コンピテンシー評価とは?評価方法やメリット・デメリットを解説
近年、企業の業績や生産性を向上させる人事評価制度として、コンピテンシー評価が注目を集めています。
コンピテンシー評価の導入を検討しつつも「コンピテンシー評価がどんなものなのか、ピンときていない」「具体的なメリット・デメリットがよくわからない」といった悩みを抱えている企業も少なくないはずです。
そこでこの記事では、コンピテンシー評価を導入するメリット・デメリットから、効率的にコンピテンシー評価を導入するための手順までわかりやすく徹底解説します。
コンピテンシー評価とは?
コンピテンシー評価とは、企業内で高い評価をあげる人材に共通する特性である「コンピテンシー」を基準とした人事評価制度のことです。
従来の人事評価制度では「単純にスキルや成果での評価をしているために、どうしても年功序列に陥りやすい」といった問題がありました。
しかし、コンピテンシー評価ではスキルや成果だけでなく、行動や意識、性格などから評価を行えるため、年功序列によらない評価をしやすいのが特徴です。
また、コンピテンシー評価では「コンピテンシーモデル」と呼ばれる評価項目を用いて評価を行います。
コンピテンシーモデルは企業ごとに独自の内容を作成するため、企業にとって適切な評価ができます。
ただし、コンピテンシー評価の導入・実施にはさまざまなハードルもあり、メリットとデメリットの両方を理解したうえで導入・実施を検討するのが大切です。
コンピテンシー評価を導入するメリット
コンピテンシー評価を導入するメリットとして、主に次の4つがあげられます。
- 効率のよい人材育成ができる
- 納得度の高い人事評価ができる
- 人材マネジメントに役立つ
- 企業の業績・生産性の向上につながる
項目ごとに詳しい内容を解説していきます。
効率のよい人材育成ができる
コンピテンシー評価では、企業の目標や理念、実際に活躍している社員をもとに「企業が求める人材」の特徴を指標に人事評価を行います。
それによって、企業が求める人材に近づけるための育成を、効率よく行えるのがメリットです。
また、コンピテンシー評価は、意識や行動の部分においても目指すべき姿が明確になります。
目指すべき姿と比較して長所や短所を具体的にフィードバックできるほか、社員が自身の課題に気づきやすくなることからも、効率のよい人材育成につながります。
納得度の高い人事評価ができる
コンピテンシー評価の評価基準は明確であるため、社員にとって納得度の高い人事評価が実現できます。
スキルや成果を基準とした従来の人事評価制度では、基準があいまいな部分も少なくありませんでした。
評価を行う上長の主観や好みによっても評価が左右され、「どうしてその評価を受けたのか」がブラックボックス化しやすい問題もあります。
しかし、コンピテンシー評価では企業ごとに定めたコンピテンシーモデルを公表し、コンピテンシーモデルを基準に評価を行うため、人事評価に透明性を与えられます。
人材マネジメントに役立つ
コンピテンシー評価は、人材マネジメントにも非常に役立ちます。
「コンピテンシーモデルに近づけるように指導する」「コンピテンシーモデルと比較してわかった長所と短所をもとに配属を決める」など、適切な指導や人材配置を行えるためです。
また、マネジメントする側が適切な判断を下せるだけでなく、マネジメントされる側が「基準に基づき、適切に行われたマネジメントである」と実感できるのも大きなメリットでしょう。
企業の業績・生産性の向上につながる
コンピテンシー評価によって得られる「人材育成の効率化」「適切な人材マネジメント」などといったメリットは、結果として企業の業績や生産性の向上につながります。
業績や生産性が向上し、企業が成長すれば、給与や福利厚生などの社員の成果に対する還元をしやすくなるほか、優秀な人材のさらなる確保にも踏み切れます。
社員のモチベーションアップや人材強化により、さらに業績や生産性が向上していくと、企業にとって非常によい循環が生まれるでしょう。
コンピテンシー評価を導入するデメリット
コンピテンシー評価にはさまざまなメリットがありますが、導入にはデメリットも存在します。
具体的には、次のようなデメリットが考えられるでしょう。
- コンピテンシー評価の導入プロセスの負担が大きい
- コンピテンシーモデルへの納得感が得られにくい
- 環境変化における対応力に欠けている
ここからは、コンピテンシー評価のデメリットについて詳しく解説していきます。
コンピテンシー評価の導入プロセスの負担が大きい
コンピテンシー評価は導入プロセスの負担が大きく、気軽に導入できる人事評価制度ではない点がデメリットです。
部署や部門、職種、役職などによって求められるコンピテンシーは異なります。
そのため、本格的にコンピテンシー評価を導入するとなれば、区分ごとに適切なコンピテンシーモデルを作成しなければなりません。
コンピテンシーモデルの作成には、コンピテンシーを収集・精査する作業も必要となるため、どうしても導入プロセスの負担が大きくなってしまいます。
コンピテンシーモデルへの納得感が得られにくい
コンピテンシーモデルを作成しても、それが必ずしも正しい基準であるとは限りません。
適切なコンピテンシーモデルは、企業ごと、さらには部署や職種などによっても異なるため、コンピテンシーモデルの適正性を見極めるのは非常に難しい問題です。
また、企業にとって適正性の高いコンピテンシーモデルを作成できても、それが社員にとっては納得度の低いものである可能性もあります。
社員の納得を得られなければ、コンピテンシー評価のメリットを十分に享受できなくなってしまうでしょう。
