「初任給」とは、文字通り「初めて任せられた仕事に対する給与」のことです。企業によっては、会社の募集要項に掲載されている以外の「諸手当」を含めた額となります。
初任給がいつ振り込まれるかは、会社内の就業規則によって変わります。チェックするときは、「締め日」と「支払い日」に注目して確認してみましょう。
たとえば「当月末締め、翌月25日払い」の会社では、4月1日入社の場合、5月25日に初任給が振り込まれます。その他にも「当月○日締め、当月末払い」や「当月末締め、翌月○日払い」など企業によって対応はさまざまです。
「志望業界(企業)は、他と比較して高いのか?低いのか?」 「どれくらいの額が平均的なのか?」 「税金っていくらくらい引かれるの?」など初任給に疑問や興味を持つ人は少なくないはずです。初任給は、地域はもちろん業界や職種によって金額が大きく異なります。この記事では、誰もが知りたい初任給について解説します。初任給の平均額から業種や企業規模による違い、そして手取りの計算方法を今のうちから知っておきましょう!
目次
大卒と院卒の初任給平均額の推移は?年収はいくらになる?
厚生労働省の最新の初任給調査「令和3年賃金構造基本統計調査結果」を見ると、大卒(男女計)の初任給は22万5,400円、院卒は25万3,500円でした。
初任給に関する賃金構造基本統計調査は、令和2年(2020年)以降、初任給に通勤手当を含めるようになったなど調査定義が変更されたため、以前の調査とは単純に比較はできませんが、過去5年間で初任給は増加傾向にあります。
厚生労働省の「令和2年就労条件総合調査」によると、1カ月あたりの通勤手当の平均は1万1,700円であり、その結果を踏まえても、過去5年間で大卒・院卒いずれの初任給も1万円近く上がっていることが分かります。
業種・企業規模・地域によって初任給が異なる!?
初任給の平均額は、高卒・大卒・院卒といった学歴だけではなく、業種や企業規模、地域などによっても異なります。
ここからは、業種・企業規模・地域別の初任給平均額について、厚生労働省のデータを参照しながら紹介していきます。
業種別の初任給平均額
厚生労働省が令和元年に行った大学卒の産業別初任給についての調査によれば、初任給平均額が最も高かったのは「学術研究、専門・技術サービス業」で約22万7,200円でした。
また、「情報通信業」が約21万8,100円で2位、「建設業」が約21万6,700円で3位となっています。将来性や人材の需要がある業界ほど、初任給は高くなる傾向にあります。
学術研究、専門・技術サービス業で働くためには、専門的な知識が必要とされるので敷居が高い分、初任給も自然と高くなるのでしょう。
一方、産業別で最も初任給平均額が低かったのは「宿泊業、飲食サービス業」で約20万800円でした。また、「運輸業、郵便業」の初任給も約20万1,500円と同程度の水準になっています。
企業規模別の初任給平均額
続いて、企業規模別の初任給平均額について見ていきましょう。厚生労働省が公表しているデータをみると、就職する人の学歴に関わらず、企業規模が大きくなるにつれて初任給平均額も高くなっていくという傾向が読み取れます。
令和元年の調査によれば、従業員1,000人以上の大企業における大学卒の初任給平均は約21万3,100円となっています。一方、従業員100~999人の中企業の場合は約20万8,600円で、大企業に比べると約4,000円少ないことがわかりました。
さらに、10~99人の小企業は約20万3,900円で、中企業より約5,000円、大企業より約9,000円下回るという結果となっています。このデータから、企業規模によって初任給に格差があるということがうかがえます。
地域別の初任給平均額
地域別の初任給平均額を見ると、都会は高く、地方は低いという傾向が認められます。厚生労働省の令和元年の調査によると、東京都の初任給平均額が約22万500円で1位、千葉県が約21万1,700円で2位となっています。
一方、宮崎県は18万8,000円、沖縄県は17万5,000円など、地方では低い水準にとどまっており、1位の東京都と47位の沖縄県で約4万5,000円の差があります。
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採用告知に掲載されている給与額の内訳は? 諸手当とは?
