コアコンピテンシーとは?その意味や具体的な活用シーンについて解説
コアコンピテンシー(=コアコンピタンス)とは、技術力や生産方式など、企業の中核的な力です。しかし、似たような用語も多いため、意味をしっかり理解しておくことが重要です。そこで本記事は、コアコンピテンシーの概要や、類似用語との違い、具体的な活用シーンをわかりやすく解説します。
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コアコンピテンシーとは?
コアコンピテンシーの意味
コアコンピテンシーとは、貴社で 「競合他社と差別化できるレベルの能力」や、「競合他社には模倣できない能力」 を指す言葉です。コアコンピテンシーの対象になるのは技術力、生産方式、ブランド力、独自の企業理念などさまざまです。
例えば、世界シェアNo.1のホンダのオートバイ技術や、クールジャパンと評価されている錦鯉の養殖技術などは、コアコンピテンシーといえます。また、ムダを徹底的になくしたトヨタ生産方式のように、ノウハウ自体がコアコンピテンシーになる場合もあります。
コアコンピテンシーの概念は、1990年にロンドンビジネススクールのゲイリー・ハメル教授と、ミシガン大学経営大学院のC.K.プラハラード教授によって提唱されました。
コアコンピテンシーを見極める理由
企業がコアコンピテンシーを見極めるのは、自社の強みを自覚して、中長期スパンで市場の主導権を握るためです。
コアコンピテンシーを理解できれば、競争力の強化につながります。自社の強みや存在価値を生かせる市場でのポジションを維持できるようになります。
例えば、ある賃貸仲介業にとって物件数の多さがコアコンピテンシーなら、サービス形態を実店舗からオンライン接客に切り替えても競争力は失われません。それどころか、顧客の利便性を高めて新規顧客の獲得が期待できます。このように、利益を生み出すコアコンピテンシーをつかんでいれば、経営の柔軟性が高まります。
コアコンピテンシーを見極めるための要素
コアコンピテンシーを見極めるときは、主観的な判断に陥らないように注意が必要です。妥当なコアコンピテンシーか確認するには、次の5要素に注目します。
要素 |
意味 |
具体例 |
模倣可能性 |
競合他社が同じ商品・サービスを提供できるか |
コモディティ化が進む日用品やパソコンなどは模倣可能性が高く、異業種参入が増えている |
代替可能性 |
オリジナリティーやユニークさがあるか |
ハイブランドの商品は、機能や品質が同じでも、他に代えがたい価値がある(代替可能性が低い) |
移動可能性 |
他分野に応用可能か |
必要なものを必要なときに必要なだけ作るトヨタ生産方式は、人材育成や資金調達にも応用されている |
耐久性 |
長期的に競争力を維持できるか |
IT技術のように進化が速い分野は耐久性が低い傾向がある。逆に、伝統工芸品の生産技術のように変化が少ない分野は耐久性が高い傾向がある |
希少性 |
ビジネスや商品に希少価値があるか |
地域唯一の回転ずし屋やニッチ産業の商品などは希少性が高い |
コアコンピテンシーの類似用語
コンピテンシー
コンピテンシーとは、高いパフォーマンスを発揮する社員に共通した行動特性です。一般的には「コミュニケーション能力が高い」「論理的な思考力がある」など、優れた社員の共通点を指します。
したがって、コアコンピテンシーが企業を対象するのに対して、コンピテンシーは個人を対象にするのが違いです。コアコンピテンシーは独自の小型化技術などの中核企業力ですが、コンピテンシーは個人の望ましい行動特性を指します。
ケイパビリティ
ビジネス用語のケイパビリティとは、業績向上の原動力となる組織力、強みです。主にマーケティング戦略を立案する際に検討されます。
ケイパビリティは1992年にコンサルティンググループに所属するジョージ・ストークスらによって提案されました。彼らの定義によると、ケイパビリティはサプライチェーン全体の企業力です。一方、コアコンピテンシーは生産や流通などサプライチェーンの特定部分の企業力です。
例えば、「おいしい牛丼」が人気の飲食店なら、調理技術をコアコンピテンシーにできますが、ケイパビリティとしては部分的すぎます。ケイパビリティは、例えば「早い・うまい・安い」の企業価値を実現しているバリューチェーン全体を指します。
スキル
コアコンピテンシーが企業を対象とするのに対して、スキルは個人の能力を指す用語です。企業の開発力などを指してスキルは使いません。
また、コアコンピテンシーは顧客が価値を理解できる具体的な形になっているのに対して、スキルは何かを作る、する能力である違いもあります。例えば、コアコンピテンシーは高精細のテレビのように具体的な「製品」ですが、スキルは高精細のテレビを設計できるエンジニアの「技術」を指します。
アビリティ
アビリティは特定領域で発揮される才能、技能という意味です。スキルと似ていますが、アビリティは生まれ持った能力や資質であり、スキルは努力によって獲得された知識や技術です。
アビリティとコアコンピテンシーの違いは、スキルと同じです。アビリティが個人を対象にするのに対して、コアコンピテンシーは企業を対象にします。また、アビリティが何かをなしえる能力であるのに対して、コアコンピテンシーはすでに何かの価値を持った物や状況です。
コアコンピテンシーの具体的活用
採用における活用法
優秀な人材を採用するには、積極的にコアコンピテンシーを発信するのが効果的です。例えば、就活サイトやホームページでコアコンピテンシーを発信します。また、面接でコアコンピテンシーを伝えた後、これを発展させるために応募者が何ができるのか質問します。
コアコンピテンシーを発信すると、自社に合う人物を探しやすくなります。仮に精密機器の小型化技術がコアコンピテンシーなら、その分野の技術を持ったエンジニアが集まりやすくなるでしょう。
また、採用面接でコアコンピテンシーに関連した質問をすれば、応募者の共感力を確認できます。コアコンピテンシーにどうやって貢献できるのか、どのような行動を取りたいのかなどを質問するとよいでしょう。
研修における活用法
内定者研修では、企業になじめるように人間関係を作る場を与えるとともに、企業の概要や社会人としての心得などを教えます。この内定者研修でコンピテンシーを伝えると、組織の一員として定着し、戦力になるまでの期間を短くできます。
内定者研修でコアコンピテンシーを伝えると、内定者は自社に誇りを持てるようになり、モチベーションが高まります。また、自分の役割や必要なスキルを理解しやすくなります。
内定者研修で伝えるのは、自社のコアコンピテンシーと、その活用分野および将来の応用分野です。内定者は自社についての知識が乏しいため、データやファクトをまとめて、わかりやすく伝えるとよいでしょう。
活用する際の注意点
コアコンピテンシーがあっても、すぐに目に見える結果が表れるとは限りません。仮に自動車メーカーのコアコンピテンシーが燃費のよいエンジンだったとしても、販売数が伸びるとは限らないでしょう。「調達→生産→物流→販売→消費」のサプライチェーン全体が機能して、消費者の購買を促さなければなりません。
これはケイパビリティとの関係で考えるとわかりやすいでしょう。コアコンピテンシーはサプライチェーンの一部の強みであり、ケイパビリティはサプライチェーン全体の強みです。つまり、コアコンピテンシーで成果を出すには、ケイパビリティに組み込まなければならず、経営的な観点で中長期的に取り組むことが必要です。
まとめ
コアコンピテンシーとは企業の中核的な強みです。コアコンピテンシーを活用した経営で業績を伸ばすとともに、コアコンピテンシーを上手に発信して優秀な人材の活用につなげたいものです。
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