キャリア面談とは?成功するために押さえたいポイントや準備、進め方を解説
労働力人口の不足に伴い、社内の人材活用や能力開発の重要性が高まっていることから、キャリア面談を取り入れる企業が増えています。しかし、面談を実施してもうまく従業員の本音を引き出せず、対応に悩んでいる担当者も多いのではないでしょうか。
この記事では、キャリア面談を成功させるポイントや必要な準備、具体的な進め方について解説します。
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キャリア面談とは?
キャリア面談とは、従業員が業務を通してどのようなキャリアを描いていくか、企業と一緒に考えていくための面談です。従業員の希望している方向性や習得したいスキルなどを共有し、企業はその内容を参考に、中長期的な人事異動や研修内容を計画します。
キャリア面談が必要とされる背景
従来の日本企業では終身雇用と年功序列を前提とした人事制度が構築されていたため、勤続年数とともに上位ポストに就くことが普通であり「キャリア形成」という考え方が浸透していませんでした。
しかし、現代では雇用体系や働き方が多様化したことにより、労働者には労働市場で通用する深い専門知識やスキルが求められるようになっています。企業側にも従業員それぞれの特性に合わせた育成や支援が求められていることから、キャリア面談を取り入れる企業が増えているのです。
キャリア面談の目的
従業員が抱える課題を明らかにする
キャリア面談を通して従業員が抱える悩みや課題を言語化すると、従業員が目指すべき方向性や理想の姿が明確になります。必ずしもその場で問題を解決する必要はなく、自身のキャリアに関するイメージを具体化し、優先順位をつけて自発的な行動へと繋げることが目的です。
従業員の今後のステップを明確にする
今後目指すべき姿が明らかになると、目標までの道筋を描けるようになります。目標達成に向けて今の自分に何が足りないのか、どのようなステップアップが必要なのかが明確になれば、具体性のあるキャリア計画が立てられるでしょう。また、企業も従業員のキャリアアップに向けてどのような教育や支援が必要なのか把握でき、効率的な人材育成が可能になります。
従業員のやる気を高める
キャリア面談を定期的に実施し、その都度今後の目標や具体的な行動プランを確認すると、従業員のモチベーション維持につながります。従業員が自身の特性や強みを理解し、業務に活かすことができれば、チーム全体も活性化します。また、企業が従業員のキャリア支援に積極的な姿勢を示すと、従業員エンゲージメントの向上も期待できるでしょう。
成功するキャリア面談のポイントとは?
キャリア面談をより効果的に運用するためには、どのような点に気をつければいいのでしょうか。キャリア面談を実施する際のポイントを解説します。
傾聴する
キャリア面談では従業員の話にじっくり耳を傾け、意見や価値観に理解を示す姿勢が重要です。指導やアドバイスも大切ですが、従業員の話の腰を折って面談担当者が話し始めてしまうと、従業員は遠慮してしまい、本音を話せなくなってしまいます。まずは従業員の率直な意見や希望を聞き出すことに注力し、担当者は傾聴に徹するよう心がけてください。
傾聴では、アメリカの心理学者であるカール・ロジャースが提唱した「ロジャースの3原則」を活用するといいでしょう。
<ロジャースの3原則>
- 共感的理解:相手の気持ちに共感しながら理解しようとする。
- 無条件の肯定的関心:自分の価値観や好き嫌いによらず、相手の話を否定しないで聞く。
- 自己一致:わからない部分は正直に伝え、真意を確認する
このような姿勢を意識すると、従業員が安心して本音を話せるようになり、面談を有効に活用できます。
効果的に質問する
面談では、決められた時間内に聞きたいことが引き出せるよう、事前に質問内容を設定しておくといいでしょう。不要な質問が多いと面談の質が低くなってしまうだけでなく、従業員も話したかったことを最後まで話せず、不満を感じてしまうかもしれません。
質問を考える際は、どのような答えを引き出したいのか具体的に考え、従業員の性格や価値観を加味して効果的な質問を検討しましょう。
<質問例>
- 現状の仕事で何を課題に感じていますか?
- どうしてそれを課題に感じているのですか?
- 目標達成に向けて、具体的にどのような取り組みをしましたか?
- どのような仕事を楽しいと感じますか?
- 目標にしている先輩社員はいますか?
