プロフィール
新潟を軸にしながら、首都圏でも働く、職場づくりやコミュニケーションの専門家。ビジネスコーチ、カウンセラー。
「仕事を楽しくする」が活動のテーマ。職場で起こっている人間関係やコミュニケーションのトラブル、モチベーションやメンタル的な問題を解決し、ビジネスパーソンが楽しく働けるよう、職場改善やコミュニケーションの講演・研修や講座、コーチング、カウンセリングに従事している。
著書に、『「職場がツライ」を変える会話のチカラ』(こう書房)、『うまく伝わらない人のためのコミュニケーション改善マニュアル』(秀和システム)、『感情スイッチを切りかえれば、すべての仕事がうまくいく。』(すばる舎リンケージ)などがある。WEBメディアを中心に執筆経験も多数。特定非営利活動法人しごとのみらい理事長、米国NLP協会認定NLPトレーナー、ITコーディネーター。
就職を前に
「将来のことを考えなければならないけれど、やりたいことがわからない。」
「社会人になることに希望が持てない……。」
「もし、好きなことを仕事にできたらどんなにいいだろう。」
と思う方もいるのではないでしょうか。
今回は、「楽しくはたらく」をテーマに新潟県でNPO法人を運営し、コミュニケーショントレーナー、カウンセラーとして活躍中の竹内義晴さんに、「好き」を仕事選びに生かすための方法を聞いてみました!
「楽しい」を突き詰めることで、自分の「軸」や「強み」を見つける
幼少期であれば、野球が好きな人は「プロ野球選手になりたい」と願いますし、医者へのあこがれがあれば医者に、絵を描くのが好きであれば画家になりたいと自由に発想するでしょう。
しかし、年齢を重ねると、そんな夢を実現するのが簡単ではないことに気づきます。スポーツでプロになったり、専門職で食べていくのはひと握りの人だけであるという現実が見えてきます。
もし、好きなことや得意なことを強みにつなげ、将来の仕事に生かすことができれば、仕事へのモチベーションも高まりますし、高い満足度で仕事をすることができてハッピーです。私が出会った社会人のなかで仕事を楽しそうにしている人たちは、全員が「好きな要素」を仕事に生かしていました。好きな要素とは、「楽しい」「ワクワクする」と感じる要素のこと。
今回は、「楽しい」を突き詰めることで、自分の「軸」や「強み」を見つけ、将来の仕事選びに生かす方法をお伝えします。
ステップ1 やっていて楽しいことを書き出す
まず紙とペンを用意してください。紙の上のほうに、自分の好きなこと、やっていて楽しいことを書きます。「本を読むこと」「テレビを観ること」「人と話すこと」など、ぱっと頭に思いつくもので構いません。 例えば、私の場合は、自動車が好きなので、「自動車」と記入します。
ステップ2 「好きな要素」を細かく分解していく
次に、なぜそれを「好きと感じるのか」を、要素分解してみましょう。「具体的に何をしているときが楽しい?」「どういうところが好き?」など、5W1Hの視点で、細かく分解してみます。
私の場合、自動車のどこに惹かれるかというと、「運転すること」「メンテナンスをすること」「改造すること」というキーワードが浮かんだので、そのように書きます。それぞれのキーワードについて、さらに細かく「どういうところが好きなのか?」を考えましょう。もしここで、それ以上広がらないなと思ったら、途中でやめてしまっても構いません。
下記のような図が出来上がりました。
もし野球が好きであれば、「観戦する」「プレイする」から、それぞれ「好きな選手を応援する」「ピッチングをする」「チームプレイ」などのキーワードが生まれ、「ピッチング」からは「正確なコントロールの研究」、チームプレイからは「力を合わせる」などの言葉が派生するかもしれません。
本が好きな人の場合は「小説を読む」といったキーワードから、「読んで世界が広がる」「作者の考えに触れる」「物語の構造を分析する」「人と感動を共有する」といった要素が出てくるかもしれません。
このステップで大切なのは、頭に浮かんだ言葉を自由に書いてみること。キーワード同士がどうつながっているかはそれほど重要ではなく、あなたの感覚がどういった言葉に反応し、そこからどんなキーワードを連想したのかが大切なのです。
そして、「好きな要素」はできる限り細かく分解していきましょう。分解を繰り返し、最後に残ったキーワードがあなたにとって大切な価値観となるのです。
ステップ3 もうひとつ好きなことを書き出して分解する
ひとつの「好きなこと」からの「枝分かれ」が完成したら、同じようにもうひとつ、好きなことを書き出して要素を分解していきましょう。
私の場合は「プログラムをつくる」から、下記のような図になりました。
ステップ4 共通点を見つける
「自動車」と「プログラムをつくる」の図を見比べてみると、「組み立てる」「オリジナル」「動かないものが動く」「自分で」など、いくつか共通するキーワードが見えてきました。
私の場合はこれらの「好きな要素」に触れたときに、楽しさや喜びを感じるということです。そして、共通していたこのキーワードこそが「強み」であり、「軸」となる価値観なのです。
「好きな要素」さえ知っていれば、将来の仕事選びにも可能性が広がります。「自動車」や「プログラムをつくる」に直接関連する職業でなくても、「組み立てる」「オリジナル」「動かないものが動く」「自分で」などの要素があれば、やりがいを感じて生き生きと仕事ができるとわかっているからです。
