Sustainable(サステナブル・サスティナブル)とは、「sustain」(持続する)と「able」(〜できる)を組み合わせた言葉で、「持続可能な」という意味です。
そして「サステナブルな社会(持続可能な社会)」とは、地球環境や資源が保全され、平和で豊かな生活が将来の世代にも継承されていく社会という意味で用いられます。地球温暖化や資源の枯渇といった問題は深刻さを増し、今、すべての人に地球環境を存続させるための取り組みが求められています。
今回は「サステナブルな社会」が叫ばれる背景、ならびにその活動の指針となる「SDGs」について考えていきましょう。
「サステナブルな社会」が叫ばれる背景
「サステナブルな社会」を目指す背景には、地球環境が抱える深刻な問題への危機意識があります。ここでは地球温暖化と地球人口の増加を取り上げます。
まず、地球温暖化についてです。地球温暖化は、文字通り、地球が温かくなることを意味しますが、その原因は、人の活動による化石燃料の使用や森林の減少などにより二酸化炭素などの温室効果ガスの排出が増加したことだと考えられています。これは便利な世の中を追求するあまり、さまざまな開発を急激に進めてきた結果だといえるでしょう。
地球温暖化のもたらす影響は深刻です。平均気温の上昇のみならず、気候変動により、豪雨や熱波(異常気温)、干ばつなどの異常気象が発生しています。またサンゴの白化に代表されるように、すでに生態系への影響も出始めており、このまま温暖化が進むと私たちの生活に多大なる悪影響が出るのは避けられない状況です。
次に、地球人口の増加についてです。2019年の国連の発表によると、地域により差はあるものの、今後も人口は増加を続け、2019年には約77億人だった人口が、2050年には約97億人、2100年には約110億人に達するという予測も出ています。地球の人口が増えることに対し最適な対策がとられなかった場合、食糧問題、環境破壊、資源の枯渇などがさらに深刻になっていくと考えられます。
「終末時計」という人類滅亡までの残り時間を表示する時計があります。米科学誌『原子力科学者会報(BAS)』が毎号表紙に掲げている仮想の時計です。2020年1月、「終末時計」の針は前年より20秒進み、残り100秒と過去最短の残り時間を表示しました。
もともと「終末時計」は、核戦争や原子力利用の失敗などによる危機を警告する目的で考えられましたが、現在は環境問題なども考慮して決定されるようになりました。この点からも、地球環境が抱える問題の深刻さが伝わってきます。持続可能な社会に向けた世界規模の取り組みが、待ったなしで求められているのです。
SDGsの概要
「サステナブル」という言葉が広まるきっかけとして挙げられるのが、2015年9月にニューヨークで開かれた国連サミットです。各国の首脳が参加した国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載された目標が「SDGs(エス・ディー・ジーズ)」と呼ばれています。
「SDGs」とは、Sustainable Development Goalsの略称で、2030年までに達成すべき「持続可能な開発目標」として掲げられているものです。これらの目標達成のため、国による取り組みだけではなく、企業や地方自治体、市民一人ひとりまで、持続可能な未来を築くための行動が求められています。2030年までにこれらの目標を達成するには、取り組みのスピードを速め、規模を拡大していく必要があるからです。
「SDGs」は17のゴールと169のターゲット、232の指標から構成されています。17のゴールはそれぞれ独立したものではなく、相互に関連しています。
以下、国際連合広報センター「2030アジェンダ」のページに掲載されています。
https://www.unic.or.jp/activities/economic_social_development/sustainable_development/2030agenda/
169のターゲットと232の指標については、以下の外務省「JAPAN SDGs Action Platform」で確認できます。
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/sdgs/statistics/index.html
詳細を見ると、ゴールのイメージが具体的に理解できますのでぜひ確認してください。
