ジョブローテーションのメリットとは?デメリットや成功事例も紹介
従来、社員の能力開発や幹部候補の育成を目的に実施されてきたジョブローテーション。現在では多角的な人材の育成を目的として戦略的に導入する企業が増えています。
この記事では、ジョブローテーションの基礎知識、企業側・従業員側それぞれのメリット・デメリットなどをわかりやすく解説します。
ジョブローテーションとは?
まずは、ジョブローテーションの定義について解説します。
ジョブローテーションの定義
ジョブローテーションとは、多様な経験やスキルを身につけた人材の育成を目的として、戦略的に人事異動や職種変更を行うことです。2~3年の頻度で他部署へ異動するパターンや、部署内で複数の仕事を担当するパターン、地方の支店へと転勤するパターンなどがあります。
多くの部署で業務経験を積み、自社の事業や業界に関する知見を深めることで、幹部候補やゼネラリストを計画的に育成することが一般的な目的です。
ジョブローテーションが広まった背景
ジョブローテーションは、従来の終身雇用を前提とした日本企業において、幹部候補となる「企業内ゼネラリスト」を育成するため、社内業務を横断的に経験させることが目的でした。しかし、ITの急速な発達やグローバル化によりビジネス構造が複雑化したため、ゼネラリストよりも専門性を持った人材が求められるようになっています。
そのため、現在の日本企業では単なるゼネラリストの育成ではなく、戦略的な人材開発を目指す手法の1つとして、ジョブローテーションが活用されています。
ジョブローテーションの目的
管理職の養成
ジョブローテーションにより社内の業務を横断的に経験することで、自社の事業構造を深く理解し、多角的・俯瞰的な視点を持った人材が育成できます。
管理職や経営幹部として活躍する人材は、複数の部署と連携をとりながら、的確な指示を出す能力が求められます。特定の業務だけでなく、社内のあらゆる部署や職種に関する知識を網羅的に持っている必要があるため、ジョブローテーションによる人材育成が有効です。
社内の交流促進
定期的な部署異動は、社内のコミュニケーション活性化にもつながります。1つの部署に長く在籍すると人間関係も固まりがちですが、ジョブローテーションによりさまざまな社員と関わりを持つきっかけが生まれます。
部署を横断して行うプロジェクトの進行もスムーズになるため、業務効率化にもつながるでしょう。
モチベーション管理
ジョブローテーションによって新しい経験や知識を得る機会があると、モチベーションの向上が期待できます。
同じ仕事ばかり続けていると、成長を感じにくくなるため、退屈に感じる社員が増えてきます。特に、成長意欲の高い社員には定期的に新しい仕事へチャレンジする機会があった方が、モチベーションを維持しやすいでしょう。
ジョブローテーションのメリット
ジョブローテーションを導入すると、職場環境にどのような変化があるのでしょうか。企業側・社員側それぞれのメリットを紹介します。
企業側のメリット
属人化を防止
1つの業務を特定の社員が長く担当していると、業務のブラックボックス化が起こりやすくなります。ジョブローテーションによって定期的に担当社員が交替する環境があると、業務のマニュアル化が進み、属人化を未然に防ぐことが可能です。代替要員も確保しやすくなるため、特定社員への業務の偏りも防止できます。
イノベーションにつながる
部署や業務間で人材の異動がなく、同一の社員が同じ業務を担当し続けていると、業務がルーチン化してしまい、新しい発想や変化が生まれづらくなります。ジョブローテーションによってこれまでになかった経験や知見を持った人員を部署に取り入れると、気づきや視点の変化が生まれ、イノベーションにつながりやすくなるでしょう。
適材適所の人材配置
ジョブローテーションによって多様な業務を経験する機会があると、各従業員の適性を見極めやすくなります。従業員の能力開発にもつながり、適材適所の人材配置が可能になるでしょう。
適材適所の配置が実現すれば、ミスマッチによる早期離職の防止にもつながります。自身の能力を活かした業務で成長を感じられるようになり、会社へのエンゲージメントが向上します。
従業員側のメリット
能力開発
ジョブローテーションによってさまざまな職種にチャレンジする機会があると、自身の適性や隠れた能力を発見できる可能性も高まります。複数の部署での経験を通して「自分は何が得意で、何が苦手なのか」がはっきりしてくるため、自身の可能性が広がり、より具体的なキャリアプランを描けるようになります。
社内ネットワーク構築
ジョブローテーションによって複数の部署と関わりを持つと、横断的な社内ネットワークを構築できます。他部署と協力して進めるプロジェクトでスムーズな進行ができたり、違った角度からアドバイスがもらえたりなど、さまざまな場面で社内ネットワークが役立ちます。
ジョブローテーションのデメリット
メリットの一方、ジョブローテーションには一定のデメリットがあることも理解すべきです。企業側・従業員側双方のデメリットを紹介します。
企業側のデメリット
コストの増加
ジョブローテーションを行う度に、部署に新しく入った従業員に一から仕事を教えなくてはなりません。そのため、教育コストが継続的に発生する点には注意が必要です。部署の中から教育担当者を配置する必要もあり、担当者の業務負担が大きくなってしまうため、業務量の調整など管理側のコストもかかります。
一時的な生産性の低下
新しい業務を教えてから一定のスキルを身につけるまでには、時間がかかることも覚悟しなくてはなりません。さらに、教育担当者の業務過多や前任者からの引継ぎなどが発生するため、体制が整うまでは一時的にチームの生産性が落ちてしまう可能性があります。マニュアルを用意したり、教育担当者の業務量を調整したりなど、事前の受け入れ体制準備が重要です。
従業員側のデメリット
専門性を高めることが難しい
ジョブローテーションはもともとゼネラリスト育成を目的にした制度であり、専門性の高い人材の育成には向いていません。社内ゼネラリストとしてのスキルは身についても、他社で通用する専門性を身につけづらいため、従業員の不満を招く可能性があります。
モチベーション低下の可能性
複数の部署を経験する間には、あまり自分の特性に合っていない部署や業務を経験することもあるでしょう。1つの部署は2~3年ほど経験することが一般的であり、すぐに次の仕事に移ることはできません。その間にモチベーションが低下し、離職につながる可能性があります。
ジョブローテーションを導入するメリットが大きい企業とは?
ジョブローテーションはどのような企業が導入すると、メリットを活かせるのでしょうか。ジョブローテーションに向いている企業の特徴を紹介します。
複数部署が繋がっている企業
開発部と営業部が共同で製品開発を行うなど、部署同士の繋がりが強い企業はジョブローテーションに向いています。どの部署がどのような業務を担当しており、何が課題となるのかが明確になると、一体感を持ってプロジェクトを遂行できます。
新卒採用が多い企業
就労経験のない学生を対象にする新卒採用では、基本的にポテンシャルが重視されるため、従業員の適性が未知数です。本配属前にさまざまな業務を経験させることで適性を見極められます。
業務内容をマニュアル化している企業
ジョブローテーションは教育コストがかかる手法であるため、各業務のマニュアルが整備されている企業の方が、導入しやすいといえるでしょう。マニュアルが充実しており、教育担当者のリソースを確保できるという条件が整っている企業には大企業が多いため、必然的に大企業での導入が多くなっています。
まとめ
ジョブローテーションは、自社の事業構造や業界に精通し、多角的な視野を持った人材を戦略的に育成する手法です。社員の適性を見極め、適材適所の人員配置を実現できるといったメリットがありますが、従業員の希望に沿わないジョブローテーションは、モチベーションの低下や離職につながりかねません。従業員の意思確認をとりながら、キャリアプランに配慮した育成計画を策定しましょう。
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