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AIがユーザーに最適な「旅行雑誌」を生成。さらに自分らしい「旅のしおり」がつくれるアプリ

  • インタビュー
  • 2026.05.20
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プロフィール

TOPPAN賞受賞
企画名:みちはな
東京大学 文科二類 2年 北 勝博 さん
東京大学 文科一類 2年 森 環菜 さん

※本記事は「キャリアゲートウェイ2025-アイデアコンペティション」の受賞者インタビュー記事です。
本コンペは、「大学低学年のうちに実践的な経験を経て、さらに学びや経験を深めてほしい」という考えのもと、大学1,2年生を対象に腕試しと成長機会を提供するべく開催されました。

「SDGs課題をアプリで解決」をテーマに、興味のあるSDGs課題を選択し、解決策を提案。多くの素晴らしい企画の中から、最優秀賞(1組)、優秀賞(2組)、企業賞(15組)、審査員特別賞(2組)の計20組が表彰を受けました。

この記事では、受賞企画の内容から、ビジコン参加の理由や参加によって得られた経験まで、受賞者の声をお届けします。

あえて「雑誌」というアナログな形式にしたアプリ

――「キャリアゲートウェイ2025-アイデアコンペティション(ビジコン)」に出場したきっかけを教えてください。

森さん:私たちは大学の友人で、昨年に一緒に起業をした仲間です。現在は、自治体の方々と協力しながら、地域全体を別荘のように見立てて「2拠点生活(デュアルライフ)」や「1.5拠点生活」を支援する旅行系のサービスを準備しています。今回発表した「みちはな」は、もともとアイデア段階で温めていたものですが、今回のビジコンのテーマに合致していたため応募しました。ビジコンに取り組みながら、企画を練り上げ、事業化を目指せればという思いもありましたね。

――ビジコンで発表したアプリの内容について教えてください。

北さん:「みちはな」は簡単なアンケートに答えるだけで、生成AIを活用して最適なオンライン旅行雑誌を作成するアプリです。その雑誌の気に入った場所にチェックを入れることで、最終旅程を提案し、予約もできるようにしました。

森さん:今の旅行は大手サイトのランキングやパッケージツアーなど「画一的(テンプレ化)」になりやすく、国内外を弾丸で飛び回るほど旅行好きな私からすると、もっと「自分らしい旅をしてほしい」という思いがありました。調べてみると、小さなお子さんがいるご家庭やご高齢の方々は旅行中に多くの困りごとを抱えている、という課題を発見しました。 そこで、旅行のハードルが高い方々の心理的・物理的な障壁を下げつつ、まだ知られていない「穴場」へ足を運んでもらうことで、観光地側にも新たな来訪機会と潤いを生みたいという意図を持って、この「みちはな」を構想しました。

――アプリの提供価値と独自性について教えてください。

森さん:最大の特徴であり競合との差別化を実現する転換点となったのは、媒体を「雑誌形式」にしたことです。一般的な旅行プラン提案やしおり作成サービスは既に多く存在しており、単なる行程表の提案では他サービスと同じになってしまうという危機感がありました。そこで、『るるぶ』などの旅行雑誌をパラパラとめくって「ここいいね」とワクワクするようなアナログ的な体験をアプリで再現しようと考えました。

北さん:提供価値は大きく3点あります。ひとつは、「選べる」体験の設計です。ひとつの行程を押しつけるのではなく、複数の選択肢を提示し、利用者自身が選んで自分らしい旅を作れるようにしました。ふたつ目は、雑誌を読んで気に入った場所をチェックするだけで、最終的には「カスタマイズされたしおり」まで作成できること。3つ目は、雑誌形式にすることで、パラパラめくるエンターテインメント性と、AIによる個別最適化された情報提供を一つのアプリ内で両立させたことです。

ユーザーの「負担」を減らすAIチャットの工夫

――雑誌の生成はどのような仕組みになっているのですか?

森さん:プロトタイプとして、実際に自分たちで熱海へ足を運んで取材を行い、データベースを作成しました。100種類ほどの雑誌テンプレートをAIに学習させ、そこに取材した情報を差し込むことで、個人に合わせた雑誌を自動生成する仕組みを構築しています。

――開発の過程で苦労した部分はどこでしょうか。

森さん:ユーザーからいかに負担なく情報を引き出し、それを雑誌に反映させるかという点でした。最初はアンケート形式にしようとしましたが、回答が負担になって使ってもらえない可能性があったため、チャット形式に変更しました。ただ、チャットだと深く聞き取りにくいという難しさもありました。

そこで、ユーザーの年齢や家族構成などの属性に応じて次の質問をカスタマイズする仕組みを取り入れ、ざっと15項目ほどの質問で分析できるように工夫しました。ユーザーが答えやすいように選択肢を多くし、一方でアレルギーやバリアフリー、授乳室の有無などのこだわりは自由記入もできるようにしました。

