを将来に使うにはどうしたらいいのかと考えるようになりました。その時に、ちょうど知り合いの人が国境なき医師団の薬剤師として活動しているという話を聞いて、自分も働きたいなという思いが強くなり、活動が終わった後に国境なき医師団の面接を受けました。

    初めてのミッション、コロナ禍で苦労しながらも

    2020年の7月からリビアという国で初めてのミッションに派遣されました。リビアでは多くの移民がお金を稼ぐためにヨーロッパの方に渡りますが、その途中でコーストガード(沿岸警備隊)に捉えられリビア内の拘留所に入れられてしまうんですね。国境なき医師団はその当時拘留所に行ける唯一のNGO団体で、私は拘留所でフォローするチームに対して薬を供給する活動をしていました。

    ――薬局も開設したと記事で拝見しましたが、その時のエピソードを教えていただけますか。

    当時リビアで一つのプロジェクトを管轄する担当だったのですが、ほかの薬剤師がいなかったので、薬局もセットアップするということを急遽言われまして。今まで薬局を開設したこともなかったので何からやればいいか分からない状態でした。ですので、パリにある国境なき医師団本部の薬剤師に分からないことがあったら教えてもらっていました。特にリモートは本当に難しいと感じました。言語はしかり、相手もどういう状態なのか見ていないので伝えるのも大変ですし。だから、少しずつ自分ができることからやって形になっていったのかなって気がしますね。

    ――地元の人の印象はどうでしたか。

    イスラム教では現世で行ったことが死んだ後に反映されるという教えがあって、びっくりするくらい優しい人たちだなという印象でしたね。特にイスラム教は怖いイメージがあると思うのですが、人から聞くだけじゃなくて、実際に現地の人と会って話すことで先入観がなくなると思います。

    その後日本に帰り、またすぐ2021年の6月くらいにエチオピアのミッションにいく話だったのですが、当時自分が行く予定の場所で反政府組織と衝突が起きていて。ちょうど出発する二日前くらい前に、国境なき医師団のスタッフが反政府の人に殺害される事件が起こって。エチオピア自体で活動することができませんでした。

    性感染による子宮頸がん患者を救うために

    現在はマラウイというアフリカの国で子宮頸がんのプロジェクトに参加しています。なぜ子宮頸がんのプロジェクトが必要なのかというと、アフリカはお金を稼ぐために小さい頃から性活動で働く方が多くいて、子宮頸がんの原因となるHIVの感染リスクが高いからです。それに対する治療や予防のために化学療法の支援をしています。自分もがん化学療法の経験があるので、地元の薬剤師や看護師に対して調剤の指導やフローとかの見直しなどを行っています。

    佐藤さんの今後のキャリアデザイン

    今はまだ新人なので、様々なミッションを通して知識や経験を積みたいと思っています。将来的にはそのまま国境なき医師団として働き続けるのもいいなとも思いますし、WHOなど他の組織での活動にも視野に入れています。

    期限切れの薬をなくしたい

    というのも、活動をする中で、期限切れの薬があふれんばかりに捨てられているのを目にして、それを解決したいという想いがあります。難しい問題ではありますが、今私がいるのは寄付された薬を現場に届ける場所にいるので、もっと上の、指示を出している側の組織はどういうフローで動いているのかを知ることで、もしかしたら解決できるのではないかと考えています。

    学生に向けてのメッセージ

    ――佐藤さんは学生時代にどのような活動をしていましたか。

    特別学生の時にボランティアをしていたこともなく、海外経験も高校生の修学旅行で韓国に行ったきりでした。ですが、高校と大学でサッカーをしていまして、青年海外協力隊でボランティアをしている時も言葉が通じなくてもボール蹴ればすぐ仲良くなりました。スポーツや音楽を楽しむことはとてもよかったなと思います。

    挑戦し、失敗を繰り返す

    慣れってどんどん習慣化していくので、新しいことに挑戦していくと人生もっと楽しくなるんじゃないかなと思います。たとえばアルバイトですとか、いろいろな人と会うじゃないですか。その中で人との関わりっていうのが自分の将来の人格を形成するには重要だと思います。特に失敗したときや困難にぶつかったときに、どうしたらいいのかというのを考えることで成長につながると思います。あとは政治のこととか国際的な情勢のこととか、少しずつ自分の周りの知れる範囲で知れたらいいと思います。

    ――最後に、「人を助ける仕事」につきたいと考える学生にメッセージをお願いします。

    私が思うに、仕事っていうのは多かれ少なかれ「人を助ける」ことにつながると思うので、どの仕事でも最終的にどう人に結びつくのかというのを考えたときに、その人の笑顔を考えながら仕事ができればいいなと思います。

    取材を通して

    今回はマラウイの現地からの取材に応じていただきましたが、新しいプロジェクトが始まってすぐということもあり、非常にお忙しい中協力してくださいました。実際に現地で活動する人からお話を聞くことで、今アフリカで起こっている医療問題やそこでの文化を知ることができました。また、佐藤さんは留学やボランティア経験もなく、一度就職してから海外支援に参加したと聞いて、何かに挑戦するということに遅いということはないということを学びました。佐藤さんのように、「自分らしさ」を追求できるような社会人になりたいと思います。

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