皆さんのなかには「野球が好き」だけど、プロ野球選手になれないから、せっかくの「野球が好き」だという気持ちを無視して、仕事・企業選びをしようと思っている人もいるでしょう。
しかし、このように細かく「好き」を分解することで、「みんなで力を合わせることに喜びを感じる」などの「好きな要素」が見つかれば、イベント関連の職種やプロジェクトの進行管理など、チームで動く場面がある仕事であれば、きっと楽しく働けるはずです。
ちなみに私は、もともとITエンジニアだったのですが、現在はコミュニケーション研修やセミナーの講師、カウンセラーなどを行っています。講師という仕事のなかで楽しさを感じるのは、コンテンツを「組み立てる」ことだったり、自分なりの「オリジナリティ」を表現することだったりします。書籍の執筆なども行っていますが、やはり文章を「自分の言葉で」「組み立てる」ことができると、うれしく感じます。
このように、「好きな要素」に気がついてからの私は、将来にあまり不安を抱かなくなりました。なぜなら、仮に仕事が変わることになっても、「組み立てる」「動かないものを動かす」「自分で考える」「オリジナリティ」などの要素があれば、その仕事を好きになれると思うからです。
仕事をしていれば、大変なことも、思いどおりにならないこともあります。けれど、さまざまな問題も「好きな要素」を生かせば解決できることを、感覚的に知っています。
ぜひ、今から「好きな要素」を見つけてください。就職活動だけでなく、その後のキャリアを考えるうえで、「好きな要素」は強みや軸となり、ずっとあなたを支えてくれるはずです。この記事を「読んだだけ」では終わらせずに、紙とペンを用意して、楽しく「好き」の深掘りをしてみてください。
好きなことを仕事にするメリット
好きなことを仕事にするメリットとしては、仕事のモチベーションが維持しやすいということがまず挙げられます。もともと好きなことなので、何か辛いことがあっても情熱で乗り切れる可能性が高いでしょう。思い入れのない仕事よりも、粘り強く作業に打ち込むことができるはずです。
また、価値観が近い人と職場で知り合える可能性が高いという点も好きなことを仕事にするメリットの1つです。自分と同じように好きなことを目指して就職した人とめぐり合えれば、お互いに切磋琢磨しながら働けるでしょう。
そして、仕事をこなしていく中で、さらに進んだ領域でやりたいことが見つかる可能性もあります。独立を目標にするなど、大きな目標を抱くことで日々の困難も乗り越えやすくなります。
好きなことを仕事にするデメリット
「好きなことを仕事にする」といえば聞こえはいいものの、現実にはメリットばかりではありません。そもそも、好きなことを仕事にするためには運や覚悟が少なからず必要です。周囲の人間の意見を気にせず、好きなことを一途に突き詰める強い意志がなくてはならないでしょう。
また、好きだったはずのことが好きではなくなってしまうリスクも潜んでいます。趣味でやる分には好きだったことも、仕事で毎日のようにこなしていると、ただのルーティンワークになっていきます。その結果、当初の情熱を失って仕事自体が好きではなくなる場合もあるのです。
そして、好きなことが自分よりも得意な人の存在を知り、自信をなくすこともあるでしょう。好きなことを仕事にしたいのであれば、これらのデメリットについても知っておく必要があります。
好きなことを仕事にするためにできること
好きなことを仕事にするためには当然努力が必要ですが、具体的には何をすればよいのでしょうか。
まず、自分が好きなことを仕事にできるほどのレベルに達していないと感じる人は、好きなことについて勉強してスキルアップを図りましょう。客観的に自分の能力を分析し、何が足りていないのかを特定してください。そのうえで、今後やるべきことを書き出していきます。
また、好きなことを仕事にした人の成功例を参考にするのも大事なステップの1つです。自分の知り合いに成功者がいれば、会って話を聞いてみるのも良いでしょう。インターネットを使えば著名人の成功例なども調べられるので、情報を集めて目標達成へのモチベーションアップに活かしてみてください。
次に、具体的な目標を立て、自分の現在地を確認しながらやるべきことをこなしていきます。SNSなどで積極的に情報を発信し、自分の活動を世の中に向けてアピールしましょう。そして、わずかでも好きなことでお金を稼いでみることで、好きなことを仕事にするイメージが具体的になっていきます。
仕事への情熱は注いだ努力の量に比例する?
情熱をもって仕事に取り組むためには、好きなことを仕事にしなければならないと考えている人も多いのではないでしょうか。しかし、その考え方が必ずしも正しいとは限りません。
ある研究では、現在の仕事にかける情熱の大きさは、これまでにその仕事へ注いできた努力の量に比例するという結果が出ています。つまり、もともと好きだったかどうかにかかわらず、長く続けるほど仕事への情熱は大きくなっていくということです。
このように、なんとなく始めたことでも、努力を重ねる中で徐々に好きになっていくものです。必ずしも好きなことを仕事にする必要はありません。大切なのは「好き」を仕事選びに活かすことです。「好き」をきっかけに自分に適した仕事を見つけ、楽しく社会人生活を送っていきましょう。
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