北さん:実は、当初はWebのマイページ型サービスとして想定しており、アプリ形式での提供は予定していませんでした。しかし、コンテストの要件に合わせてアプリとして落とし込む必要が生じ、プロトタイプを一から作り直すことになったんです。

「みちはな」は情報収集から雑誌生成、旅のしおり作成、予約まで工程が非常に多く、複雑なサービスです。これを、ユーザーが直感的に、自律的に操作できるUI/UXに整理するのが難しいポイントでした。日常生活に馴染みのある、LINEやChatGPTのようなチャット形式の操作感を採用したのも、その「使いやすさ」を追求した結果です。

――継続的に使ってもらうための工夫についても教えてください。

北さん:一度きりの旅行支援で終わらせず、日常的に開いてもらえるアプリにするための対策として、過去の旅行写真や記録が蓄積されていく「アルバム」のような機能を想定しました。旅行中以外でも、ふとした時に思い出を振り返る仕組みを作ることで、ユーザーの生活に長く入り込む設計になると考えたのです。

正反対のふたりだからこそ、議論の果てに「独自性」が生まれた

――お二人で参加でしたが、役割分担は? 二人だったからこそのメリットや大変さはありましたか?

森さん:役割分担としては、北さんが中身の仕組みやロジック、UI/UXを担当し、私は熱海でのインタビューや資料作成、マーケティング面の検討を担当しました。

北さん:メリットは、アイデアが出てくるスピードと量ですね。一人だと行き詰まって頭が固くなりがちですが、二人だとそれを解消できます。特に、森さんの積極的な行動力には常に刺激を受けていました。一方で、大変だったのはお互いの認識をどうすり合わせ一つのものを作るかという点です。二人なので多数決が使えず、最後まで議論してすり合わせる作業は非常に難しかったですね。

森さん:私たちは性格や思考プロセスが全然違うんです。私は「これはおもしろいんじゃない?」とアイデアから考えるタイプですが、北さんは緻密に考えるタイプ。特に大きな議論になったのは、「競合と差別化できる出力形式をどうするか」という点でした。さまざまな案が出ましたが、「それじゃ他社と一緒だ」と何度も突き詰めました。最終的に「カスタマイズされた雑誌」という今の形に収束するまで、徹底的に議論を尽くしたことが、結果として唯一無二の独自性につながったのだと考えています。

――企業の方とはどのような交流ができましたか?

森さん:受賞の際に、審査員の方からペルソナを非常に細かく設定し、アイデアをどのように実現してお客様に届けるかという「過程」が明確に見えていた、とフィードバックをいただきました。また、デジタル時代にあえて「雑誌」というアナログの良さを組み込んだ点を評価していただけたのが嬉しかったです。

北さん:実際に熱海へ足を運び、現場を見て考えたことで、アプリの解像度や洗練度が高まった点も評価していただけたのではないかと思っています。

森さん:懇親会では、企業の方にこれから自分たちの会社でやりたいと思っていることをお話させていただく機会もありました。また、スタートアップ向けの別のビジネスコンテストをご紹介いただき、実際に出場する機会に繋がりました。人脈作りという面でも、この会場に来て直接お話しできたことは大きな価値がありました。

ビジネスの面白さを再確認できた

――コンテストを終えて、どのような成果が得られましたか? 今後の展望も教えてください。

森さん:締切日が決まっていることは、アイデアを形にする強力な推進力になりました。また「アイデアをアプリに落とし込む」という作業は非常に難しかったですが、だからこそ面白く見える場面もありました。アイデアを一つの届け方に固定せず、別の手法から見直すことで新しい可能性が見えることを学びました。アプリ化という制約があったからこそ、逆に「雑誌」という新しい発想を促せたのだと思います。

北さん:人と一緒にものを作る中で、考えの違いをどうすり合わせ、相乗効果を生んでいくかということの重要性を痛感しました。フレームワークなどの理論よりも、具体的なユーザー像と、その人が本当に困っている課題に泥臭く向き合うことが、ビジネスの本質であり一番おもしろい部分だと気づけたことが大きな収穫です。

森さん:実は「みちはな」自体は、競合の多さや資金調達の難しさなどの観点からサービス化は打ち切ることにしました。ですががんばって考えたサービスを最後にビジコンで紹介し、皆さんに褒めていただけたことで、良い形で「成仏」させてあげられたと思っています。今は起業した会社での別の事業を進めており、来年は一年間休学してこのビジネスに全力で挑戦してみたいと思っています。

――最後に、ビジコンに興味を持つ学生にメッセージをお願いします。

森さん:たくさん悩み、自問自答を繰り返していけば、きっとあなたにしかできない面白いものが生まれます。途中で諦めずそのプロセスを楽しみながら、ぜひ全力で取り組んでみてください!

北さん:まずは自分がなにをつくりたいか、ユーザーが何を求めていて、本当に抱えている課題は何か、徹底的に1人のユーザーをイメージしてみてください。そうすればきっとビジネスの面白さを感じることができると思います。

※掲載情報は2026年3月時点の内容です。

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