企業にとっても、社員にとっても適切なコンピテンシーモデルを作成するためには、PDCAを回してブラッシュアップしていくことが大切です。
環境変化における対応力に欠けている
コンピテンシー評価の導入には、コンピテンシーの収集やコンピテンシーモデルの作成などといったプロセスがあり、導入するまでに年単位の時間を要します。
導入する前にコンピテンシーや時代背景が変化すれば、また一から見直しを行わなければなりません。
また、導入してからも、環境変化があればその都度見直しや改善をしていく必要があります。
見直しの最中に、別の環境変化が起きる可能性もゼロとは言い切れないでしょう。
見直しによってコストがかかるうえに、何度も見直していることで社員の不信感につながりやすいデメリットがあります。
コンピテンシー評価を導入する手順
コンピテンシー評価を導入をする場合は、次の手順で進めると効率的に導入できます。
- ハイパフォーマーやモデル人材を分析する
- コンピテンシー項目を洗い出す
- コンピテンシーモデルを作成する
- 企業ミッション・ビジョン、戦略と目標をすり合わせる
- コンピテンシーのレベルを設定する
- 行動評価をテスト・調整する
ここからは、導入手順について項目ごとに詳しい内容を解説していきます。
1.ハイパフォーマーやモデル人材を分析する
コンピテンシー評価導入の第一歩は、コンピテンシーモデルになりうる優秀な人材の選出を行うことです。
前述の通り、コンピテンシーモデルは部門や部署、役職などによって異なるため、しっかりと区分ごとに対象者を選出しましょう。
対象者を選出したら「仕事中に意識していること」「実際に成果をあげた際の行動にはどういった理由があったのか」などをヒアリングして、行動特性を分析します。
2.コンピテンシー項目を洗い出す
次に、行動特性の分析結果をもとにコンピテンシー項目の洗い出しと定義をしていきます。
たとえば、コミュニケーション能力・創造的思考力・問題解決能力などといった項目が考えられるでしょう。
一口に「コミュニケーション能力」といっても、企業によって求めるコミュニケーション能力の定義は異なります。自社のコミュニケーション能力がリーダーシップを指すのか、現場の調整能力を指すのか、あるいは高い協調性を指すのかなど、コンピテンシーの定義をしっかり決めましょう。
コンピテンシーの項目に決まった形はないため、企業の目標や理念に基づいて、必要と考えられる項目を洗い出してください。
以降のプロセスでも項目の必要性や適正性を判断するタイミングはあるため、少しでも必要だと感じられる項目は残しておくのがオススメです。
3.コンピテンシーモデルを作成する
コンピテンシー項目を洗い出したら、コンピテンシー項目を持ち合わせる人物像である、コンピテンシーモデルを作成していきましょう。
コンピテンシーモデルには大きく3つの型があり、どの型を選ぶべきかは企業によって異なります。
- 理想型:企業の理念や目標にマッチした理想的な人材モデル
- 実在型:実際に企業で成果をあげている優秀な社員を参考にした人材モデル
- ハイブリッド型:理想形と実在型の要素をあわせ持つ人材モデル
企業内にモデルにできる人材が存在する場合は「実在型」が社員からの納得感も得られやすく、オススメです。
もしモデルにできる人材が存在しない場合には「理想形」を選んだり、より企業の目標や理念を織り込みたい場合には「ハイブリッド型」を選んだりするといいでしょう。
4.企業ミッションやビジョン・戦略・目標とすり合わせる
作成したコンピテンシーモデルの適正性を上げるために、企業のミッションやビジョン、戦略、目標などとすり合わせていきます。
もし企業に合わない項目があれば、削除してもいいでしょう。
反対に、調整や追加をすべき項目が浮かんでくる可能性もあります。
しっかりとすり合わせて、企業に適したものを作り上げていくのが大切です。
5.コンピテンシーのレベルを設定する
続いて、作成した評価項目に対して、レベル分けした評価基準を設定していきましょう。
レベルは3から5段階に分けられるのが一般的で、レベルを分けることで評価を行う側も評価をされる側も、評価の基準がクリアになります。
<コミュニケーション能力の評価基準(例)>
- レベル1(基準以下):相手の話に最後まで耳を傾けて、内容を理解できる
- レベル2(基準を満たしている):相手の言動や表情から、気持ちや意思を汲み取れる
- レベル3(基準以上):自分がどういった言動や行動をするのが相手にとって適切かを判断できる
6.行動評価をテスト・調整する
コンピテンシー評価を導入して、テストと調整を行っていきます。
実際にコンピテンシー評価を導入してみると、問題点や改善点が見つかるはずです。
導入後にきちんと調整を行うことで、より企業に合ったコンピテンシー評価の形を作り上げられます。
必ずテストと調整を行うことを前提に、記録やデータ収集が行える体制づくりをしておくといいでしょう。
また、社員からのフィードバックを受けられる仕組みなども整えておくと、より効率的にコンピテンシー評価のブラッシュアップが可能です。
まとめ
コンピテンシー評価は優秀な人材に共通する特性をもとに、企業の目標や理念にマッチした評価を行える人事評価制度です。
実はコンピテンシー評価は新卒採用の場面でも活用できます。応募書類や面接などの従来の選考方法とあわせてコンピテンシー評価を実施することで、自社にマッチした人材の獲得が期待できるでしょう。
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