対話を心がける
面談は、企業がやってほしいことを従業員に押しつける場所ではありません。もちろん、チームの目標達成のためには従業員に達成してもらわなければならない目標もありますが、面談では従業員の気づきを促し、モチベーションを高めることが重要です。
企業の意向を強要するのではなく、お互いに考えや価値観を提示し合って「対話」する姿勢が求められます。チーム目標についてはじっくりと説明して従業員の同意を得ながらキャリアプランを検討しましょう。
長期的な視点でサポートする
キャリア面談は定期的・持続的に実施して、長期的なキャリアプランを形成していくことが大切です。
その時に発生している課題に対処したり、気が付いた点をフィードバックしたりすることも重要ですが、毎回の面談内容に一貫性がないと従業員が混乱してしまい、サポートも中途半端になってしまいます。担当者は、前回の面談で話した内容を振り返り、連続性のある指導やサポートを意識すると、従業員も自身の成長を感じやすくなります。
キャリア面談の準備
キャリア面談を有意義な時間にするためには、事前の準備や手順の確認が重要です。ここでは、面談担当者がキャリア面談を実施する前にやるべき準備を紹介します。
キャリア面談シートを作成
キャリア面談を実施する際は、従業員に今後の目標や仕事に対する価値観などを記入してもらう「面談シート」を活用すると、より具体的な話を引き出しやすくなります。
面談シートには、以下のような項目を用意し、従業員に記入してもらいます。
- 現在の対応している業務内容
- 業務における成果や努力したこと
- 給与や評価に対して感じていること
- 人間関係に関する不満や不安
- 将来的にどのようなスキルや経験を得たいか
これらの項目について従業員の考えを事前に把握しておくと、より効果的なアドバイスや支援につなげられ、部下のモチベーション管理もしやすくなるでしょう。
テーマを準備
面談シートの内容などを参考にして、事前にテーマを設定しておくと、より面談の進行がスムーズになります。面談シートの記入を実施数日前までに済ませてもらい、面談で話し合う課題や問題を洗い出した状態で面談に臨みましょう。
キャリア面談の進め方
キャリア面談の進め方を、4つのステップに分けて解説します。
ステップ①:キャリアの具体的なイメージ作り
面談の始めはアイスブレイクなどをはさみ、従業員がリラックスして話しやすい雰囲気を作りましょう。趣味や季節、体調など仕事以外の話を挟むと、従業員の緊張がほぐれ、相互理解が深まります。
続いて、質問や対話を繰り返しながら、徐々にキャリアのイメージを膨らませていきます。まずは担当者のキャリアプランや過去の失敗談を話し、事例として学んでもらってもいいでしょう。1年後、3年後、10年後など長期的な視点での将来設計について従業員に自由に話してもらい、気になる部分を掘り下げていきます。
ステップ②:テーマの共有
前回の面談を振り返りながら、今回の面談におけるテーマを共有します。面談によって何を目指したいのか最初に意識をすり合わせることで、話の内容に一貫性を持たせるためです。前回の面談で設定した目標のうち、何ができて何ができなかったのか明確にし、次回の行動指針へとつなげていきましょう。
ステップ③:気づきにつなげるための対話
テーマに関して対話する際は、部下の話を遮らず、傾聴の姿勢を示すことを意識してください。面談では、担当者が解決策を提示するのではなく、従業員が自分自身で気づきを得ることが大切です。例えば「自分ではどうすればいいと思う?」など質問を工夫し、部下が自分の考えを適切に言語化できるように、促してあげるといいでしょう。
ステップ④:フィードバック
部下としっかり対話し、今後のキャリアプランや目標が明確になったら、担当者からのフィードバックを提示します。まずは従業員自身に解決策を考えてもらい「その解決策には何が必要になる?」「その方法だとこういう問題もあるのでは?」など、部下が自分で問題点に気づけるようサポートすると、目標達成に対するモチベーションアップにつながります。
まとめ
キャリア面談では、従業員の話を途中で遮らず、傾聴に徹する姿勢が大切です。従業員に安心して本音を話してもらい、課題解決やキャリアプランに関する気づきを与えることで、企業に対するエンゲージメント向上が期待できます。
チームの活性化や生産性向上といったメリットもありますので、定期的にキャリア面談の機会を設けて、従業員との信頼関係を構築していきましょう。
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