便利で住みやすい街づくりのために、ビルや道路、橋やトンネルといったあらゆるインフラの充実は欠かせないもの。こうした建築物を一挙に手がけるのが「ゼネコン」と呼ばれる総合建設会社といった業界です。
建設業界は厳しい屋外での作業となる上、重機を扱うこともあり、どこか“危険でキツい仕事”という印象を持たれているのが現実。
ですが、そうした従来のマイナスイメージを払しょくすべく、国やゼネコン各社が声を挙げて、年齢や性別、国籍を問わず働きやすい職場環境になってきています。この記事では、変化しつつある建設業界の今を探ってみましょう。
建設業界の仕事の流れ ~受注から設計・施工まで〜
一体ゼネコンはどのような形で大規模な建設工事に携わっているのでしょうか?
ゼネコンが請け負う建築物には国や地方自治体が発注主となる道路やトンネル、ダムといった公共物もあれば、一般企業が発注主となるオフィスビルやマンションなどもあります。公共工事の場合、公平性を図るために複数の建設会社が入札に参加し、予定している工事に対する工事内容や見積もり金額をふまえた上で、発注主は工事を依頼する建設会社を選定します。
発注を受けた建設会社は、建築物の完成形をイメージし建物の構造(設計図)を図面に起こします。その後は実際の現場での施工。ゼネコンの社員は、通常「現場監督」という立場で現場に入りますが、地面の掘削や杭打ち、セメント固め、鉄筋の加工・配筋、足場の組み立て、路面のならしといった具体的な工程は、それぞれの分野を専門としている中小の協力業者がおこないます。職人の種類は100にも及ぶと言われ、多重構造と他業種が入り乱れるのが建設現場の特徴です。
現場監督は、各業者がスムーズに工事できるようスケジュールを組み、納期に間に合うよう綿密な工程管理をしなくてはいけません。同時に事故が起こりやすい環境であるゆえ、現場で働くスタッフが無理なく安全に作業できているかを監視します。建設工事は騒音や揺れといった近隣迷惑に発展する要素もあるので、クレーム対応も大事な仕事のひとつ。
また現場で働く社員以外にも、工事案件を取ってくる営業や、安全かつ効率よく施工するための製品を開発する研究開発といった職種もあり、技術職から総合職まで幅広く活躍できます。
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建設業界は他業種よりも大変なの?業界の動向と現状を知ろう
建設業界はここ数年その市場規模を拡大させています。その理由が、2020年に開催される東京オリンピック・パラリンピックにともなう競技関連施設、宿泊施設や道路といったインフラの建築・整備が急ピッチで進められていること。また海外からの観光客増加にともない、空港とその周辺施設、大幅な利便性向上をねらったターミナル駅の大規模な再開発といった工事が都心部で頻繁におこなわれているのが理由です。
さらに2027年には品川-名古屋間、2045年には品川-新大阪間のリニアモーターカーが開通予定で、2011年に起きた東日本大震災の復興工事もいまだに続いていたり、近年頻発している地震や洪水、がけ崩れといった自然災害の復旧に、大量の建設作業員と建築資材が投入されています。
たくさんの仕事があり業界は好調ですが、その一方で慢性的な人手不足に陥っているのも事実。職業安定所(ハローワーク)での有効求人倍率は4~5倍にのぼり、多くの建設会社で職員を積極的に採用しています。
屋外で作業する建設現場は台風や雪の影響によって作業できない日が発生する恐れがあるため、納期に間に合うよう工事日数に余裕をもたせる必要があります。現在の日本では週休2日制が当たり前になりましたが、建設現場では週休1日(日曜と祝日のみ休み)のところが多いことも……。
忙しい建設業界ですが、その分やりがいが大きい仕事でもあります。
たとえば、ビルや道路、空港や駅……建設業界がかかわる建物の多くは、人々にとってなくてはならないもの。そうした建築物があるおかげで生活を営めるといっても過言ではありません。
また、大きな建築物は何十年にも渡ってその土地に残り、自分の世代だけでなく次世代、またその先にまで残るもの。ある意味、自分がかかわった“作品”とも表現できるでしょう。
また、災害などの復興支援に関しては、本当に困っている人を助けることができ社会貢献性の高い仕事です。
現在、国籍や性別、年齢問わず働きやすい労働環境を整えようとする取り組みがみられるようになっているよう。次の章から、建設業界で起きている「働き方改革」についてみていきましょう。
働きやすさを目指したイノベーションで労働環境は向上!