企業の採用通知書には、給与が明記されています。この額面の内訳はどうなっているのでしょうか?一般的に給与額は、「基本給と諸手当の合計」と認識してほぼ間違いありません。
この「基本給」とは、社員それぞれに定められた給与の根幹であり、ほぼ固定的に同じ額が支給されます。ここに社員それぞれに与えられる手当が加わるのです。基本的に手当は「時間によるもの」「立場によるもの」といった種類に分けられています。では、実際にどのような手当があるのかみてみましょう。
【時間外手当】
いわゆる「残業手当」です。日本において労働時間は「1日につき8時間以上労働させてはならない(休憩時間は除く)。1週間につき40時間以上労働させてはならない」(労働基準法第32条)と定められており、法定労働時間を超えて労働した場合は時間外手当が発生します。
【深夜・休日勤務手当】
午後10時から午前5時の間に労働時間が発生した場合、支払われる手当のことです。支払いがされているかどうか、「時間外手当」とともにトラブルの原因になりやすく、また支払われていない企業は「ブラック企業」とされることも少なくありません。休日も同様で法定休日に勤務した場合は、割増賃金が支払われます。
【役職手当】
部長や課長など、管理者を対象に与えられる手当です。部下を指導、マネージメントを行う立場にある社員は当然ながら責任も増えるため、自然と手当も高くなります。労基法では、管理監督者には時間外手当(残業)が支払わなくてもよいとされているケースもあります。
【家族手当】
社員の生活を支えることを目的に、配偶者や子どもなど扶養家族がいる社員に与えられる手当です。
【住宅手当】
社員の家賃の一部を負担する、住宅手当。一般的には「本人が世帯主である」「本人名義で契約している借家に住んでいる」といった条件を満たした場合、一定の額を支給する形が多いようです。
この他にも「健康手当」「アニバーサリー手当」など、ユニークな福利厚生の一環として独自の手当を設ける企業もみられます。
初任給は、基本給ではなく手当を含んだうえでの額を示している企業も少なくありません。ただ、この場合「残業手当」(いわゆるみなし残業)が含まれていることもあり、残業をしなければ提示されている額と変わってくる可能性もあります。
給料から引かれるものは?額面との違いや手取り額の計算方法を解説!
「額面」は、会社から支給される給与の合計であり、基本給と通勤手当(交通費)、時間外手当(残業手当)などの各種手当などで構成されます。対して「手取り」は、実際にもらえる給与額で、額面のおよそ75~85%に相当します。給料明細では、差引合計額とも記されているので混同しないよう注意しましょう。
では、額面と比べて手取りは、どれほどなのでしょうか。
給与から差し引かれる項目
最終的に私たちが受け取れる給与は、「額面」の金額から税金や保険料などが差し引かれたものです。
入社後、初任給をもらった翌月に、振込額をみて「えっ!? 低くなっている」と驚くかもしれません。その理由は、初月に差し引かれるのが「雇用保険料」と「所得税」のみであるためです。
多くの企業では、翌月からさらに社会保険料(厚生年金、健康保険料)も差し引かれるようになります。そのため、額面は変わらないものの手取り額は初任給より低くなってしまうのです。
そして、入社2年目の6月からは、住民税も差し引かれます。住民税は年間の所得が確定した後、確定額を翌年に毎月支払う形となっているため、1年目は差し引かれません。
では、給与から控除されるものの一例とその内容を実際にみてみましょう。
所得税
給与に対してかけられる税金のこと。給与により控除される額が異なる。所得が増えるごとに税率も増える累進課税となっており、195〜330万円であれば、税率は10%(控除額は97,500円)です。
雇用保険
万が一失業した際に受け取れる失業保険を受給するための保険料のこと。事業の種類によって保険料率が異なり、一般の事業ならば労働者負担は3/1000です(事業者負担は6/1000)。
健康保険
病気や怪我の治療費の自己負担額を減らすための保険料。会社と労働者でそれぞれ半額ずつ支払う。
住民税
住んでいる都道府県や市区町村に収める税金のこと。
介護保険料
介護が必要になった際、1割〜2割ほどの負担でサービスを受けるための保険。40歳以上になると加入義務が発生する。
手取り額の計算方法
仮に初任給の額面が20万6,000円だった際の手取り額を計算してみましょう(※未婚、各種任意保険や、ローン、副収入等なし)。先述の通り、初任給で控除されるのは「所得税」と「雇用保険料」のみです。
初任給の額面と手取り
①雇用保険の計算方法
雇用保険は給与の0.3%。(農林水産業、清酒製造、建設などの場合給与の0.4%)で算出します。
20万6,000円×0.003=618円
②所得税の計算方法
1)給与所得控除額を計算
20万6,000円×12×0.3+8万=82万1,600円
※国税庁『No.1410 給与所得控除』より
2)給与所得金額を計算
年収-給与所得排除額
247万2,000円-82万1,600円=165万400円
3)課税所得金額を計算
所得-所得控除=課税所得金額
165万400円-36万(社会保険料控除)-38万(基礎控除)=91万400円
4)基準所得税額を計算
課税所得金額×税率-控除額=基準所得税額
91万円×5%=4万5千円-0円
5)1カ月単位の基準所得税額を計算
4万5千円÷12=3,791円
6)手取りを計算
額面-雇用保険料-1カ月単位の基準所得税額
20万6,000円—618円ー3,791円=20万1,051円(概算)
控除されるのが所得税と雇用保険料だけのため、初任給は多く感じるかもしれません。しかし5月分からは、厚生年金と社会保険料が差し引かれるようになりますので、手取りはもう少し目減りします。
●厚生年金の税率:標準報酬18.3%(労働者の負担分は9.15%)
●健康保険:約10%(労働者の負担分は約5%)※企業によって異なります
おおよそではありますが、20万6,000円の場合は、5月の手取りは以下になります。
5月の額面と手取り
①厚生年金と社会保険料の差し引き額を算出
20万円(標準報酬月額)×(9.15%+5%)=2万8,300円
②手取りを計算
額面-厚生年金-社会保険料
20万2,049円−28,300円=17万3,749円
また2年目の6月よりさらに住民税が差し引かれるようになります。入社1年目から2年目にかけて昇給できていないと、2年目なのに1年目より手取りが少なくなってしまう……なんて事態も起こります。
ますます初任給は上がる傾向に?!
