面接で聞いてはいけない質問とは?厚生労働省の指針にそって解説
面接は、応募してきた学生が自社に適した人材かを見極める大切な機会です。面接ではさまざまなことを聞きたくなりますが、聞いてはいけないことがあるのをご存じでしょうか。聞いてしまったばかりに、企業に思わぬダメージを与える可能性もあります。採用担当者にとって「面接で聞いてはいけない質問」は必須の知識といえるでしょう。この記事では面接では聞いてはいけないタブーの質問について、種類や理由、実際の質問内容、聞いてしまわないための対策について解説します。
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面接で大事なことは「聞いてはいけない質問」を知っておくこと
採用選考が適切に行われるために、面接官の姿勢や心構えについて知っておかなければならないことがあります。面接を実施する前に最低限知っておくべき基本姿勢について解説します。
公正な採用選考
採用面接では、応募者が企業にマッチした人材かどうかを客観的に判断することが大切です。社会的な支障さえなければ、本人の能力が採用の判断材料とならなければなりません。
人は性別、人種、育った環境、生まれた場所などの違いはありますが、それらは仕事の能力とは関係がないと考えられます。採用は公正に行われるべきであり、差別が行われてはいけないという点を、採用担当者は常に理解していなければなりません。
面接で質問してはいけないことは、公正な採用選考を行うという基本的な姿勢に基づいて考えられています。聞いてはいけない質問を理解しておくことで、企業側の公正な採用選考への姿勢が示せます。
適性・能力で合否を判断
選考にあたっては応募者の適性や能力で合否を判断することが大切です。仕事への姿勢や将来の展望、過去の実績などを聞き出す質問が適切だと考えられます。
たとえば「あなたが周囲を説得して、難しいことを実現した経験があれば教えてください」「仕事を通じて実現したいことを教えてください」「学生時代に学んだことを教えてください」というような質問であれば、適性や能力を問うものとして問題はないでしょう。
面接で聞いてはいけない理由とは。厚生労働省の定める公正な採用選考の基本
厚生労働省では「公正な採用選考の基本的な考え方」としてガイドラインを提示しています。具体的にどのような質問が問題となるのかを解説します。
採用選考での基本的な考え方
原則として、採用選考は雇用条件・採用基準に合ったすべての人が応募できるものであり、応募者自身の適性やポテンシャル、スキルが会社にマッチし、配属を予定している職種の職務を遂行できるものかどうかが選考の基準にならなければなりません。応募者の能力以外の要素が選考基準になることはNGであり、就職差別と捉えられます。
また、極端に威圧的な発言を採用担当者が行ったり、人権を損なわせる発言をしたりした場合も、不合理な採用選考であるとしてハローワークなどから指導を受けるケースが見られます。
公正な採用選考を行うために
採用選考においてNGとされる発言のガイドラインが設けられている理由は、公正な選考を行うためです。厚生労働省では公正な選考とは「応募者の基本的人権を尊重すること」「応募者の適性・能力に基づいて行うこと」の2点を挙げています。
職業安定法でも第三条にて人種や国籍、信条、性別、社会的身分などによって差別的扱いをすることを禁じています。
応募者の誰もが平等に就職の機会が得られるように、企業側も考慮することが求められているのです。
採用選考時に配慮すべき事項
下で挙げた事項は就職差別につながる可能性があり、注意が必要です。特に家族に関することは十分に配慮しなければなりません。
- 生まれ育ち、親の年収、親の職業など
本籍に関すること
資産
人生観
思想
宗教
支持している政党
男女雇用機会均等法に反する内容
出身地や親に関することなど、基本的には本人の意思では決定できないことを聞くのはやめましょう。本籍も就職差別につながる可能性があるので注意が必要です。
憲法で自由が認められている思想や宗教、支持する政党などに関する質問も避けなければなりません。
また、男女雇用機会均等法に反する内容としては「子供を産んだら解雇するが、それでも働きたいか」などもNGです。
面接官が聞いてはいけない質問集
では実際には、どのような質問をしてはいけないのでしょうか。何気なく聞いてしまいそうなことも多く含まれているので、しっかりと確認してください。