政府の「働き方改革」によって、労働者個人に見合った就労環境を整えようという動きが高まっています。もちろん建設業界にもこの動きは広まっており、週休2日制の実現、作業効率の見直しによる長時間労働からの解放、残業代の支払いなどについて規則が厳しくなり、罰則規定も設けられるようになりました。
この章では、建設業界でおおきく変わっている「女性の働きやすさ」と「AIの活用」のふたつについて詳しくみていきましょう。
男性だらけの職場も、だんだん女性も働きやすく!
これまで“男性が働く現場”のイメージが強かった建設業界でも、徐々に女性の進出がみられるようになりました。建設現場で働きたいという女性社員の希望を叶える取り組みも各社で始まっています。
たとえば、企業説明会やインターンシップ採用時の性差をなくし、男女分け隔てなく建設業界を知ってもらうよう情報提供の透明化に努めること。そして出産や子育てが終わった女性社員に対してもきちんと復職できる環境の整備に乗り出すようになりました。また、建設現場ではトイレや着替えといったプライバシーの問題もありますが、女性専用のトイレや更衣室を用意する動きもみられるように。ゼネコンでは女性の現場監督も増えてきています。
ITの力で、作業効率アップ!はたまた、ベテランの技能や経験を習得することも可能に?!
働きやすい職場にするため、そして週休2日制を定着させていくためには作業の効率化は避けて通れない課題となりますが、テクノロジーの力を借りた改善にも業界全体で着手。AI(人工知能)によるロボットでの工事作業が可能となり、ダムや橋梁といった高所、炉内など高温の場所、高水圧の海底といった危険がともなう場所での作業が削減され、かつ安全面でも貢献しています。
近い将来、ベテラン建設作業員の大量退職が予想されています。高い技能と豊富な経験を併せ持つベテランの引退は大きなダメージとなるかもしれませんが、彼らの技能や経験をAIで習得させることができれば、大切なノウハウが失われることなく世代交代が実現できるのです。このような最新技術の活用は「i-Construction(アイ・コンストラクション)」と呼ばれ、建設業界の大きなイノベーションになると期待されています。
建設業界(ゼネコン)とマッチする人物像とは?
人材不足とはいえ、建設各社も「誰でもいいから」というスタンスで新卒募集をおこなっているわけではありません。当たり前ではありますが、明確なビジョンを持った人でないと会社の将来を託すことはできないもの。
ゼネコンは「総合建設会社」というだけあり、あらゆる建築物にオールマイティに対応できる強みがありますが、実際は各社とも得意分野が異なるものです。就活の際には、自分がイメージする分野や方向性にマッチした会社を第一志望として選ぶことが大切。各企業のホームページや社史をみれば、これまでに手がけてきた代表的な建築物を確認できるので、一度は検索し情報収集をおこないましょう。
志望動機としては、“会社が強みとしている分野”と“自分がこれまでに学んできた分野”がどのようにマッチするのかを明確にPRすることが大切。公共物を多く手がけることから、どのような形で社会貢献をしていきたいのかといった視点で訴えることもポイントです。責任の重い仕事ゆえ社会人1年生に重要な仕事を任せることはなかなかありませんが、長いキャリアを通じて達成したいビジョンを面接官に伝えていきましょう。
自分の関わった仕事が街中にあふれるのが建築業界の醍醐味!
建設業は大規模な工事になるほど完成までに長い年月を要し、すべての工程に責任を持つ立場として一瞬たりとも気が抜けません。しかし、険しい道を乗り越えて自分の関わった建築物が完成したときの喜びはとても大きなもの。また、カタチに残ることも建設業界で働く大きなモチベーションになることでしょう。
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