少子高齢化により、今後さらに労働人口の減少が予測されています。そんな背景もあり、高いことはもちろん、各々の能力に合わせた額の初任給を支給する企業が増え始めています。
これまでは、新卒一括採用・終身雇用が前提であったため、新卒社員は2〜3年かけて育成するという企業が多く存在しました。そのため、給与も年功序列。社歴とともに緩やかに給与は高くなる傾向が一般的でした。しかし、近年は1年目であっても高い成果を残すことができれば、給与に反映する企業も増えてきています。
たとえば、インターネット広告事業を展開する株式会社サイバーエージェントでは、エンジニア職を対象に一律だった新卒社員の初任給制度を廃止しています。
初任給の額を左右するのは、能力に応じたランクです。独自の基準で行った評価をもとに、高度な技術や実績を持つ人材にはより多くの給与を支払うことを発表しました。
また、同じく大手インターネット広告事業を展開するヤフー株式会社も、一律の初任給を廃止した企業のひとつです。実績を持つエンジニアを対象に650万円以上の年棒を提示してはいるものの、求める経験スキルは「自身が開発したアプリのDL数100万以上」、「特定の学問分野におけるトップカンファレンスでの論文発表経験」など、ハードルの高いものも少なくありません。「新卒に求めるレベルとは言えない」という声も聞かれるなか、それほど高い能力を持つエンジニアには相応の対価を支払うべき、という考え方が一般化されつつあることの表れでしょう。
初任給だけで企業を選ばないように注意しよう!
待遇や業務内容などの条件が同じレベルで初任給が異なる2つの企業があった場合、初任給を基準に企業を選ぶ人もいるでしょう。しかし、初任給が高いからといって生涯年収も高いとは限りません。
また、公表されている初任給額には、固定残業代なども含まれているということを考慮する必要があります。公表されているのが基本給であれば残業代などは別途で支払われますが、初任給は残業代や各種手当を含めて算出されます。初任給を高く設定することで人材を集めようとするブラック企業も存在するため、労働環境や待遇などについても調べておきましょう。
給料だけが仕事のやりがいのすべてではありません。応募する企業は、さまざまな観点から比較検討しながら選ぶことが大切です。
一般的な初任給の使い道とは!?
長かった学生生活が終わり、社会人になってから初めて受け取ることになる初任給。もらう前からあれこれと使い道を想像している人も多いのではないでしょうか。
一般的な初任給の使い道としては、「貯蓄」「生活費」「親への贈り物」「自分へのご褒美」などが挙げられます。特に、近年では「貯蓄」や「生活費」などの堅実な使い道を考えている人が多いようです。
自分や親のために初任給を使う場合、プレゼントの金額はなるべく30,000円以内に抑えるのが賢明です。先述のとおり、来月の給料からは社会保険料が引かれるようになるので、手取り額が30,000円ほど少なくなります。自分や親のために使うお金を30,000円以内に抑えておけば、残る金額は来月以降と同じ水準になり、今後の家計がどのような内容になるのか想像しやすいでしょう。
どのような方法で使うにせよ、初任給がもらえるのは人生で1度だけです。後悔することのないように、よく考えたうえで使い道を決めると良いでしょう。
大学時代の行動が就活の成否を分ける!
就活をするうえで「給与はあまり気にしない」という方も一定数いるでしょう。しかし、それは初任給には大きな差はない、という認識があるからではないでしょうか。
現在は、さまざまな企業が一律の初任給を廃止したり、平均額を大きく上回る額の初任給を支給していたりと、実力を正当に評価する企業が当たり前になりつつあります。
満足できる企業に入社するためにも、早め早めに就職活動をスタートすることは決して無駄なことではありません。インターンシップを活用し、実務を経験して「ここだ!」と自信を持って志望できる企業を探してみてはいかがでしょうか。
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