SDGsで重要なポイントは、地球上の「誰一人取り残さない」ことを誓っていることです。それは全世界の人が対象です。開発途上国だけでなく、先進国も含まれます。これまで埋もれていた社会の問題を浮き彫りにし、誰もがその人らしく幸せに生きていけるような社会を目指しているのです。
SDGs達成に向けて
SDGsの進捗は順調とはいえない状況です。2019年9月に開催された「SDGサミット」では、「目標達成に偏りや遅れがあり、すぐにでも取り組みを加速しなければならない。ここからの10年は、2030年に向けた『行動の10年』とする必要がある」という趣旨で、SDGsの進捗に対する危機感が表明されました。
日本政府もSDGsを達成するために、「2030アジェンダ」に掲げられている5つの重要分野の中で、以下8つを「SDGs実施指針の8つの優先課題」として示しています。
SDGs実施指針の8つの優先課題
1 あらゆる人々が活躍する社会・ジェンダー平等の実現
2 健康・長寿の達成
3 成長市場の創出、地域活性化、科学技術イノベーション
4 持続可能で強靭な国土と質の高いインフラの整備
5 省・再生可能エネルギー、防災・気候変動対策、循環型社会
6 生物多様性、森林、海洋等の環境の保全
7 平和と安全・安心社会の実現
8 SDGs実施推進の体制と手段
また、毎年、「SDGsアクションプラン」が策定されています。2020年12月に出されたた2021年のアクションプランでは、新型コロナウィルス感染症の流行なども踏まえ、大きく以下の4点が重点事項として挙げられています。
I.感染症対策と次なる危機への備え
Ⅱ.よりよい復興に向けたビジネスとイノベーションを通じた成長戦略
Ⅲ.SDGsを原動力とした地方創生、経済と環境の好循環の創出
Ⅳ.一人ひとりの可能性の発揮と絆の強化を通じた行動の加速
※アクションプランの最新版の詳細は以下で確認できます。
「首相官邸」持続可能な開発目標(SDGs)推進本部
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/sdgs/
SDGs推進本部決定の最新資料>アクションプラン
SDGsの取り組み例と求められる行動
以下で企業や教育団体、NPOや自治体の取り組みを調べることができます。
国立研究開発法人 科学技術振興機構 「持続可能な開発目標(SDGs)への科学技術イノベーションの貢献」
一般社団法人 日本経済団体連合会「KeidanrenSDGs」
これらで事例として確認できるのは企業や団体の取り組みですが、個人として身近なところから問題に取り組むことを忘れてはなりません。SDGsは世界的な目標であるため、一見、自分とは直接関係がないように感じるかもしれません。しかし国家や企業だけが取り組むことではなく、一人ひとりが自身の身近な問題に気づき、主体的に行動を変えることが重要なのです。
大学でも、SDGsに関するさまざまな研究や取り組みが始まっています。まずは自分の通う大学や、その他の大学でどのような取り組みが始まっているかを調べてみるとよいでしょう。SDGsの17のゴールのうち、自分の学びや興味関心に近いものから理解を深めていくというのもお勧めです。
また、個人消費者としての日々の行動もSDGsに関連しています。どの企業の商品やサービスを選ぶのか、購入するときは必ず選択します。その際、「サステナブルな商品、取り組みを行っている事業者のものか」という価値基準を付け足すことはすぐにでもできることです。
サステナブルな社会の実現には、一人ひとりの力をあわせた取り組みが必要ですが、その取り組みへのきっかけは、大学での学びや経験、日常生活の中にあります。まずはSDGsを正しく理解し、日々の学びや生活の中にSDGsの視点を取り入れるところから始めてみましょう。
まとめ
最近、「サステナブル」という言葉は、「サステナブルな商品」「サステナブルな経営」「サステナブルな暮らし」「サステナブルなファッション」といったように、未来を見据えた新しい取り組みのキーワードとして使われています。すでにエコバッグを利用したり、再生素材のものを購入したりしている人もいるでしょう。
ぜひ、そこから一歩踏み込んで、「サステナブル」という言葉が使われている、その背景にどのような問題があるのかを考え、調べてみてください。情報を広く集め、多角的に問題を捉え、理解を深めること、それが大学における学びの出発点となるはずです。
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