本人の責任ではない事項に対する質問
本人の責任ではないこと、つまり本人が努力しても変えられないことについては聞いてはいけません。
うっかり質問してしまう、よくあるタブー事例に以下があります。
- 「転校経験はありますか?」
「家庭の雰囲気を教えてください」
「ご両親は共働きでしたか?」
「お父さんの勤め先や役職について教えてください」
「本籍はどこですか?」
「ご両親の収入を教えてください」
「住んでいる家は持ち家ですか? 戸建てですか?」
本人の責任ではないことは差別につながりやすく注意が必要です。親の職業や出身地などが採用の基準になることは避けなければなりません。
本人の自由であるべき事項に対する質問
信仰する宗教や思想・信条に関する質問も注意が必要です。採用選考でこれらの質問をして、その回答を合否の判断にすることは基本的人権の侵害にあたります。たとえば、以下のような質問が想定されます。
- 「家族は何を信仰していますか?」
「信仰している宗教について教えてください」
「神仏を信じますか?」
「あなたや家族が支持している政党を教えてください」
「労働組合をどう思いますか?」
「今の世の中をどう思いますか?」
「何新聞を購読していますか?」
意外なところでは「尊敬している人物」「愛読している本」も抵触するので注意しましょう。
聞いてはいけない質問をしたときの悪影響
聞いてはいけない質問をした場合、法律違反となります。また、被害者から通報されると厚生労働省から改善命令を発せられることがあります。
改善命令が出たにもかかわらず従わない場合は、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられる可能性があるので要注意です。
また、被害者から損害賠償請求などの訴訟を起こされたことが原因で会社の株価が下落したり、会社の信用が低下したりするなどの悪影響も懸念されます。
法令違反とまではいかなくても、SNSなどで拡散されれば自社にとってマイナスイメージになる可能性はあります。一度SNSで情報が流れれば、今後の採用活動に支障が生まれるだけではなく、企業の業績に響くおそれもあるでしょう。
面接で「聞いてはいけない質問」を防止するためのポイント
面接を成功させるためには、面接官の失言を防ぐことはもちろん、学生が自社とマッチしているか正しく見極めることが重要です。面接の精度を高めて採用成功するためのポイントを解説します。
マニュアル作成や研修を実施して面接官の教育を行う
面接官向けのマニュアルを作成し、厚生労働省の定めるルール・基本的な考え方・過去にあった失敗事例などを共有するようにしてください。
マニュアルに書いてあることがしっかりと身になっているかを知るためにも、ロールプレイングで模擬面接をしておくと良いでしょう。頭では分かっていても、うっかり口をついて出てくることもあるので、繰り返して練習することが大切です。
また、時間が経つと忘れてしまうこともあるため、定期的に研修をするようにしてください。
採用基準を明確に決める
採用基準を明確化すれば、問題のある質問を防ぎやすくなり公平かつ客観的な評価ができるようになります。
基準がないままだと面接官任せになることが多く、質問内容にブレが生じ、問題のある質問をしてしまうケースが出てきます。基準を明確化することで質問内容も適切なものとなり、自社にマッチした人材かどうか正しく見極められるようになります。
面接評価シートを作成し、事前に質問を考えておく
応募者を正しく評価するために、面接官の質問は事前に考えておくと良いでしょう。分かっていたつもりでも、学生の緊張をほぐそうと、うっかり聞いてはいけないことを質問してしまう可能性もあります。人事の採用担当者だけではなく、実際に面接官となる配属予定先の上司や、経営陣ともすり合わせておくようにしてください。
あらかじめ質問事項を記した面接評価シートを用意しておけば、聞き漏れ・評価のブレを防げるでしょう。
まとめ
厚生労働省のガイドラインにもあるとおり、違反をすれば懲役または罰金などの刑罰を科される可能性があります。また、SNSで拡散されて企業のイメージダウンになるリスクもあります。
採用を公正に行うためにも、応募者の人権を侵害しないためにも、面接で聞いてはいけない質問をしっかり押さえておきましょう。
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